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『ロスト・ドッグ』(光文社刊)感想文


初めてのブックレビューです📕
日頃よりnote上で大変お世話になっており、敬愛してやまない小説家・酒本歩さんの長編作品です。

3つほどポイントを挙げさせて頂きます。

①文体が丁寧かつ繊細
まず、驚愕の読みやすさ。
小説にありがちなオーバーな表現や無駄な比喩を用いらず、文脈や流れが全体的に通っています。
ミステリー小説はある事件やテーマに沿って謎を解明していくジャンルです。
しかし、犬という動物について、ペットに医療費控除はあるか等々。犬を飼うにあたっての留意点が非常に分かりやすく説明されています。
かと言ってしつこさは全くなく、くどくどしさも省かれていました。私も様々なミステリー小説は読みましたが、小説そのものの御手本のような作品という印象を受けました。

②テーマに対して忠実に描かれている
内容をあまり言い過ぎると、これから本作を読む方々へのネタバレになるので控えめにします。テーマは『人はペットにいくらお金をかけられるか?』です。主人公であるwebライターの男性はフリーランスの記者として、厳しい生活費の中からペットであるモコの心臓病の手術費である200万円を用意しなくてはならなくなります。その過程で身近な人の死や身内の入院という不幸に見舞われます。その必死に生きる姿には思わず感涙してしまいました😢そんな最中、仕事上である出来事が起こります。テーマもさることながら、小説としても起承転結がしっかりとしています。ジャンルに限らず、プロの小説家を目指す全てのnoterさんにオススメしたい作品です。

③好き嫌いの枠組みを越えた作風
犬が登場する作品な為、読書前は猫好きのかたには受け入れられないのではと懸念してました。ただ、読み進めていくうちに猫派の私でも犬に興味を持ってしまうぐらいストーリーが大変面白かったです。脳内をこねくり回してミステリー小説を読むのは体力を要します。ミステリー小説なのに、主題(動物医療)について強く深く考えさせられる小説に初めて出逢いました。

最後に、
酒本歩さんの作品には優美でかつ理知さを感じます。私自身、プロの小説家を目指す一人として丁寧かつ繊細な文体を学ばせて頂いてます(ミステリーは難しい😓)。
どのような文体ならば読者に読んで貰えるか、伏線を回収するにはどのタイミングで動くか、興味の惹くテーマとは・・・etc。全て難しい永遠のテーマです。
ただ、一つ言えることがあります。
小説の腕を上げる為には、毎日書き続けて誰かに読んで貰うことを繰り返すことが大切だと思います。
年末年始期間は、執筆する上で大変貴重な時間です。ただ、孤独感はありますよね💦

たった一人の創作世界に疲れたら、酒本歩ワールドに触れてみてはいかがでしょうか。勇気やパワーが湧いてくると思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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