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看護歴20数年。今はとある病院の師長をしています。日々感じたことや看護教育に関すること…

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看護歴20数年。今はとある病院の師長をしています。日々感じたことや看護教育に関することを書いています。

最近の記事

理想の上司とは?~PICUの植野Dr コウノトリの今橋Drを見て感じたこと~

PICUの描く雰囲気が時々コウノドリの描いていた世界観と重なると感じることがある。 2つの医療ドラマに共通しているのは、小児をテーマとしているところであるがそのなかで医療の限界や厳しい現実を隠すことなく表現していること 従事している医師や看護師がその中で真摯に患者や家族と向き合い治療を行っているところだと思う。 その中でもPICUの植野Dr(安田 顕)、コウノドリの今橋Dr(大森 南朋)は理想の医師であると同時に理想の上司として描かれていると思う。 理想の上司 ①仕事

    • 医療現場のパワハラで思うこと

      医師の看護師に対するパワハラがいくつかニュースになっている。 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1053754 されている場面を見たこともある。 看護師長としては、スタッフがそのような行動をされていた場合、医師に注意をするべきであるし、 実際にその医師の上司を通して注意してもらったこともあるが、すんなり解決とならない事例も多い。 その理由の一つが、少なくとも私の職場における医師から看護師のパワハラは 看護師側のミスやなんらかの技

      • 芦原妃名子の訃報を聞いて~私は確かに「セクシー田中さん」に救われた~

         ニュースに疎い私は、そもそも脚本家と芦原さんが揉めていたらしいということも知らず、突然その訃報を知った。あまりにも突然だったから、ただただ驚き、残念に思い、なんて貴重な人材を失ったのだろうと悔しく思った。  ちょうどほぼ一年前。私は「セクシー田中さん」について記事を書いている。  この記事を読むと、一年前のあのとき、アラフィフの失うものが多い自分と、それでもまだなにかに出会えるかもしれないという期待の間で、この漫画に勇気づけられ、2023年も頑張ろう!と前向きな気持ちを

        • 「最後の医者は 桜を見上げて 君を想う」を読んで思う医療従事者の役割

          「最後の医者は 桜を見上げて 君を想う」二宮 敦人  この作者はまるで、医療従事者ではないかと思うくらい、医療の描写が細かく、リアルに描かれていた。また、「死」に直面した患者家族の心情の描き方も丁寧だ。医療従事者にも、そうでない人にもぜひ読んでほしいおすすめの本。読みやすいので、一気に読むことができ、読み終わったあとにいかに生きるのか、いかに自分らしく死ぬのかを、考える作品だ。  内容は、まさしく私が現在外科病棟で起こっていることが描かれていた。 今の時代、医師は、患者・

        理想の上司とは?~PICUの植野Dr コウノトリの今橋Drを見て感じたこと~

          75歳以上は医療費負担3割の時代が来るのか?ロスジェネ看護師が思うこと

           この記事を読んで気分を害す方もいるのは重々承知していますが、でも現実なので書きます。 すでにここまで進んだ少子高齢化社会の中で、ロスジェネ世代である私が老年期に突入するときは、本当に社会保険関連費(年金・医療保険など)のGDPに占める割合も増大し、一部のネットニュースで騒がれているように医療費3割負担のときも来るのかもしれないと考えている。 個人的には、医療従事者の給料をあげるためには病床数を減らし、診療報酬をあげるしかない(入院、通院患者を増やさないようにすることで、

          75歳以上は医療費負担3割の時代が来るのか?ロスジェネ看護師が思うこと

          シンガポール旅行~大人の社会科見学編~

          1箇所目:Sustainable Singapore Gallery シンガポールの水問題について、息子から熱く語られて調べてみたときに見つけた場所。 そもそもこの場所はMarina Barrageという、貯水池(ダム)である。と同時に豪雨の際は、ダムの9つの水門を開き、過剰な雨水を海へ放出することで、平地を水害から守っている。そしてこの公園からはマリーナ・ベイやガーデンズバイザベイが見えるため昼も夜も景色は抜群だ。 立地もMRTガーデンズ・バイ・ザ・ベイから徒歩5分程度と

          シンガポール旅行~大人の社会科見学編~

          映画「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」を見て改めて思う、日本人の特性

          映画の概要は、(ネタバレにならないように予告程度で)現代の女子高生が、タイムスリップして1945年にたどりつく。そこで特攻隊の青年と恋に落ちる話。 タイムスリップものだから、当然フィクションなのだが、終戦間際の特攻隊として出撃する人の命の散りゆく様子、そして福山雅治の主題歌がその青年の心情をなぞらえており、泣けてしまった。娘も横ですすり泣いていた。 ただ、シンガポールから帰国した直後のせいか、途中から当時の軍部に、政治に腹がたって仕方なかったというのが、一番の感想かもしれ

          映画「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」を見て改めて思う、日本人の特性

          医療従事者の処遇改善のために診療報酬をあげるべきか~一人の医療従事者の立場から思うこと~

          今年度の診療報酬改定は、医療・介護の同時改定ということもあり、色々な駆け引きがあるであろうと思ったが、この一年の物価上昇の影響もあり、「医療従事者の処遇改善」「医療機関の経費の増大」ともからめて活発に議論されており、新聞やニュースにも取り上げられている。 ここからは、ある中規模病院に勤務する一人の看護師の意見として。 病院の経営は確かに厳しい。 看護師長のため、診療部長などが出席する部長会にも参加しているが、光熱費の高騰、医療材料の高騰(医療材料は輸入品がとても多い)

          医療従事者の処遇改善のために診療報酬をあげるべきか~一人の医療従事者の立場から思うこと~

          「知らせない」というカードを切っている人は、責任を負う覚悟があるのか?~福島の東日本大震災・原子力災害伝承館で思ったこと~

          先月東北地方を巡った際に、浪江町立請戸小学校と福島の東日本大震災・原子力災害伝承館を訪れた。 津波被害を受けた請戸小学校は、日頃の避難訓練と、教員たちが的確な行動をとったにより、生徒全員が無事に避難をすることが出来た。この小学校の2階には、津波からの避難後、長きにわたり原子力発電所の事故の影響を受け、翻弄された人々の暮らしの様子が展示されていた。 本当に恥ずかしい話であるが、私はあのとき福島に起こったことを十分に知らないまま訪れていた。そのため、帰宅後に朝日新聞のプロ

          「知らせない」というカードを切っている人は、責任を負う覚悟があるのか?~福島の東日本大震災・原子力災害伝承館で思ったこと~

          イチローの言葉に同意~これからの若者に求められる自立と自律~

          この記事を読んで、そう、そうなんだよと若手のスタッフに伝えたくなった。これは、私も、管理職になりずっともやもやしていたことだからだ。 ホワイト、でも成長させてくれない環境に不満をいだく20代も多いと聞くので、「仕事をする上で成長するためにどのような支援が必要か、支援を受ける側はどのように取り組むべきか」このイチローの記事で考えられればいいのではないかと思う。 私が新人の頃は(という言い方はいけないのだろうが、事実として)、先輩から勉強不足を指摘され、宿題として調べるよ

          イチローの言葉に同意~これからの若者に求められる自立と自律~

          記憶の中の自分~輝いていた、そこにある時間~

          昨日、残っている仕事をするために休日出勤した。 休日の20時過ぎの病棟は電話もほとんどならず、静かで好きだ。 しかし、昨日はナースステーション内に、入院している認知症の患者さんが二人座っていた。ふたりとも腹痛などの症状は落ち着いており、歩行も自力でできるが、まだ食事が許可されておらず点滴を投与している。一方で、認知機能の低下があり入院していることを十分には理解できず他の病棟へ行くことや点滴棒を忘れて立ち上がることがある。転倒リスクもあり、まだ消灯まで時間もあるため、夜勤の

          記憶の中の自分~輝いていた、そこにある時間~

          新型コロナウイルスワクチンのアナフィラキシー事例から思うこと③  死亡診断書に記載された病名は「急性心不全」だった

          今回の報道やネットニュースでは、あまり取り上げられていないが、報告書を読み、改めて日本の課題だと感じたことがある。 それは、搬送先の病院での死亡確認後の対応だ。 搬送後の医療処置や、死亡診断に至る経緯ではない。 死亡確認後、異常死として届出ず、病名を「急性心不全」その原因を「致死的不整脈」としているところだ。(当時のニュース映像から) 報告書を見ると夫に対し「心肺停止の原因は詳細不明」と伝えているにも関わらずだ。 予期せぬこのような死亡時、原因を明らかにするための選択肢と

          新型コロナウイルスワクチンのアナフィラキシー事例から思うこと③  死亡診断書に記載された病名は「急性心不全」だった

          安全に向き合うとは~日航安全啓発センターで思ったこと~

          医療安全管理担当者となってからずっと気になっていた日航安全啓発センターに行くことが出来た。ちなみに、今回は土木工学に興味がある息子と行ったのだが、自分の進路でも安全を守ることの責任を感じたようであった。 日航安全啓発センターは羽田の新整備場から徒歩2分のところにある。 「日航の墜落事故」といえば、ある年齢以上の日本人であれば誰もが思い出す、あの1985年8月12日御巣鷹の尾根に墜落したボーイング747機の事故のことである。乗客乗員524名のうち520名が亡くなった、今でも

          安全に向き合うとは~日航安全啓発センターで思ったこと~

          震災遺構を訪れて③女川の復興を見て思ったこと

          そこは、都内のおしゃれなカフェのある一画といえるような、 軽井沢のハルニレテラスを彷彿させる「小さな街」だった。 三連休の中日。多くのカップルや家族連れの人であふれており、笑い声があった。 ソフトクリームが売り切れていたので、クレープを食べてぼんやりしていると、 どこからかライブの音楽が聞こえてきた。 もともと地理に疎く、今回の旅行は予備知識なく行くと決めていた私にとっては、この街の 3.11の前の姿、3.11直後の姿は想像つかなかった。 少し散歩をすると、基礎部分が

          震災遺構を訪れて③女川の復興を見て思ったこと

          震災遺構を訪れて②

          東日本大震災では、「命を守る人の命をいかに守るのか」という問いも、たくさん出た。 例えば宮城県石巻市の市立雄勝病院。ここでは、入院患者の40人に加えて、病院にとどまり命を落とした職員が24名いる。3階建ての病院が津波に襲われたとき、入院患者40名と職員28名がいた。助かったのはたった4名だ。 非番にも関わらず病院に向かい被災し亡くなられた方もいる。 住民に津波が来ることを告げられても、患者のもとへ戻った職員。 すぐ裏手の山に逃げればもっと助かった職員もいたのではないかと言われ

          震災遺構を訪れて②

          東北震災遺構を訪れて①

          10月の三連休に、東北の震災遺構を家族で訪れた。 きっかけは2年前、主人と息子が青春18きっぷとBRTを使い、2泊3日東北地方を訪問したのだが、それから折りに触れ、二人から日本人として知るべき事実があると言われていた。 それならば中学生になった長女も連れて行きたいと思い、なんとか家族4人の都合を合わせて今回訪問することとなった。 一週間たったが、あまりにも考えること、感じたことが多く、自分の文章で伝えられないのがもどかしいというのが本音だ。 2011年3月11日、

          東北震災遺構を訪れて①