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オーバースペック

朝出かける前、バタバタと娘たちが装備をはじめる。
上着、かばん、水筒…忘れ物に気を配りながら。

いつだって必要最小限の長女は、すっきりしたシルエットで身なりを整え、すでに人数分の靴まで並べ直してくれている。

次女はというと、母から強奪して手に入れたモコモコのネックウォーマーに、園の指定ではないニットのとんがり帽子、毛足長めのコート、服も裏起毛。
全身でありったけの毛をまとっている。いや、埋もれている。
ほぼ毛が歩いているといっても過言じゃない。

もちろん両者の好みの違いはある。
そして、ご機嫌で出ることに意義がある。
しかし、次女の園では、早朝にはその全装備品を外し、なんなら靴下まで脱がせた上で引き渡さなくてはならない。

次女が玄関を出て車まで歩く時間、およそ10秒。
園の駐車場から早朝保育の部屋まで、およそ30秒。
明らかにオーバースペックだ。着る、脱がせる、片付けるのトータル時間のほうがはるかに長い。

全装備がルーティンと化していて、気候で調節したりはしない。彼女は肌触りやあたたかさ至上主義なのだ。
効率よりも、自分の気持ちのために優先することは大人にもある。

おしゃれもこだわりも、ひいては自分のためだ。
その少しのオーバースペックが、自分の背中を押して、背筋を伸ばさせてくれる。
仕事に行く時。友人と遊びに行く時。
好きな相手とデートに行く時。
こどもと思いっきり公園で遊ぶ時。
そのシーンで自分が一番自信を持って踏み出せること。
その人の価値観や優先度がみえてくる。

時間がない時に、時間をかけてまでするかどうかは、本人が決めることだ。
彼女たちの選択に振り回されつつ、時間がない朝を彼女たちの「好き」と駆け抜ける日々が続いていく。

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