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長寿番組と 明治維新と 就活セミナーと

#プロフェッショナル終わってません

「プロフェッショナルって、終わったの?」
いえいえ、終わってませんので!
今年度、『プロフェッショナル 仕事の流儀』は毎週ではなく「月イチ」の放送になります。本数が少なくなる分、一本一本に今まで以上に魂を込め、特別な視聴体験にすることをお約束します。

2006年1月の放送開始から数えて、今年で17年目を迎えたプロフェッショナル。いつの間にか「長寿番組」と呼ばれるようになりました。でも実は、私たち制作スタッフは「長寿番組」と思いながら作っているわけではありません。

というのも、この番組の担当ディレクターは数年単位で常に入れ代わり、主に20~30代の若手が制作の中心を担っているからです。
言わば“若輩者”の若手Dが、その道を極めた「プロ中のプロ」と真正面から向き合い、その人の本質(=流儀)に迫ろうとする。それは楽しくもあり、恐ろしくもあり、予測不能でもある、一期一会の真剣勝負。
プロフェッショナルという番組にとって長寿かどうかは関係なく、常に人生を懸けた「勝負の一本」なのです。

プロフェッショナル班の白板 


「伝統料理」と「長寿番組」

というわけで、若手Dたちは「我こそは」と新境地に挑戦し、ゴミ収集員や宅配ドライバーなどコロナ禍で注目を集めたエッセンシャル・ワーカーの方々を取材したり、バーチャルな存在である初音ミクさんを取材したり、いつも自由な発想で勝負しています。

が、その一方で、「ストイックすぎて見てて疲れる…」「マンネリ化してない?」等々、いろいろ言われることが増えたのも事実です。
プロフェッショナルは、数十日から数か月にわたる密着ロケで勝負する、スタジオなしのヒューマンドキュメンタリー。スタジオバラエティーなどが主流の昨今においては、もはや“絶滅危惧種”かも?!

かつて「プロフェッショナル班って、幕末の人たちみたいですよね」と呼ばれた私たちは、今や戊辰戦争で敗走し、五稜郭あたりに追い詰められているのかしら…とも思ったり。

そんな悩みを抱えた今年3月のある日。取材で訪れた日本料理店のご主人がこう言いました。

「自分の出す料理を変えたいとか、変えようとか思ったことは一度もない。日本料理にもキャビアなどの新たな食材を取り入れるのが流行っているが、流行に乗るだけではやがて滅びることになる。」

ご主人は続けて、こうも言いました。

「伝統を守るというのは、ただ同じことを繰り返すことではない。毎日、毎回、異なる食材やお客さんと向き合い、日々新しい挑戦をしている。」

そのご主人は、新たな食材や新しい創作料理を、別に否定しているわけではありません。ただ、日本料理には日本料理の良さがあり、それを追求し続けることでお客さんに毎回「おいしい!」と言ってもらうことは十分できる。自分はそういう闘いをしている、と。
伝統を背負う料理人の矜持。その言葉に、曲がり角を迎え、変革を迫られるテレビ局の番組がどうあるべきかを考えされられました。

視聴者の方々にどういう番組を届けるべきか?
何を変えて、何を残すべきか?
“新しい”とは、一体どういうことか?
正解などありませんが、私たちは絶えず考え、模索し続けています。

そして今は、こう考えています。伝統と革新は、相反するものではなく、「両輪」
革新なき伝統は、やがて滅びる。しかし、伝統を捨て去る=革新というわけでもない。
だって、“幕末の人たち”もチョンマゲは切りつつ、武士の魂は受け継ぎながら、明治維新を切り開いたわけで。「幕末VS.明治」ではなく、「幕末&明治」で維新を成し遂げたと思うんですよね。

クローズから、オープンへ

そんなこんなで、維新について思いを巡らせていた4月15日のこと。うれしい出来事がありました。

私たちはその日の夜、東京都立大学やNHKの首都圏局などのさまざまな人たちとコラボして、都立大のキャンパスでセミナーを行いました。
名付けて「就活応援塾」。
「数々の仕事の現場を取材してきたプロフェッショナルのディレクター陣が、就活に役立つヒントやエントリーシート作成の秘けつをお教えします」というものです。

イベント後の集合写真

そのセミナーの冒頭、学生の皆さんに「プロフェッショナルって番組、見たことありますか?」と質問したところ、驚くことにほぼ全員が手を上げてくれました。正直なところ「若い学生さんたちは、“幕末の人たち”の番組は見てないだろうな~」と勝手に思っていたのですが。

セミナーはリアル&リモートで合計およそ200名が聴講してくださり、幸い大盛況でした。その様子を目にして、こう思いました。

「ああ、プロフェッショナルという看板には、もっともっと利用してもらうべきポテンシャルや認知度がある。その看板は、みんなで使うべき“公共財”なのではないか…。」

私たちは『プロフェッショナル』を、解放します。チョンマゲを切って、でも武士の魂(?)は保ちつつ、ご用命があればどこへでも伺います!
『プロフェッショナル』を使って、面白いこと、楽しいこと、ワクワクすること、一緒にやりましょう!!

             
           NHK「プロフェッショナル班」チーフ・プロデューサー 末次徹