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コロナ禍 失われた青春

2020年 春。
大きく変わったのは高校二年生。
全国で休校が増えた。
新学期が始まる頃だった。

クラス替えが行われたが、マスク着用が必須だったので席順が書かれた紙を頼りに友達を探す。
知らない人もマスクをしてるため、顔と名前を覚えるのがいつもより難しくなる。

週一回ある登校日は、出席番号が偶数番と奇数番で教室を分けて登校する。
一度に一週間分の授業プリントが配られる。
自分で教科書を見て家で解けるようになっている。
ただでさえ一回の授業に詰めて教えられるのに、教科書だけで理解するのには時間がかかる。
一日の中で学校で授業を受ける時間は6時間ほど。
だが、教科書だけで理解するとなると、一日の勉強時間は12時間ほどかかった。
時には朝まで時間がかかることがあった。
一日中机に向かっているため、運動することもなくなり、週一の登校すら筋肉痛が起こるくらいだった。
こんな生活が2ヶ月ほど続いた。

休校が明けてから毎日通うようになるが、お昼ご飯の時に初めてマスクを取った姿を見る人ばかりで、誰が誰だかわからなくなった。
お昼ご飯を食べる時は自分の席に着き、黙って食べなければいけないため、今では友達と机を動かして向かい合って食べていた頃が懐かしく思う。

体育祭も文化祭も楽しみにしていたが、全て短縮され、本来ならば三日間あったイベントは一日に収められた。
恒例行事だった綱引きや部活対抗リレーも、初めて行われなかった。

夏休みはお盆あたりの9日間だけだった。
部活動も県大会に出場するための予選がなくなり、過去の成績で出場が決まったため、悔しい思いをする人も少なくなかった。
最後の試合に繋がる予選を戦えなかったのだ。

高校二年といえば、一番楽しみなのは修学旅行だ。
私たちの学校は国内と国外を選べる。
国内だとディズニーランドに行ける予定だった。
国外に行く予定だった人は、高校一年生のうちにパスポートを取っていた。
しかし、どちらもなくなった。

スポーツ大会も一生懸命練習した甲斐も虚しく、なくなっていった。
毎年の恒例行事がどんどんなくなっていく中で、しっかりとテストだけあることに不満をこぼす人も多かった。

そのまま三年生になった。
様々な規制がかかる中、学校だけはきちんとあった。
登校前に先生から送られてきたサイトに健康観察を入力し、毎朝送る。
熱はないか、家族に症状が見られる人はいないか、など。
期限の時間を過ぎると、先生に呼ばれて怒られる。
先生も大変だなと思う。

そんな中で、修学旅行の代替旅行があった。
正直嬉しかった。
だが、選べるコースの中には期待できないものばかりだった。
実際、何を売りにしているかわからないようなところをバスで回り、雨の中歩き、自由時間には何もなさすぎてコンビニに行く始末だった。
だったら旅行に「行かない」と選択した人たちのように休日を過ごした方がマシだと思うくらいだった。
もちろん日帰りなため、旅行の醍醐味である夜の恋バナなど何もなかった。

高校2年生も終わりを迎え、これから受験生になるという。
休校の間の勉強は教えられてないため、不安が大きかった。
全国の学生が同じなのか、模試では一部の分野が全国的に点数が低かった。
みんな同じならまだマシだなと思えた。

3年生になってからはあっという間だった。
もともと3年生はイベントが少なく、文化祭で1日だけお店ができるくらいだった。
これまでだと、喫茶店などの食べ物を売ることができていたが、もちろんそんなことは出来ない。
なので、似たり寄ったりのお店ばかりだった。
それでも高校生活の中では一番の思い出になった。

楽しみが消えていく中で、勉強の催促だけが増える。
クラスの中で休む人が多くなっていった。
高校1年生の頃から勉強勉強と言われているため、いじめや嫌がらせをする暇もなく、受験前の今になって休む人の気持ちが痛いほどわかるので、休む人を悪く思う人はなかなかいなかった。
そういった面では平和だったため、良かったのかもしれない。

高校3年生になって変わったことといえば、選挙権がある人がいるくらいだ。
それも投票したい人がいなくて困る。
18歳以下に10万円を支給すると誰かが言っていたが、全員に支給しろと、批判の声が多いらしい。
批判が多いのであればやめていただいても構わない。
10万円を貰ったところで修学旅行も文化祭も体育祭も球技大会も友達と食べる昼食時間も放課後に残って誰かと2人きりになることを少し期待することも、何も返っては来ないのだから。
大人の人が考える政策は職場や子育てが多く、若い子向けに考えられた政策があるとは言い難い。
それで投票する人がいないと言えば、「若い子は政治に関心がない」と怒られてしまう。
たしかにこの先お金は必要だと思うが、お金じゃ買えないものばかり失っているのだ。

親のお金で学校に行って遊んで楽だなと思われているかもしれないが、少なくとも私の親よりは窮屈な高校生活だったと思う。
遊びに行くことも制限され、放課後に居残ることさえも出来ない。
なのに「若い子が外に出るから」と言われる。

そろそろ「若い子が」と言われることはなくなるのだろうか。
親も姉も口を揃えて言う、「人生で1番楽しかった」はずの2年間は帰ってこない。
我慢して耐えていたのは若い子も同じです。
その上、ニュースでは「若い子が」と責める言葉ばかり。
誰も慰めてはくれません。苦しい気持ちに気づいてもくれません。
「私たちって、なんのために学校来てるんだろうね」
こんな会話が飛び交う中で、どこか元気がない人ばかり。

大人も子供も頑張っているのは同じです。
ですが、大人たちが大切にしろと言い続けてきた学生時代は、想像よりもはるかに超えてきました。
私たちを責めたのならば、イレギュラーな高校生活を取り上げるニュースがもう少しあってもいいのではないでしょうか。

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