希帆

徒然なるままに。雑記。 ------------------------- 書く仕事が…

希帆

徒然なるままに。雑記。 ------------------------- 書く仕事がしたいと思ってます。スモールステップとして、7記事/週ペースで更新します。

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2つのアイリス

偶然にも、2つのアイリスが重なった。 同じ日同じ街で、こんな人生の交差を目の当たりにするなんて。 先月、友人に会う為に上京した。 一泊二日の一人旅。 両日とも彼女と約束していたものの、 合流するまでにまだ時間があった。 下調べしてあった美術館。 ちょうど、「ゴッホと静物画」展の会期中だ。 時計と携帯の中の地図を片手に いそいそと会場へ向かった。 アジアで唯一、ゴッホの『ひまわり』を所有するSOMPO美術館。 アクセスしやすい立地と抜群の知名度で、 あっという間に入場待ち

    • スイッチオフしてテイクオフ

      まるで、この子と2人だけの孤島にいるよう。 育休中の焦燥感を思い出す。 幸せと背中合わせにあった孤独感。 日がな一日我が子と向き合う。 身支度をし、散歩に出て、食事をさせる。 支援センターに行けば、同じように大人との会話に飢えた親御さんがいた。 とても意義のあることをしているはずなのに、生産性がない自分に落ち込む。働いていた頃のスピード感とまったく違い、目にみえる成果や達成感がない。どんどん社会から追いていかれる感覚。 望んでようやく腕に抱けた我が子なのに。 子にも失

      • オーバースペック

        朝出かける前、バタバタと娘たちが装備をはじめる。 上着、かばん、水筒…忘れ物に気を配りながら。 いつだって必要最小限の長女は、すっきりしたシルエットで身なりを整え、すでに人数分の靴まで並べ直してくれている。 次女はというと、母から強奪して手に入れたモコモコのネックウォーマーに、園の指定ではないニットのとんがり帽子、毛足長めのコート、服も裏起毛。 全身でありったけの毛をまとっている。いや、埋もれている。 ほぼ毛が歩いているといっても過言じゃない。 もちろん両者の好みの違い

        • はざまはいかさま?

          「ファミコンって通じる?」 「もう希帆さんくらいだとしらないんじゃない?」 自分よりも何世代か上の紳士たちが、懐かしい話に大いに盛り上がっている。 一緒になって笑っていたら、話がふられた。 あぁ、しまったな。 この場面での模範回答は、「知らない」もしくは「親が持っていた」といったところだろう。 ところが、私は知っている。 昭和と平成のはざまに生まれ、どちらの時代にもどっぷり浸かりながら生きてきたからだ。 どちらでもあるのに、どちらでもない。 そんな「はざま」のアイデンティ

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        2つのアイリス

          鏡よ鏡

          「ちゃーちゃん、これは“りょうてにはな”だね」 両隣から集まる嬉しそうな視線。 「そうだね〜、ちゃーちゃんは幸せものだね!」 左右ともに手を握り返しながら言う。 きゃーっと歓声が上がった。 お出かけのたびに娘たちと手をつなぐ。 定位置はなく、母が真ん中とも限らない。 あっというまに大きくなってしまう彼女たち。 いつまで素直に手を繋いでくれるのだろう。 今この瞬間を楽しみたくて、いつからか繋いだ形にコメントして遊ぶようになった。 「お、これは背の順だね〜」 「今日は

          鏡よ鏡

          ジャスト・ザ・スリー・オブ・アス

          「いま、うちはさんにんきりだねぇ」 のんびりとした明るい口調で、次女が後ろから話しかけてきた。 私は前をみたまま「そうだねぇ」と答えた。 さんにんきり、という言葉がせまい車内に波紋となって響き、頭の中に何度もこだました。 さんにんきり。 ひとりずつ増えてきた家族の道のりがあった。 直近のふたつは私のなかではじまったが、ほどなくして自分の心臓を打ち鳴らし、あっという間にそれぞれの人生を歩み出した。 ばらばらが寄って集まった家族。 これからも出入りがあるのはまちがいない。 さん

          ジャスト・ザ・スリー・オブ・アス

          物語があるほうがいい

          モノよりコトに関心が移った、アフターコロナの世界。 そんな中でもモノを手に入れる場合、時価のような相対的な価値よりも、思い入れや自分にとっての物語といった絶対的価値があったほうがいい。 そしてそれは、大人に限った話ではない。 こどもたちがモノを手に入れる機会は、イベントの節目節目で訪れる。 たとえば、誕生日やクリスマス。 本人が衝動的に欲しいものを手に入れることは、いっときの所有欲や願望を聞いてもらえた肯定感を満たしてくれる。 しかし、だからといって、簡単に手に入ったものは

          物語があるほうがいい

          弾き語りたい

          弾き語りたい。 それはかねてからの願望だった。 私の母から贈られたキーボードのみの電子ピアノは、今現在進行形で習っている娘にとっても、私にとっても救世主だった。 あくまで自分が楽しむために、好きな楽曲を鍵盤楽器で奏でながら歌う。 子どもたちが寝た後に夜な夜なボリュームをしぼってささやくように弾き語ってみたり、好きなイントロを繰り返しては曲のよさを噛み締めてみたり。 ピアノを習っていた頃は、先生の言われるがままに課題をこなし、矢継ぎ早に用意される発表会や進級試験に向けた演

          弾き語りたい

          アンコントローラブル

          制御できないことはこわい。 自分の手に負えない、終わりがみえない。 実態のみえない大きな力に飲み込まれる不安。 ケセラセラな次女とは真逆の、いつも生真面目できちっとしていたい長女。 彼女がいま恐れているのは、女性の体だ。 彼女は、母を通して生理を知った。 私の生理周期はきわめて不順なので、いつはじまるか、いつ終わるかをよく娘たちは気にしている。 ひとたび始まれば10日以上続くため、その期間は一緒に湯船に浸かることができない。まだ幼い子たちだけですべてを済ませることは難しい

          アンコントローラブル

          不意打ちのリャマ

          「ねぇ、ちゃーちゃん。  リャマってさ、どんなのだっけ」 朝食を咀嚼しながら長女が尋ねてきた。 なんという不意打ち。 「え?リャマ?えっ、ラマ?」 「リャマとラマ、どっちなの?」 「えええ…どっちだろう」 「どんなのだったっけ?」 「えっと、ちょっと待ってね。  なんかさ、コブのないコンパクトなラクダみたいなさ…」 彼女はパンを口にしながら、一体どこへ心を飛ばしていたのか。 たくさん詰まったゆっくり揺れ動くほっぺと、長い睫毛。 次第に彼女がラクダと化してくる。

          不意打ちのリャマ

          ボーイフレンド 2

          次女は2歳の誕生日目前から保育園生活をスタートさせた。希望の園には入れず、決まった先は未満児クラスの受け皿となっている園だった。 第一希望の園に空きができると転園を決める家庭は多く、園児の出入りが激しかった。 0-1歳クラスで仲がよかったお友だちとの別れ。なんと9割近くが翌春にはその園を去ってしまった。 2歳児クラスが始まって数ヶ月、見るからに彼女はさみしさに満ちていた。 そのさみしさは、共に遊び成長し、話せるようになりはじめた時期に言葉を交わし、お友だちと過ごした日々の豊

          ボーイフレンド 2

          ボーイフレンド 1

          恋だの愛だの小難しいことを考え始める前。 ただまっすぐ相手を見つめる気持ち。 娘たちを通してみる、幼児たちの世界がキラキラと眩しい。 一方でおもしろいのが、その世界すらどこまでも社会の縮図だということ。世の摂理がすでにDNAレベルで備わっているように感じるのだ。 年中の長女には、現在両思いの相手がいる。 去年からその子のことはかっこいいと話していた。どんなところがかっこいいか、夜お風呂場でしっとりと語ってくれていた。 他のお友だちのことは、キャッキャしながら話したり、嫌なこ

          ボーイフレンド 1

          書を携えて冒険に出よう

          本と音楽への投資は惜しまない。 本から得た知見は、誰にも奪えない自分だけの財産となる。 音楽には今を鼓舞したり、気分を落ち着けたりする効能がある。色濃く記憶と結びついては、いつかの支えになってくれる。 いずれも、生涯の友となってくれるものだ。 文庫本とウォークマンはいつも鞄に入れて持ち歩いていた中学生時代。 高校生になり、携帯が音楽プレイヤーを兼ね備えるようになっても、文庫本は常に数冊所持していた。 今は荷物の都合次第でKindleを利用することもあるが、やっぱりページをめ

          書を携えて冒険に出よう

          傍らに名参謀

          今話題のシンガーソングライター、TOMOOさん。 幼少期からピアノを弾き始め、大学進学後に本格的に音楽活動開始。2021年8月発表の“Ginger”という楽曲で注目を集める。 昨年9月には、メジャー1stアルバムとなる“TWO MOON”をリリース。 リード曲の“Super Ball“をはじめ、ラジオやSNSでも注目されるの“Grapefruit Moon“など、間違いなく令和を彩る一枚となっている。 その魅力は、独創的な歌詞の世界観だったり(不器用に生きづらさを抱えて日々

          傍らに名参謀

          かきくけ交渉

          「このキャラクターの新しい水筒が欲しい。  それが難しければ、水筒カバーでもいい。」 おっ、うまいこと交渉してくるな。 長女に言われた時、率直にそう思った。 入園に合わせて買った保冷保温対応の水筒。 現役2年目でまだまだ綺麗な水筒には、当時から好きだったキャラクターが印字されている。 「好き」は随時更新されていくもの。 今もそのキャラは好きだけど、さらに夢中になれるものが見つかったというのは、喜ばしいことではある。 しかし、同じタイプのものを買い足すのならば、サイズ違い

          かきくけ交渉

          かりそめの止まり木

          昨日からの積雪により、住まい周辺は一夜にしてすっかり雪国となった。 今朝もまだ吹雪いている中、雪かきに追われる。 除雪車がすぐそばまでは来てくれているので、その轍に繋げるべく、玄関からひたすらにスコップで掘り進める。 そこまで作業してしまえば、あとは轍を踏み外さぬよう、慎重に車を進めるだけだ。 子どもの送迎の為、大通りから逸れた道に入る。スタットレスタイヤでも容易に滑る道。 恐る恐る進んでいると、私はあることに気がついた。 小鳥が、轍を占拠している。 今まさに車で進もうと

          かりそめの止まり木