仁吾巴 妍 niaha ken

ひとと記憶について、無心に庭をみつめるネコの真似して、ずっと考えています。

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マガジン

  • 【奇譚】赤の連還

    第七感連環奇譚・赤をめぐる記憶の乱脈・トアレグの小女にのめり込んでいった愛の顛末

  • ハコの画集

    ハコが気ままに描いた記憶の断片

  • 【奇譚】白の連還

    第七感連環ミステリー・白をめぐる記憶の乱脈

  • 記憶のはなし

    ひとは、記憶があって、はじめて、人として生きていけます。記憶は、そのひとの、存在の履歴であり、証です。もし、記憶がなくなったら、ひとは、どうなるのでしょうか?…そのことを、ずっと、考えています。

  • Histoire de la Mémoire

    Contemplation du mécanisme de la Mémoire

最近の記事

【奇譚】赤の連還 8 赤いくさび

赤の連還 8 赤いくさび  翌日の昼ちかく、疲れきって事務所にたどりついた。  本社に短い報告のテレックスを打ち、仔羊の串焼サンドとビールで簡単に昼食をすませたあと、シャワーを浴び、夜まで死んだように眠った。  食器の触れ合う音で、目が覚めた。遠くでライが流れている。時計を見ると、八時を回っていた。  起き上がって窓の外を見た。  無数の光を散りばめたカール状の斜面が、眼下に広がっている。下方に港が見えた。数隻の船が、黒い埠頭に接岸している。その灯が水に揺れ、闇ににじんだ

    • 【奇譚】赤の連還 7 赤いラガー

      赤の連還 7 赤いラガー あのとき、キミも知ってのとおりだが、ぼくが随行した一行は、予定より二時間遅れて、首都の国際空港に到着したのだった。 実をいえば、それまでキミと会わなかったことが不思議なくらい、ぼくもあの国には毎年、技術通訳として、何度も行ったり来たり、していたのだ。  空港は、あいかわらずの工事中、白い五階建ての管制塔だけが、妙に立派だった。   同じ敷地内にあるテント張りの国内空港に、そのまま移動したぼくたちは、休む間もなく国内便に乗り継いだのだが、ほんとうは

        • 【奇譚】白の連還 第四章 白い氷

          白の連還 第四章 白い氷  翌日も雪は一日じゅう降り続いた。みなよく眠れるのか、避難者のだれひとり、これといったストレス症状をみせるものはいなかった。各班それぞれ所定の仕事を問題なく遂行している。消灯まぎわにカメラマンが、その夜の語り手として女監督を指名した。女監督はいくぶん予期していたようだったが、あら、と意外なふりをして座り直し、長い指で髪をすいた。 第四章 白い氷  まず、どうなんでしょう、ハナシをしなければいけない本人が、いきなり質問することからはじめたりした

        【奇譚】赤の連還 8 赤いくさび

        マガジン

        • 【奇譚】赤の連還
          7本
        • ハコの画集
          5本
        • 【奇譚】白の連還
          4本
        • 記憶のはなし
          8本
        • Histoire de la Mémoire
          8本
        • ブートン逝く
          3本

        記事

          【奇譚】赤の連還 6 赤い謄本

           赤の連還 6 赤い謄本  オレはさっそく、明くる日から、養子縁組の手続きを始めた。  弁護士から、手続には一連の書類が必要になるときいていたが、それがこれほど手間のかかる仕事になるとは、思ってもいなかった。  縁組は、最も肝心な戸籍謄本を揃えることから始まる。が、そこで先ずつまずいた。  区役所に行きさえすれば、その種の書類は簡単に整う、そう高を括っていたオレは、謄本、出生証明書、住民票、記載事項証明書など、一連の必要書類を目録にし、事務所の現地補助員アライシア・アベスに

          【奇譚】赤の連還 6 赤い謄本

          【奇譚】赤の連還 5 赤い砂

           赤の連還 5 赤い砂  そうだ、多分、あのとき、レイラは心に決めたのだ。  実際、自分が掟を破ったのはダンナ様のせいだといわんばかりに、彼女はあくる日から、一言も口をきかなくなった。  相変わらずこまめに働き、食事の用意も忘れなかった。だが、その口は閉ざされたままだった。  犯した罪のつぐないか、一日の礼拝は一度も欠かさなかった。床にゴザを敷き、ひれふし、正座し、立っては座り、座っては立ち、それを何度もくりかえす。その間、口では休みなく、なにかを唱え続けるのだ。経なのか懺

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          La mémoire qui revient dans une boucle -8-

          La mémoire qui revient dans une boucle -8- <Mémoire partagée> Les humains et les autres forment des groupes pour leur propre préservation. Si une telle situation survient dans un groupe qui lui exige de nier la vie et de menacer l'existen

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          連還する記憶 ⑧ 

          連還する記憶 ⑧ <記憶の共有> ヒトと他人は身の保全のために集団を形成します。集団の中で、致命的な考えの相違により、生命を否定し存在を脅かす事態が発生しても、集団の理念がこれを検証し、裁定し、統合します。 集団と集団の間で、ヒトの致命的な対立が生じ、生命を否定し存在を脅かし、共同体の存立を否定、錯乱、破壊する事態が発生しても、各集団の理念を突合せ、検証し、すり合わせ、より広く包括的な理念を構築することで、新たな集団として統合・統一されていきます。 こうしてヒト

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          【奇譚】赤の連還 4 赤い浴衣

           赤の連還 4 赤い浴衣  ………実際、オレのなかで、なにかが変調しはじめたのは、サハラから帰ってからのことだった。それがオマエのいうきっかけだったとすれば、実に幼稚でばかげたことといわざるをえない。  まず、体がおかしくなった。  疲れがとれない。いつもだるい。すぐ息切れがして、辛抱がなくなった。出勤が不規則になり、帰宅時間も定まらず、生活のリズムが狂いだした。  はやい話、やる気がなくなったのだ。  それに、自分の生き方が疑わしくなった。気が抜けて、生活に手ごたえがなく

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          【奇譚】白の連還 第三章 白い女

          白の連還 第三章 白い女  よわったなぁ、オレ、ハナシがへたなんだよな、生まれつき。だからこうやって写真屋、やってんだよ、しかたなく。ハナシがうまけりゃ、もっとましな仕事やってたよ、いまごろはさぁ。楽じゃないんだ、この商売だって。  いったい、ぜんたい、だれがこんなこと、思いついたんだ。いい迷惑だぜ、はっきりいって。もっとも、反対しなかったオレにも、えらそうにいえた義理はないんだけどね。  さて、グチってたってはじまらないや。なにを話せばいいのか決めなきゃね。  とり

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          La mémoire qui revient dans une boucle -7-

          La mémoire qui revient dans une boucle -7- Grâce au travail de l'intellect, dont la fonction consiste à construire l’ensemble des idées culturelles de quelle nature que ce soit, il s’avère qu’un être humain s’est doté d’une récolte symboli

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          連還する記憶 ⑦ 

          連還する記憶 ⑦  観念を造り出す知性の働きから、理想の誕生と理念の構築という、認識能力を備えたヒトとして、象徴的な収穫物を得られることを確認しました。 本来的に生き物であるヒトやヒトの集団は、自分が生存するに足る理想を造り出し、それを守り抜くべく理念を構築し、実践します。その過程で、ヒトは、生きるために実践するあらゆる行為を、生体に結びつく有機的な観念記憶として、自らの認知体系に保存し、生命記憶と存在記憶と常に連還させながら、さらに生きのびるために、記憶体系に蓄積

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          La mémoire qui revient dans une boucle -6-

          La mémoire qui revient dans une boucle -6- La mémoire qui revient dans une boucle -6-Dans la section 5 de la Mémoire qui revient dans une boucle, il a été discuté la vulnérabilité et le danger de la mémoire conceptuelle, qui ne partage pas

          La mémoire qui revient dans une boucle -6-

          La mémoire qui revient dans une boucle -5-

          Dans la section 4, en plus de la mémoire de la vie et de la mémoire de l'existence, nous avons abordé la mémoire qui ne partage pas le même temps et le même espace que les organismes vivants, c'est-à-dire la mémoire conceptuelle. Dans la p

          La mémoire qui revient dans une boucle -5-

          La mémoire qui revient dans une boucle -4-

          Dans la section -3-, nous avons abordé la question de la mémoire de l'existence. A savoir, La mémoire ontogénétique Alors qu'une nouvelle vie reçoit la mémoire de la vie à travers le placenta pendant qu'elle est dans la matrice de sa mère

          La mémoire qui revient dans une boucle -4-