見出し画像

蒼氓

2003年のジャックスカードのCM。
「パンとカメラ」、とても印象的かつドラマチックなストーリーもさることながら、一聴してこの曲の虜となった。

村上淳さんと伊藤歩さん、名演です

静かな、確かな圧倒的肯定感。
ゴスペルの影響を受けて作られたこちらの楽曲。
コーラスには、奥様の竹内まりやさん、桑田佳祐・原由子ご夫妻を迎えており、包容力や安息感の厚みを前にして涙なしには聴けない。

弱っていることを自覚しつつもなんとなくやり過ごしている時、そろそろまずいなぁという局面でこの曲を聴くと、たちまちデトックスされる。
夕暮れよりも明け方の空を眺めながら聴きたくなるような、そんな一曲だ。
以前紹介したキリンジ然り、こちらもまた心のオールタイムベストに確実に刻まれている。


「蒼氓」(そうぼう)といえば、石川達三の小説。

1930年代、貧困にあえぐ農民たちが新天地を求め、ブラジルへ出立するまでを描いた作品。
三部作の一作目である。
ブラジル移民をテーマにした作品といえば、こちらの作品も外せないだろう。

かつて日本政府が国策として「送り出す」側として移民政策を推し進めたのは、若い世代にはあまり知られていない事実だろう。
甘い誘い文句に夢を抱いて、出稼ぎに旅立った先で待ち受けていたのは、想像を絶する過酷な環境だった…

山下達郎さんの「蒼氓」は、ブラジル移民を背景にした歌ではないが、打ちひしがれた人々に寄り添い、それでもなお“生き続ける”ことを肯定する歌だ。
大きな流れの中で、ただ、今を生きる。
足るを知りつつ、ちっぽけな自分も最大限に尊重して生きていきたい。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?