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2024年7月の記事一覧
友と呼ばれた冬~最終話
「その所長・・・・・・前所長の千葉だが、あの男がタクシードライバーをあれほど嫌っていたのには理由があった。千葉の前職、正確にはおたくの本社の経理部で働く前のことだが」
千葉が本社から新宿営業所に左遷された話は梅島から聞いた覚えがあったが、それ以上の千葉の過去を俺は何も知らなかった。
「もう15年以上も前の話になる。千葉は奥さんと二人でドライブ中に、居眠り運転のタクシーに追突されて多重事故に巻
友と呼ばれた冬~第47話
パソコンを回収した郷田が二人の元へ駆け寄って合流した。
くそっ、郷田め。知っていたんだな。
郷田はパソコンを誇らしげに梅島の横に立つ男に渡そうとしたが、平手で殴られて頬を抑えた。
「なっ?タケダ!?」
「名前を出すんじゃねぇ!簡単に娘を返しやがって!」
怯えた千尋が俺の後ろに隠れる。
千尋だけでも逃がす。俺は覚悟を決めた。
郷田とタケダが揉めている隙に、胸ポケットから煙草のパッケ
友と呼ばれた冬~第46話
家からパソコンを持ち出して千葉の車に乗り込み新宿に向かったのは19時半過ぎだった。
カーナビを見ると首都高速はところどころ渋滞していた。入谷から入ると渋滞している銀座を経由することになる。
両国橋ジャンクションはまだ渋滞していない。俺は向島から首都高速6号線に入り箱崎経由で新宿へと向かった。
千尋が無事で居ることを祈りながら事故や違反を起こさないように慎重に運転をする。この時間になって
友と呼ばれた冬~第45話
成田と二人がかりで守衛を説得していると、車内から美咲が叫んだ。
「真山さん!あそこ!」
美咲の視線を追うとコンテナの横で倒れている人影が見えた。
「乗って!」
俺が助手席から乗り込むと同時に、美咲がアクセルを踏み込んだ。
「「待て!」」
成田と守衛の声が同時に聞こえたがすぐに後方に消え去る。
ヘッドライトに浮かびあがった人影は微動だにしていない。
美咲が真横でぴたりと止め
友と呼ばれた冬~第44話
あれから郷田の電話は鳴らなかった。
大野は全ての始まりだったあのクレームの日のことを思い出していた。
あの日、成田を送り届けたらそのまま仕事を切り上げて帰庫するように、千葉から指示を受けていた。
事務所に入ると千葉の姿が見当たらなかった。当直の事務員に聞くと「応接室だ」と言われたので行ってみると、郷田と千葉が備え付けのパソコンの画面を見ていた。
「ノックくらいしないか!」
ばつの
友と呼ばれた冬~第43話
「瑞穂ふ頭は確か大野が迎車で向かった場所だったな」
成田が先ほど話したことを思い出したのか、そう聞いてきた。
「はい。あの日、1時間ほど瑞穂ふ頭で停車しています。千葉の車が向かうなら心当たりはそこしかありません。一か八かです」
10分程で「東神奈川」出口から首都高速を降りた。「神奈川二丁目」の交差点を右折すれば瑞穂ふ頭まで一本道だ。
千葉の車は生麦辺りを移動していた。PEUGEOTのカ
友と呼ばれた冬~第42話
俺は成田から聞いた情報を共有すべく、梅島に電話を入れた。
「もしもし」
背後が騒がしい。会社には居ないようだ。
「梅島さん、いま大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。歌舞伎町に来ている。郷田の行きつけの店の手掛かりを探そうと思ったんだが、横文字の店がほとんどだ」
「成田さんから店の名前を聞きました。エンブレイスです」
「エンブレイス?わかった。成田が出て来たビルに行って確認してみよう」
俺
友と呼ばれた冬~第41話
「誰だか知らないが目的はなんだ?」
俺はあくまでも惚けた。できるだけ郷田の証言を引き出したかった。郷田は暫く沈黙した後、言った。
「映像を見ていないのか?」
疑心暗鬼になりかけている。
「映像?なんのことだ?」
「とぼけるな!お前がパソコンを持ち出すところを見ていたんだぞ!」
やはりあの場に居たのは郷田だった。
「パソコンは持っているが、壊れていて動かなかった」
「・・・・・・元