マルトリな親と育てにくい子

①父の日


父の日が近づくと思い出す事がある。
父は、自分が祝ってもらうことには敏感で、子供である私を祝う事には鈍感だった。

父は、自分の誕生日、父の日、勤労感謝の日、老いてからは敬老の日も、自分に関する日が近づく1週間くらい前から、上機嫌になるのを隠せない人だった。祝ってもらうことを楽しみにしていた。祝ってもらうことが当然だと思っていた。

私はその都度、プレゼントやちょっとした料理を準備し、おめでとうやらお仕事お疲れ様だの、それなりのことをした。

しかし、私の誕生日や子供の日には、何も無かった。
クリスマスの時は、父の会社付き合いでケーキを注文していたが、子供の私達にプレゼントが配られることはなかった。

父の日は、私の誕生日より少し前にある。
毎年、父の日は家族で祝うが、そのすぐあとにくる私の誕生日は、誰も祝ってくれなかった。

私が40歳になる前に、父に聞いた。

●●(兄)の誕生日は?
●●(妹)の誕生日は?

兄のことは、跡継ぎ長男として可愛がっていたため、ちゃんと誕生日を覚えていた。
妹のことは、父本人の誕生日と近かったので覚えていた。
私の誕生日は、覚えていなかった。興味が無かったのだと思う。


父は、家族の誕生日に、誕生日当人が好きなケーキを買ってあげられるかどうかより、父自身が好きなケーキを買ってくるかどうかを気にする人だった。

家族の誕生日の時も、私は買いに行かされる役だった。
私の誕生日の時は、誰も買いに行ってくれなかった。

私が高校生になった頃から、私がバイトしたお金で家族のケーキを買うようになった。
私のお金で買うのだから、妹が誕生日の時も、母の誕生日の時も、兄の誕生日の時も、それぞれのリクエストを聞き、「私が買ってきた」「今日は●●の誕生日だから、●●の好きなものを選んだ」とあえて断りを入れて、父に余計な口を挟ませないようにした。

それでも、父が気に入らないケーキを買ってきたと知ると、
「俺はこんなの食べないの知ってるだろう、何で俺が食べられるものを買ってこないんだ」と言った。

とは言っても、食べないならと父にだけケーキを出さないと、それはそれで怒った。
父の好きなケーキを別で買ったからと、皆と同じものを分けなかったとしても「俺には無いのか」と怒った。
父だけ2種類のケーキを美味そうに食べる姿を見て、妹は泣いた。
「なんで私の誕生日に、父だけ2つもケーキを食べてるの?」

縁を切ったのでもう何もしないが、父の日がくると思い出してしまう。

これからは、私が私を大事にし、私が私の誕生日をしてあげよう。
私が私を大事にする。それを続けようと思う。

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