怖いということは会話が成り立たないことかもしれない
泣いたり、笑ったり、ドキドキハラハラしたり、気持ち悪くなったり、心が動いて、どこか別の世界、別の時代に連れていってくれる五十嵐貴久さんの作品が大好きです。
『パパとムスメの7日間』は、笑えるし、『1985年の奇跡』は痛快青春野球小説で、『年下の男の子』は明るい恋愛小説、『For You』は切ない恋愛小説、『安政5年の大脱走』は奇想天外ハリウッド映画版時代劇大脱走で、『相棒』は坂本竜馬と土方歳三が徳川慶喜暗殺未遂事件の犯人探索の為、コンビを組むというありえない設定。『交渉人』『TVJ』等のミステリー、サスペンス、犯罪もの、探偵もの、幅の広いエンターテインメントです。
デビュー作が、ホラー小説なんです。
リカ 五十嵐貴久
リカとは、ネットで知り合ったのできちんとリカと対峙するのは後半で、それまでは、メール、電話だけのリカなのに、怖い。
恐怖、怖いということは、会話が成り立たないことかもしれないと思いました。リカはリカの世界で話したいことを話し、脈絡がない。
本間と話が通じない。
説明のつかないもの、意味がわからないもの、理解不能なもの、ってどう対処したらいいかわからないから怖さを感じるのだと思いました。
現実でも、日常でも、世界の中の争いも、話しが通じないから怖いのだと思いました。
リカの異常さが、圧倒的で気持ち悪くって、文字を追うことができなくなり、読み飛ばしたくなります。
後味は、最低で吐き気がします。
読んだ人を気持ち悪くさせる筆力、すごいと思います。
意図しての、それ。
『リターン』『リバース』『リハーサル』『リメンバー』『リフレイン』とシリーズ化されてます。
五十嵐貴久というペンネームは、「俺たちの勲章」で故松田優作演じる刑事からパシリ扱いされていたアラシこと五十嵐貴久刑事(中村雅敏)からの借用だそうです。