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「ドラマ。」/ショートストーリー

もうすぐだ。多分。
ENDだ。

身体中が痛い。病のせいだがもうモルヒネなども効かない。
早く、この痛みから逃れたい。

この病に侵さなければ。
私にはとても満ち足りた人生だった。
最後にこんなことが待っているとは思えないぐらい。


たしかに、色々とあったさ。
山あり谷あり。
でも。
なんとか乗り切った。
まあ、人生というドラマはそういうものかもしれない。

妻にドクターが何か話している。
妻は泣きながら頷いている。
延命はしないということになっているのを確認しているのだろうか。
ドクターは約束してくれた。
最期は楽にしてくれると。
苦痛のうちに死ぬのは嫌だから。

ドクターは点滴に薬を注入したようだ。
もうすぐだ。
痛みが和らぐと同時に意識が遠のいていく。
決して悪いENDじゃないよ。
ありがとう。

次に目覚めたとき。
わたしは女子高生だった。
どんなドラマが始まるのか。
どんなドラマなのだろう。

日本は昔と違ってせいぜい10話ぐらいだから。
どんなに辛い役柄でも10話我慢すれば良い。
たまに終わって欲しくないドラマもあるけれど。

それにしても100話超えのドラマの時は、さすがに待ち遠しかった。
ドラマが終わらないとわたしは次のドラマに出演できない。造りもののドラマじゃない、本当の人生だからね。

それにしても。

つらいとか悲しいとか私に話す人に、最終回は必ずくるからと言うとなぜ怪訝な顔をするのだろう。



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