父の学歴コンプレックスについて聞いてください

50歳間近の私は、ごくたまに、高齢の父とパソコンでメールのやりとりをしています。

母とはもっぱら電話ですが、耳の遠い父とはメールでのやりとり。

そんな父が、私へのメールに、何年にも渡って書いてくることがあるんですよ。

それが「学歴のなさ」に関すること。

私の父は、中卒なんですよね。
家が貧乏で、他の兄弟たちも高校には進学させてもらえなかったそう。
父は早くに実家を出て、一人で生きてきた人でした。

戦後まもなく、日本がまだ貧しかった時代。
父の年代で、同じような境遇であった方は少なくないだろうと想像するのですが、しかし一方で、同じ年齢の母は、中学から私立を受験するという「お嬢さん育ち」です。

子供時代に「畑のサツマイモを盗んで食べた」と言う父と、「オーダーメイドで服を作っていた」と言う母との間には、あまりにも激しい貧富の差があったのですよね。


さて、そんな父からのメールにどんな言葉が並ぶかと言うと、若い頃の苦労話のついでに、「自分にも学歴があったらね」と書かれていたり、「妻（私の母）が学歴重視の人だったからね……」と書かれていたり。

中卒であることを、80歳を超えた今も、気にしている（涙）

私は、悲しい。

実際、友達が高校に進学する中で、自分だけが進学できなかったことは、悲しく切ない体験だったろう。
そのせいで就職をする際などにも幾多の苦労があったろうことは、想像に難くない。傷ついたことも、涙をのんだこともあったろう。

若かりしころの父よ、本当に本当に、ご苦労様でしたと言いたい。

でもね。

でもね、なのよ。

今現在、老後の人生を歩んでいる父よ。
ちょっとは考えてもみてくれ！！

若い頃にコンプレックスを抱くのは仕方がないとしても、今現在、父が学歴を気にしているのは、なんでなの？
いくらなんでもこの期に及んで「情けない」と言わざるを得ないよ。

学歴なんて、今はもう、あなたの暮らしになんらの関係性もないじゃないか。そして最初から、あなたの人間性に関わりのないことだったはずでしょう？

父自身が「学歴がある人間は、偉い・立派・自慢できる」と思っているからこそ、自分の学歴のなさを卑下するハメになるんだろうがよ！

中卒がなんだってんだよ！

以前お笑い芸人さんの「学歴」の話にも書いたけどさ⤵

私は、社会人になってから、いわゆる一流と呼ばれるキャリアの人でも、くだらない人間がいることを、まざまざと経験しました。

つまり、人間には4種類がいるの。

〇学歴があって立派な人
〇学歴があってしょーもない人
〇学歴がなくて立派な人
〇学歴がなくてしょーもない人

常に、この4種類がいるの。

私は、父の繰り返される「学歴のなさ」への言及に泣けてきまして、父に長文メールを送り付けたことがありました。

父よ、「自分に学歴がない」ことを、いつも書いてくるね。

父よ、「学歴がなくても、立派に自営業者として、家族4人を養ってきたじゃないか。私は、そのたくましさを、いつも尊敬してきたよ」。

父よ、母は「〇〇大学がすごい」だの「▢▢会社は一流」だの言って、権威主義なところがあるけどね、そんな戯言、スルーできなくてどうするの！！
母のことを「バカだなぁ」って嗤えなくて、どうするの！！

「自分は学歴がない。そのことは、当時は悲しくコンプレックスだったかもしれないけれど、その反骨精神で、ここまで自分は仕事を頑張って、充分に稼いで家族を養ってきた。むしろ学歴なんかまるで必要なかった、と誇りを持てるようになってください」

おそろしく長いメールで、私は父にお願いしました。

学歴を気にするのことのバカバカしさを、それはそれはかみ砕いて説明したつもりなんですけどね。
それでも、どこまで伝わったことやら……。

言葉って、伝わらない人には、ぜーーーったいに、伝わらないんだよね（涙)

どんなに言葉を尽くしても、人は自分が理解したいように、相手の言葉を受け取るんだよね。

父の心の奥深くに刻まれたコンプレックスは、とてもとても根深いのだろう。
だから、１％でもいいから、私の言葉が父のコンプレックスをぶっ壊せ！！と願いながらメールしました。

私にだって、コンプレックスはたくさんあるよ。

あるけどもさ。

「何かが不足している・自分は劣等である」と思いながら生きていると、人生はつらいよね。

足りている部分を見つめずに、「あれが足りない、これが足りない」って。

まるで自分で自分を不幸にするための呪文みたいなものだよね。

私は、東大を卒業してまでも、コンプレックスに苛まれている人を知っているよ。そういう人は、東大卒でも大バカ野郎だよ。

そんでね、東大卒を誇り続けたまま死んでいくヤツも、大バカ野郎だよ。

80歳を超えてまで、もはやまったく関係のない、「学歴のなさ」をつぶやく父よ。

いつまで命があるかも分からないんだから、もっと自由に、もっと楽しく、人生を謳歌してちょうだいよ。

間違っても、「学歴がない自分」を嘆いたまま、死んでいかないでよね。
ホント、お願いしますよ。