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#5 『伊豆の踊子』聖地巡礼の旅!

 『伊豆の踊子』をたまたま読んだので、伊豆に行きたくなり、行ってしまいました。行きやすく有名なところだけですが聖地巡礼をしました。

旧天城トンネル

 このように検索するとすぐヒットする聖地です。主人公が天城越えをするため通ったトンネルですが、ここで旅の踊り子に出会うわけです。

 ようやく峠の北口の茶屋に辿りついてほっとすると同時に、私はその入り口で立ちすくんでしまった。余りに期待がみごとに的中したからである。そこで旅芸人の一行が休んでいたのだ。(p8)

川端康成『伊豆の踊子』新潮文庫、2001年、145刷版より
旧天城トンネル北口(修善寺→下田方面)

 おそらく、主人公が入った茶屋はもっと入口より手前だったでしょう。いまはそのような跡は残っていませんでした。

湯ヶ野温泉

 ここは「伊豆の踊子の宿 福田屋」です。映画のロケ地に何度もなった有名な場所です。

伊豆の踊子の宿 福田屋 入口
近くには記念碑と像が。

川端康成、執筆の宿 湯本館

 福田屋から少し離れますが、川端さんはここで作品を執筆したようです。

湯本館

「子供なんだ」

 話を作品に戻すと、主人公は踊り子の貞操が気になって眠れませんでした。夜のお座敷で太鼓がなっているうちはいいのですが、一度鳴り止むと踊り子が客と床入りをしたのではないかと心配で仕方ありません。ついに朝を迎え、あまりいい気分ではない状態で外に出ると温泉で裸ではしゃいでいる少女の姿を見ます。踊り子でした。

 彼に指ざされて、私は川向うの共同湯の方を見た。湯気の中に七八人の裸体がぼんやり浮んでいた。
…手拭もない真裸だ。それが踊子だった。若桐のように足のよく伸びた白い裸身を眺めて、私は心に清水を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。子供なんだ。(p20)

同上、川端康成『伊豆の踊子』
福田屋からの景色。現在、川の向かいには共同浴場があります。
踊り子の姿をここから見たのでしょうか?
正確な場所はわからなかったので、想像で撮影しました。

そうして安心した主人公は踊り子たちと目的地の下田に向かいます。

下田

 旅は道連れと一行は下田を歩きますが、作中に登場する名所は「下田富士」です(同書p40を参照)。成層火山特有の見事な形をしていますよね。作中では下田富士から港を見ていますが、私の今回の旅は時間があまりなく、下田港から見上げるだけにしました。川端さんもこの景色を見たんですかね。
 そして、一行はそれぞれの目的地に向けて別れます。ちなみに踊り子一行は大島の波浮港の人たちであるらしく、下田に十日程いて伊東温泉から島へ帰るという行程とのこと(同書p14を参照)。主人公は東京行きの船に乗るため下田に向かいます。
 船に乗る直前、主人公は見知らぬ人にお婆さんを水戸まで連れて行ってほしいと懇願されます。船の目的地は東京だったので、おそらく常磐線の上野駅から水戸駅までの電車を最後は手配してあげたのでしょう(ここまで作品に書かれてはいませんが)。
 踊り子たちを胸に抱きながら、主人公は伊豆をあとにします。
 私の伊豆の旅もここで終わります。

下田港から下田富士(左)を眺めて。
ここから船は出発したのでしょうか?

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