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【奇譚】赤の連還 10 赤いバスタオル

赤の連還 10 赤いバスタオル

 ホッシンの知略で、急場をしのいだ三人だったが、元の鞘に収まったわけではなかった。
 オレは、即、レイラを首にした。小女に感じる愛おしさに変わりはなかったが、裏切られた怨念の裏側に、それを封印した。小女は、だから、オレを裏切っただけの存在として、記憶野に残すことにした。
 その兄のホッシンも、オレを裏切っただけの少女の、単なる親戚の一人だった。記憶に値する存在ではない。したがって、オレの記憶からは、機械的に排除した。
 こうしてオレは、きれいさっぱり、過去と絶縁して、新たな赴任生活に、専念することになった。

 いや、専念しようとした。

 だが、そうは問屋が卸さなかった。当然のことながら、それまでの赴任生活が残した一連の遺産を、善かれ悪しかれ、そのまま、引き継がなければならなかったからだ。
 引き継ぐべき遺産から、愛憎色を払拭するため、損益計算書の項目として、処理することにした。すると、レイラとホッシンには、貸借関係はなかった。ホッシンが仕掛けた養子縁組料には一文も使っていないし、レイラに払った堕し婆料にしても、修羅場を潜り抜けた時点で、取り返した。したがって、貸し借り関係はない。彼らとは、名実ともに、無関係となった。
 残るは、あの屠殺屋の立退料だった。ホッシンによると、これは、大家の仕組んだ詐欺にオレが引っ掛かった、ということになる。腹は立つが、バランスシートから見れば、大家への貸となる。いずれ、こちらに戻すべき債権だ。かならず、取り返してやる、と心に決めた。

 また、引き継ぐべき遺産には、殺人犯の国外追放措置と、その措置を当局から引き出すための、有力地主との交渉があった。
 これをうまくまとめれば、社に、サハラどころか、マグレブ一円の大躍進を約束する大プロジェクトにつながる未来も、夢ではない。なにせ、地区一帯の広大な土地の大地主なのだ。

「しかも…」

 独立戦争時には、民族開放戦線側につき、臨時革命政府に投資する鋭い嗅覚の持ち主でもある。現政権も、あだやおろそかにできない要人だ。つながりをもってはいけない理由は、どこにもない。

「愛憎のからんだ、ちっぽけな、裏金云々どころのハナシではないのだ…」

 若い憲兵隊員アリ・アフメドが示唆した案、すなわち、土地の実力者を介して警察と検察に働きかけ、精神錯乱による不起訴、または起訴有罪で一時服役の後、殺人犯を国外追放処分にする、という打開策は、すぐに事業本部長の心をつかんだ。
 本部長直々の根回しで、その案は、直ちに具体化を見た。時を置かず、本社担当部署の稟議を通過、専門職従事者帰国支援対策班の結成につながった。そして、父娘再会ミッションのわずか一か月後、ちょうど翌年の雨季の終わりごろには、交渉団の現地派遣の決定と人選が行われ、いつでも出発できる体制が整った。
 
 ところが、一行が実際にアルジェに派遣されたのは、翌年の乾季も終わり近くのことだった。なぜ、派遣日程が、半年近くも遅れたのか。

 ブーメディエンヌ大統領の急死だった。

 独立戦争時、西部戦線で民族解放戦線を率いる大佐として従軍、革命後、初代大統領下で国防相を務めたが、旧宗主国との協調を説く大統領をクーデタで幽閉、軍を背景にした国政を掌握し、以来、真の独立国家を目指す参謀長として、社会主義の理念を基軸に、インフラの国有化と工業化政策を、推進してきた。その指導者が、療養中のモスクワで、病死したのだ。

 一党独裁国家主席の死は、国の利権構造に大きく影響する。国政の空白に乗じて、当事者が利得利権漁りに奔走するからだ。
 それ以上に懸念されるのは、民の動きだった。十三年に及ぶ大佐の国政は、いわば窮乏生活の押し付けだった。貧しいながらも飢えることのない暮らしを求める民に、国防と工業化の犠牲を強いた。
 その元凶がなくなったいま、重しを取り除かれた民意はどう動くのか…十分に観察する時間が必要だった。

 幸い、さしたる事件もなく、時はすぎた。工業化重視への不満が爆発することを恐れた為政者が、民生重視の狼煙を上げ、世論誘導を図ったのだ。
 美味しいパンをうんと食べよう式の、民生重視政策の宣伝は、功を奏した。民意は、大佐の急死で生じた空白を、モノの有る、豊かな生活への夢を描くことで、埋めようとしたのだった。

 アトラス山系の地中海を望む丘陵地帯が、うっすらと緑色に変っていくころ、交渉団一行は、やっとアルジェ入りを果たした。
 エル・オーラッシーを始めとする、市内中心区域に位置する主要ホテルに、常時、空き部屋はなかった。民生重視の政策を当て込んだ投資家が、ビジネススチャンスを求め、押し寄せていたのだ。首都近郊に、宿泊施設を確保する必要があった。
 アルジェから、地中海沿いに三十キロほど西方に行ったところに、シディ・フレッジと呼ぶ地区がある。千八百三十年六月十四日にフランス軍が上陸し、七月五日にアルジェを占領することになった、歴史的な半島を擁する一帯だ。
 タッシリナジェールの壁画に描かれた異星人を想わせる形の岬に、現在では、白亜のホテル群や円形劇場などの、宿泊も兼ねたリゾート施設群が建設され、半島の東側には、大きな船を何隻も繋ぐに足る幅と深さを兼ね備えた、優美な容姿の湾が整備され、その湾岸を利用して、レストラン、カジノ、バー、テニスコートなどの遊興施設が、国民が余暇を楽しめる場所として、設けられていた。
 そこに、唯一、アルジェ近郊で空きが期待できるホテル、エル・マナール、があった。

 アリタリアの到着が遅れ、チェックインしたのは夕刻近くだった。
 二階の一室に居を構えた団長が、紺碧の海原に張り出した岬を指さして、いった。

「そうか、フランス軍は、あそこから侵略をはじめたんだな」

 オレは、頭で引き算しながら、それに応じた。

「そうですね、ちょうどいまから、百四十七年まえですかね、よくやりますよ、外交団が侮辱を受けた、なんて、ありもしない口実つくって、攻め込むなんて…」
「いや、所長ね」

 いきなり団長が、喋りだした。

「地中海とは、そんなものじゃ、ないんですかね、こうして、青い海の向こうを見てると、たったいま、ギリシャ神話の神々が、狂喜乱舞して、躍動しているのが、見えてくるような気が、するんですよね、ほら、全知全能の神ゼウス、海と地震の神ポセイドン、戦と知恵の神アテナ、結婚と出産の女神ヘラ、炎と鍛冶の神ヘパイストス、太陽神アポロン、狩猟と月の女神アルテミス、愛と美の女神アフロディテ、戦いと破壊の神アレス…」

 オレは驚いた。

「団長、すごい博学ですね!」
「いや、いや、もう、かれこれ、十二年、ローマに住んでますとね、どうしても、神話を通じて、地中海のヒカリとか、カゼとか、クウキとか、ニオイとか、なにからなにまで、身体に浸みこんでしまいましてね」

 なにを言いたいのか、よく分からなかった。

「なんですって、地中海の、ナニが?」
「そうね、どういえば、いいのかな、あの、地中海という自然のなかで、ヒトが知覚できるもの、が、ありますでしょう、海の色とか、潮の香とか、太陽の輝きとか、いろんなものが、ね、それらが全部、壮大な物語として、身体に彫り込まれて記憶されていく、というか、そう、つまり、それが神話というもの、じゃないですかね」
「ギリシャ神話のこと、ですか?」
「そう、神話、て、ギリシャに限らず、日本にだって、ケルトだって、ゲルマンだって、どこだって、あるでしょう、どこにでも、その地の神話があるもんですよね、そしてそれは、その地で生きたヒトが、タトゥーのように、身体に刻みこんでいった、生身の記憶、なんですよね」
「はぁ…」
「こうして、シディ・フレッジの岬を、眺めてますと、ね、ずっと沖の、向こうの方で、ホメロスが謳いあげた、戦の数々が、いま、まさに、展開されているんだ、と思えてきて、ワクワク、ゾクゾク、してくるんですよね、ほら、エーゲ海の島々で、アキレウス率いるギリシア連合軍が、拉致されたヘレナを助けに、トロイアに攻め入っていく軍団が、こう、ありありと、浮かんで、見えてくるんですよね…」

 歴史の夢想家に、付き合っている暇はなかった。

「あの、団長、よろしいですか、このホテルに滞在するにあたって、あらかじめ、お伝えしておきたい注意事項が、いくつか、あるんですが…」
「あ、このホテル、なんという名前でしたかな?」
「エル・マナールです」
「エル・マナール…アル・マナールは聞いたことがありますが」
「アル・マナール?」
「はい、リビアのテレビ放送局の名前ですよ、アルとエルの違い、ですな」
「はぁ」
「マナールって、どういう意味でしたかな?」
「さっき、フロントに訊いたんですけど、フランス語でエラン、日本語では、飛躍とか、飛翔とか、いうらしいですね」
「フランス語でエラン、飛翔…とすると、イタリア語ではサルトかな、イル・サルトね、なるほど」
「で、注意事項というのは、ですね、団長」
「はい、どうぞ」
「洗面中とか、シャワーを浴びてるときとかに、しょっちゅう、断水があります、インフラが脆弱なんですよ、なので、用心のために、ビン入りのサイーダというミレラルウォータ、これね、一本差し上げますので、これを備蓄しておいた方が、よろしいかとおもいます」
「備蓄?」

 より目になる団長に、オレはそっけなく答えた。

「ええ、何本か、いつも予備に」
「それは、ひどい、ですねェ」
「ええ、で、また、これ、肝心なことなんですが、このビン、有料かつデポジットなので、雑貨店で買うときは、空ビンが必要となります」
「?…」

 さらに、より目になった。

「ということは、ですね、所長、いま、いただいたのは、一本ですよね、これが空になったら、それと引き換えに一本買える…ということは、ですね、いつも一本しか買えない、ということじゃ、ないですか、それじゃあ、備蓄したくても、できないじゃないですか、どうすれば、よろしいんでしょうか?」

オレも、初めてデポジットのことを聞いたとき、しばらく首をひねったものだった。

「ここを出て、東に行きますと、つまり、玄関を出て左に行きますと、美しい湾になってまして、その周りに、グルリと、レストラン、カジノ、バー、雑貨店、テニスコートなどなど、いろんな遊興施設やショッピングセンターがありますから、ビンが必要なときは、レストランで食事するときに買った水、サイーダのビンを、忘れないで、持ち帰ってくださいね」
「はぁ、注文した水をビンごと、持って帰る、てことですか」
「そうです」
「なるほど、わかりました」
「わたしからは、それくらいですけど、なにか、ほかに」

 団長は、浮かない顔で胸のポケットを探りながら、いった。

「パスポートは、いつ、返してもらえるんですかね?」
「あしたの朝です」
「どうして、取り上げるんでしょうかね」
「宿泊台帳に記入するためです」
「台帳? じゃあ、さっき書いた、あのチェックインカードは、なんのため?」
「読み書きできない人も、いるでしょうし、いろいろ、あるんじゃ、ないですか、エーゲ海の対面ですし」
「ほ…」

 社の海外プロジェクトは多数ある。中でも送電線の敷設を伴うインフラ工事は、アフリカに多い。しかも、施工現場は、広大なアフリカ大陸に分散している。畢竟、現場管理は本社直轄となるので、時差による遅延や齟齬ひとつとっても、きめの細かい管理は望めない。オレのいるアルジェ事務所などは、この不便を解消するために創設されたものだが、サハラのごく一部をサポートするだけで、青息吐息だ。

 その点、欧州にはローマ事務所がある。建設施工現場よりエンジニアリングに重きを置くプロジェクトが主体の欧州では、需要に対する素早い反応と時宜を得た対応が必要となる。十二年のキャリアをもつローマ所長が、今回の団長に選ばれたのも、サハラ以南を視野に入れた、社の事業拡大意欲を如実に示すものだと、オレは考えていた。

「それにしては…」

 正直いって、がっかりした。

「あの、よれよれの白茶けた半袖のポロシャツ、シチリアハンチングからはみ出した白髪の縮れ毛、ダブダブのジーンにカーキのズック、なんともダサい、しかも、神話オタクときてる、夢想癖はよしとしても、とにかく、たよりない、アフリカ向けの器としては、ちと、小さすぎるんじゃないか…」

 そして翌日、オレはもっとがっかり、させらることに、なった。
 一行は、団長に営業担当一人、技師一名を加えた、計三人だった。
 朝のラッシュ時には、国道は混雑する。シディ・フレッジからアルジェ事務所まで、優に一時間はかかる。それを見込むと、朝八時にはホテルを出たい。その旨、団長には、一か月の滞在日程表を説明するときに、十分伝えてあった。
 そのはず、だった。
 しかし、その朝、所定の時間に、団長は、現れなかった。

「団長は?」

 オレは、フロントで待っていた営業担当と技師に、訊ねた。

「団長は、どうしたんですか? 八時には出発する、と、みなさんにお伝えしていたはず、なんですけど」
「いや、そうなんですが」

 営業担当が、申し訳なさそうに、答えた。技師も、口を合わせた。

「昨晩も、食事のときに、確認はしたんですがね」
「キーは?」
「フロントには、まだ、返してないようで」
「ということは、部屋にいらっしゃる、ということですね?」
「いや、それが、さっき、ここに来るまえにノックしたんですけど、だれもいないようでした」
「だれもいない?」

 オレは、妙な答えだとおもった。

「だれもいないって、いないのは、団長おひとりでしょ?」
「そ、そ、それは、そうなんですが、すみません…」

 二人、目を合わせて、済まなさそうに謝る。

「ま、お二人は、本社派遣で、ローマ所長とは、あまり、お付き合い、なさそうにみうけられるんですけど」
「そう、そう、その通りなんです、初めてなんですよ、あの団長とは」

 技師が応えた。

「とにかく、変わった方ですよね、アリタリアのアルジェ行き搭乗ロビーで、待ち合わせたんですがね、日本の方も、けっこういらしたんで、その中で、まず、それらしきひと、探そうとしたんですけど、どこにもいなくてね、とうとう、便を間違えたのかな、なんて、心配してしまったくらいだったんです、でも、さいわい、所長の方から、声をかけてくれましてね、それで、やっと会えた、というわけなんですが、しかし、まあ、あのスタイルですからね、最初は、少々、驚きましたよ、どこの遊び人か、とおもいましてね」

 営業担当が後をつづけた。

「ほら、イタリアはファッションの国、なんて、よくいわれるでしょう、だから、さもあらん、と、二人、笑ってしまったんですけど、あのハンチング、ね、シチリアのコッポラ帽、とか、いうらしいですよ、それ聞いて、また二人で、ね、笑っちゃいましてね」

 そろそろ八時半になろうとしていた。だが、団長は、まだ、現れなかった。オレは、あらぬ想像で、急に不安になった。

「とにかく、フロントに、探してもらいましょうね」

 マスターキーはフロントにある。部屋を改めるには、フロントのだれかに頼んで、ドアを開けてもらわなければならない。事情を話すと、なかの一人が、すぐに客室係を呼んでくれた。

「ヤシーン! ヤシーン!」

 驚きの大声だ。総タイル仕上げの館内に、響きわたる。鼓膜が痛いくらいだ。すると、

「いま行くー! すぐ行くー!」

と、二階の廊下の奥の方から、返事が返ってきた。
 しばらくして、緑の制服に身を固めた、小太りの客室係が、転げるように走ってきた。まだ幼い顔をしている。見習い中なのか、やる気満々だ。

「ヤシン、2208が、まだ下りてきてないようだ、一緒に行って、部屋の様子を観てこい、いいな」

 フロントからキーを受け取ったヤシンと一緒に、みな、砂岩タイルの長い廊下を、小走りで、二階の2208号室に向かった。
 ドアには鍵がかかっていた。数回ノックしたが、なんの反応もない。だれもいないか、いてもなにもできない状態にいるか、どちらかだった。

「どうする、開ける?」

 ヤシンが訊ねた。

「開けてくれ」

 オレは、すかさず、答えた。
 部屋は空だった。オレは、とりあえずホッとした。

「いない、ということは」

 営業担当がいった。

「出かけた、てことだな」
「つまり、無事だ、ということですね」

 技師が応じた。そして、オレがまとめた。

「そうですね、とりあえず、団長には、何事もなかったようですね」

 三人とも、同じ懸念を共有していたのだ。
 室内は乱雑だった。
 トランクから出したばかりなのか、まだ折り畳み跡が残る下着や衣類が、寝相の悪さでクシャクシャになった、シーツと赤いベットカバーの上に、放り投げられていた。なにかに驚いて跳ね起きない限り、こんな惨状にはならないだろう。
 テレビを置いた造りつけの机は、まさにカオスだった。A4の書類は山積み、目覚まし時計、腕時計、砂時計が、あちこちに転がり、折りたたんだパソコンの上に、カセットテープが積んであった。いくつか手に取って見ていると、テレビのブラウン管の上に、ウォークマンが置いてあるのに気づいた。

「音楽好なんですね、団長は」
「そうみたいですよ、飛行中、ずっと、それ、耳から外しませんでしたからね」

 営業担当が、外付けのヘッドフォンを指さして、いった。

「へぇ…」

 オレは、あのタイプが、どんな音楽に興味があるのか、知りたいとおもった。

「お、スイッチ、切ってませんね、かかったままですよ」

 ヘッドフォンに耳を傾けたまま、技師がいった。たしかに、フォンの奥の奥で、なにかが、ざわめいている。

「跳び起きて、切るのも忘れた、ということですかね」
「さぁ…」

 オレは、ヘッドフォンの片方をつまみあげ、そっと耳に当てた。はたして、聞きなれた曲が、聞こえてきた。

「なにが、かかってます?」

 営業担当が、興味深げに訊いた。

「イーグルスですよ」

 オレは、答えた。

「あのイーグルスの、ホテル・カリフォルニア、ですよ」
「ヘェー、ロックですか」

 無邪気な笑みを浮かべ、かれは感心した。

「ちょっと、合わないかな、て気も、しないでもないですけどね、あのコッポラ帽とは」

 保留付きで、オレも同調した。
 そのとき、浴室から、ヤシンの声が聞こえてきた。

「青はあるけど、赤いバスタオルがありません、ということは、タオルもって泳ぎにいったんですよ、きっと」

 なるほど、ありえないことではない。

「しかし、こんな早朝に、泳ぎにいくかぁ?」

 三人とも、おなじ疑問を抱いたのか、顔を見合わせ、それぞれに、答えを探しているかにみえた。たが、浴室から出てきたヤシンに、泳げる場所を確かめるのが先だということも、忘れてはいなかった。

「海岸には、どうやって行くんだ?」
「フロントを出て西に行けば、ゼラルダの海岸に出ます、美しい浜です、でも、すごく遠いですよ、歩いて四十分はかかります、ほら、ここからよく見えますよ」

 ヤシンは、部屋の陸側にある大きな窓に、みなを案内した。そこから窓越しに、紺碧の海原を真っすぐに突き進む白州の海岸と、それを懐に抱え込もうと迫る緑の森が、キラキラ光る青空を背景に、西へ西へと広がっていくのが、見えた。

「ホー…深い森、なんですねェ」

 技師が、感心していった。

「あれが、ゼラルダの森です」

 ヤシンが注釈を入れた。

「あの白州の海岸には、炭化水素公団のリゾート施設があるんですよ、ほら、あそこに…」

 白州と緑の境界線に沿って、白壁に囲まれた白亜の建造物が、これも西へ西へと、延びている。

「さすがは、巨大な、国営企業、だよな」

 ヤシンが、吐き出すように、いった。

「フン、あんな一等地を、見ろよ、ほら、あんな風に、独占しちまいやがって、盗人だよ、ドロボーだよ、アイツラは!」

 日ごろの鬱憤が、つい口を突いて出てしまったのか、憤懣やるかたなし、といった形相で、しばらく窓の外を、睨みつけていた。

「そろそろ、行くか」

 だれからともなく、声をかけあった。ヤシンは、未だ興奮冷めやらぬ、といった勢いでスタスタ歩く。オレたち三人は、それを追って、フロントまで駆け下りた。
 ヤシンをなだめ、チップを渡して握手しようとしたとき、玄関のガラス扉が勢いよく開いたかとおもうと、ひとが一人、駆けこんできた。ハーハーしながら、赤いバスタオルで、盛んに汗を拭っている。うす汚れた長袖のポロシャツが、ベッタリと、体幹に張りついていた。

「団長!」

 オレは、見るなり、ムカッとして、叫んだ。

「いまごろ、なにしてんですか、団長!」
「いや、申し訳ない!」

 まるで着の身着のままの被災者そのまま、といった格好だ。

「わるかった、所長、ホント、すみません、ソーリー、スクザット、ミディスピアス、シニョーリ!」

 何度も頭を下げる。

「どこに、行ってたんですか!」

 オレの気は、まだ収まっていなかった。

「きのうの打ち合わせで、出発は八時、て、確認、したじゃ、ないですか!」
「いや、まさに、そ、そ、そのとおり、そのとおり、なんだが、とにかく、ちょっと、聞いてくれ、分けがあるんだ、聞いてくれ…」

 なんとか弁明して汚名をそそぎ、オレを黙らせたい、という気が見え見えだった。しかし時間がないのだ。

「分かりました、とにかく、着替えましょう、まともな格好にね、分けは車中で、ということで、今日は初日、いろんなアポイント、準備してあるんですから」

 エル・マナールからアルジェ事務所までのほぼ一時間、団長は、喋りにしゃべった。車中で聞くといった以上、黙らせる分けにはいかなかった。
 初めは、しごく神妙だった。

「申し訳ないが、ちょっと、いわせてもらっても、いいかなァ…」

 弁解がましくしたくない、という気配りがあった。しかし、途中から、徐々に、様子が変わっていった。

「とにかく、時差が、わるいんですよ、それが、ひびいたんですよね」
「時差?」

 オレは耳を疑った。

「時差って、一時間しか、ありませんよ、ローマとは」
「そう、その一時間が、効いたんですよね」
「効いた?」
「わたしはね、所長、毎朝、ぴったり五時には、起きてるんですよ」
「ほー、それ、早起き、ですよね」
「イタリア人て、時間にルーズで、食いたいだけ食って、寝たいだけ寝る、て、感じ、しません?」
「そうじゃ、ないんですか?」
「昔は、わたしも、そうおもってたんですが、実際は、そうじゃないんですよね、早寝早起きが、大好きなんですよ」
「早寝早起き?」
「夜九時に寝て、朝五時に起きる、そんなヤツがざらにいるんですよ、聞いただけで、寂しくなりません?」
「はぁ、夜の九時は、いくらなんでも」
「でも、真似してやってみると、実に、身体に、いいんですよ、これが」
「はぁ、三文の徳、ですか?」
「十年間、続けたおかげで、すっかり身につきましてね、体調はいいし、仕事ははかどるし、徳ばかりしてるんです、でも」
「でも?」
「それ、昨日まででした」
「え?」
「今朝、いつもどおり、朝五時にぱっちり目がさめたんですが、それ、ローマ時間の五時だったんですよ」
「なるほど、アルジェでは朝の四時、だったわけですね」
「そうです、外をみると、薄っすらと、夜は明けかけてはいるんですが、まだ、あたりがくらくてね、おかしいな、とおもったんですが、すぐ、そうか、時差があったんだ、てことに、気が付きましてね、それじゃあ、もうひと眠りするか、とおもって、トライしたんですが、ぜんぜん、眠れなくて」
「そりゃ、そうですよ」
「で、しばらく、もんもんとしてたんですが、我慢できなくなって、えいやっ、とばかり跳ね起きましてね、窓から外を見たんですよ」
「あっち、陸側の窓、ですね」
「そうです、するとね、海と、白州と森の、なんとも幻想的で、魅惑的な景色が、夜明けの光を背景に、目に入りましてね、しばらく見とれていたんですが」
「それで?」
「そのあと、よく覚えていないんです、気がつくと、砂浜を、歩いてました」
「よく覚えてない?」
「ええ」
「でも、ちゃんと、鍵、かかってましたよ、部屋には」
「それは、身に着いた安全意識ですから、自分でも褒めてやりたいですけど、とにかく、覚えてないんです」
「ねぼけてたんですね、きっと」
「かもしれません」
「で、砂浜を歩いてて、それから?」
「実は、泳ごうとおもってたので、赤のバスタオルを拝借してたんです、で、それを首に巻いてたんですけど、風が強くてね、いきなり突風みたいな風が吹いてきて、タオルが、こう、サッーと、吹き飛ばされてしまいましてね」

 あり得ないことではない。端境期には、とてつもない風が吹くこともある。

「でも、帰りはタオルで汗、拭いてましたよ」
「そうですよ、ホテルのものだから、なくしちゃいけない、とおもいましてね、追っかけたんですよ、ずいぶん走りましたよ、で、とうとう、捕まえたんですが」
「どこで?」
「それが、ちょうど、杜の入り口だったんでしょうね、目の前に、さっき窓から眺めた、あの幻想的な、魅惑的な、というより、手招きで、こう誘いこむような杜が、奥へ奥へと、広がっていて…」

 そして、いつのまにか、杜の奥へ奥へと、分け入ってしまったというのだ。

「しかし、そのまえに、仕事の事、考えなかったんですか?」
「もちろん、考えましたよ、でもね、地面に松ぼっくりが、それも、こんなデカいのが、ごろごろ、転がってましてね、その大きさからして、これはトウヒだな、北アフリカの、こんなとこに、トウヒがあるのか、なんて考えながら、歩いているうちに、とてつもなく豊富な植物群落に気おされして、ですね、ついつい、草木の種類や、花々や、樹木、潅木、巨木、雑草の多様性とか、なんやかや、環境調査のまねごとみたいなこと、してしまってですね、歩いてるうちに、自分が、どこにいるのか、さっぱり、分からなくなってしまったんですよ…」

 それで、大慌てで出口をさがし、やっと戻って来れたという。植生の群落調査じゃあるまいし、なにを考えているのか、この団長は。 

 とにかく、交渉団の初日は、こんな具合に始まった。たしかに団長は、奇人に近い変人だったが、その資質を云々する前に、任務の重要性と、それに不釣り合いな構成要員からして、いずれ早いうちに、団は機能不全におちいるのではないか、との懸念は、拭えなかった。団の意思統一を、どうとっていくのか、はなはだ疑問だったからだ。
 ところが、開始から一週間も経たないうちに、派遣団は、アルジェを離れ、サハラの現場に移動することになった。機能不全でそうなったわけではない。それが露呈する前に、大統領の死に起因する行政の空白という不運が、交渉団の機能を阻害したのだ。

 実際、肝心の公官庁とのアポイントは、ことごとくキャンセルされた。新たな接触を試みても、窓口はすべて閉鎖ないし開店休業だった。こうして、まる五日間、朝エル・マナールを出発し、所定の公官庁を巡った後、夕刻にはエル・マナールへと、何時間もの不毛なドライブを繰りかえすことで、貴重な一日を浪費することになったのだった。
 その間、団長は、毎朝、初日の朝そうしたように、ホテルの部屋からいなくなり、出発時間ぎりぎりになって、拝借したホテルの赤いバスタオルで汗を拭きふき、帰って来た。そして、行の車中、綿々と言い訳を、いいつづけた。
 オレは、いい加減、うんざりしていた。だから、五日目に、団長が、いよいよ時間の無駄使いと悟ったらしく、サハラの現場への移動を決めたとき、正直いって、ホッとした。
 ただちに、現場主任に連絡した。そして、ついでに、交渉団の人選について、なにか聞き及んでいることはないか、たしかめてみた。

「交渉団は、団長、営業、技術の三人構成なんですが、人選について、なにかご存じですか?」
「人選?」

 きょとんとして、主任は応えた。

「人選ねぇ、なにか、不都合でも、あったのか?」
「いえ、不都合ではありませんが、団長が、ちょっと…」
「ちょっと、なんだね?」
「なんといいますか、並みのひとではない、とでもいいますかね」
「ああ、あのイタ公だろ」
「えっ!」
「あいつは有名だよ」
「主任は、よく、ご存じなんですか?」
「ああ、かれこれ、十年くらいの付合いかな」
「そんなに!」
「もう五、六回になるかな、欧州でエンジニアリング会議があるたびに、呼び出されてさ、パリとか、デュッセルとか、ハーグとか、いろんなとこ、引っぱりまわされてさ、ヤツはなんの段取りも、根回しも、してないんだよ、結果、汗水たらして駆け回るのは、オレとか、他からきた技師とかでね、みな、ブーブーいってるよ」
「へー、そんな人が、欧州市場を取り仕切ってるんですか、わが社って」
「いや、そうじゃないんだ、取り仕切るなんて、だれもヤツに期待してないんだよ、そんな能力もないしね」
「はぁ、では、なにを期待してるんですか?」
「観光と夜遊びだよ、オマエが知らなくていいことだ」
「観光と夜遊び!?」
「だいたい、欧州相手に事務所なんて、いらないんだよ、本社には、ちゃんと欧州統括部があってね、そこで大抵のことはできちゃうんだ、会議や見本市に、だれか派遣するってときも、欧州なら、どこの都市だって、辺鄙な田舎だって、立派なホテルはあるし、自然は整備されてるし、気の利いた遊興施設だってそろってるしさ、一人で、なんでもできちゃうだろ」
「それなら、なぜ、わざわざローマに事務所を?」
「息抜きだよ」
「息抜き?」
「アフリカの現場で、酷い環境で、汗水たらして、泥まみれで働いてる社員、な、大勢いるだろ、オレだってそうだし、ここにいる技師連中だって、ブラック全域で建てまくってる重電屋さんだって、さ、みな、そうだろ、そういった連中がさ、年期が明けて、帰国するまえに、息抜きするんだよ、ローマで、パリで、どっかの文明都市で、さ」
「その手配を、あの団長が?」
「そうさ、アイツは、もともと音楽家でね、オペラの勉強で留学してたんだよ」
「オペラ歌手ですか?」
「その寸前で、すげー金持ちの美人と恋に落ちてね」
「へー」
「結婚して、子供できて、イタリア人になっちゃって」
「オペラは?」
「さぁ、どうかな、趣味でやってんじゃない」
「趣味、ですか…」
「なんたって、家族ができたら、そこが住処だもんな、しかも、大金持ちの奥さんだよ、オレたちとは、わけがちがう、もっぱら、オレたちは、アフリカの垢を、全部落として、臭いを消して、すっきりして、帰るのさ、貧乏な日本にね、だから、そのまえに、とにかく、まずはバイナイトだよ、バイナイト、ワッハッハハハハハ…」

 受話器の端に、大笑いをのこしたまま、主任は、一方的に電話を切った。息抜きとバイナイトのために、ローマ事務所があるわけでもないだろうが、主任の言葉の端端からは、嫉妬と卑下と自嘲に近い、複雑で生々しい気が、漂ってくるのが感じられた。

           ~~~~~~~~~
 
「なんか、聴いてて、ボク、おもうんだけど、その団長、て、とても変なひとだね」
「オレも、同感だな、変人をとおりこして、むしろ奇人といった方が、ぴったりするかもしらんね、ギリシャ神話に造詣が深いくらいだから、少しは、知識人らしいところがあっても、よさそうなもんだけどな」
「たしかに、いろんなことを、よく知ってるみたいだね、たくさん引き出しがあって、知識を一杯、溜め込んでる、でも、その、引き出しと引き出しが、あまり、つながってないんじゃないかな、つまり、頭と知識と縦につながってるんだけど、知識と知識の間には、横のつながりって、ないように、みえるんだ」
「単なるマニア、て、ところこかな、なんせ、オペラ留学、だからね」
「いや、多分、知識に広がりや展開が、乏しいんじゃないかな、それぞれ孤立して、閉鎖ループに閉じ込められたみたいに、相互に作用することもなくて、そうだね、いってみれば、図書館の閲覧室に来て、不作為に百科全書に目を通している、て、感じがするよ」
「知識が身についてない、ということだな」
「そう、百科全書をパタンと閉じて、閲覧室から出てしまえば、それでおしまい、て感じ、わかるかな?」
「しかし、知識が身に着く、とは、どういうことなんだ?」
「自分の中の記憶とつながる、ということだよ」
「記憶と、つながる?」
「たとえば、団長の場合はね、ギリシャ神話の多彩な神々、といっても、単なる知識にすぎないんだけれど、でも、一旦、地中海という、目の前に展開する空間に放り込まれると、蓄積されたさまざまな記憶と、縦にも横にも、きれいに、つながってくるんじゃないかな」
「へー、オマエ、いつから、心理分析、やってんだ?」
「たとえば、海と光と潮の匂があれば、ジェラルダの森とエーゲ海も、見事につながってしまうんだね」
「どうやって、つながるんだ?」
「かれの、地中海の記憶のなかでは、森は全部、一緒なんだ、聖なる神々が住みたもう処、なんだよ」
「それは、でも、オレだって、おなじことだぜ」
「だから、実際はどうであれ、ジェラルダの森も、日本の森も、かれにとっては、地中海の記憶のなかに、ファイルされてしまうんだよ」
「そしたら、だよ、日本の森の神々は、どうなるんだ、すくなくともオレの場合は、日本とエーゲ海の神話は、全然ちがう記憶にファイルされてるはずだぜ」
「いや、ヒトの認知プロセスからすれば、キミの森も団長の森も、おなじ記憶にファイルされてるはずだよ」
「そうかな、ひとによっては、エーゲ海の神話なんてまるっきり関心ない、というヤツだって、いるんじゃないか?」
「関心がない、ということは、認知してる、てことだろ?」
「…なるほど」
「つまり、記憶のなかで優先順位がある、ということなんだ、団長の場合は、一番思い出したい記憶にエーゲ海を、キミの場合は高天原を、ちゃんとファイルしてる、ということだね」
「気持ちの問題、か?」
「要は、強い感情や欲望、希望を介して、自分の血肉と、しっかりつながればこそ、記憶も身につく、ということさ」
「感情、心情、感覚、つまり頭だけじゃなく、まるごと体とつながる、てわけか」
「そう、記憶を知能の働きの一つ、としてしか見なくなると、アタマがおかしなことになってくると、ボクは、おもうね」
「そうだな、あのローマ育ち、まさに、その嫌いがあるな」
「キミの団長にとっては、記憶は、スキルなんだ、使い勝手のいい機能の一つ、なんだよ、オペラを磨くように、記憶も磨く」
「といっても、知識欲だって、欲望の一つだろう?」
「そうだよ」
「だとしたら、団長のエーゲ海の記憶だって、身について血肉になっている、てことではないのか?」
「ん、でも、そこにはね、もう一つ、重要な要素が、関わってくるんだよ」
「重要な要素? なんだ、それは」
「共同体という存在だよ」
「共同体?」
「キミが属してるのは、どこの共同体かな?」
「なにを、いまさら」
「日本かな、それとも、外国かな?」
「日本に決まってるじゃないか」
「キミは、いくつで日本を出たんだっけ?」
「なにいってんだ、オマエと一緒じゃないか」
「そうか、そうだったね、あのブザンソンで逢ったのは、大學四年のときだったね、すると、二十二歳か、まさにボクもキミも、日本育ちの、ネイティヴな日本人、だったんだよね」
「いかにも」
「ところが、キミの団長さんは、自分が日本人だってこと、忘れてるんだよ、きっと、血肉は日本なのに、アタマはエーゲ海、なんだ」
「そんなこと、いえば、オレもオマエも、おなじじゃないか、血肉は日本だけど、アタマは…?」
「アタマは、どうかな、ブザンソン、じゃないはずだよ」
「それは、そうだが…」
「ボクたちは、着実に、日本の共同体に根をおろしてるんだよ、だから、ブザンソンも、日本の共同体記憶の一部として、血肉化されてるんだ」
「じゃあ、団長は?」
「あれは、いや、かれは、日本の共同体に根をおろしていない、そもそも共同体記憶もない、邪魔になるから、捨ててしまったんだ、だから、エーゲ海の記憶も、血肉化されてないんだよ」
「わけが、わからんな、その、日本の共同体、て、なにを指して、そういってるんだ?」
「矮小化していえば、文化だよ、日本の共同体記憶の発露の一つに、日本文化の記憶がある、ということだね」
「すると、オマエやオレの血肉には、日本文化の記憶が刻まれているが、団長の血肉には、その記憶がない、ということか?」
「つまり、そういうことさ」
「とすると、だな、かれの立ち位置は、どういうことに、なるんだ?」
「日本人でもイタリア人でもない、ということだね」
「それは、酷だな」
「仕方ないさ」
「どうして?」
「日本文化もイタリア文化も、血肉に刻み込まれた共同体記憶ではなく、知識記憶でしかないんだからね」
「うーん…」
「だから、まわりからは、プイと浮いてしまった、宙ぶらりんな、変な人に、見えるんだよね、そこからは、奇人の挙動しか、見えてこないんだよ」
「宙ぶらりんで、変な人、奇人の挙動か」
「糸の切れた凧、て、昔から、いうじゃないか」
「そうか…や、そういえば」
「そういえば?」
 
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赤の連還 10 赤いバスタオル 完 11 赤い花弁 につづく


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