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はちみつ色の朝

カーテンをあけると一気に
日差しがいっぱいに拡がって
きみが台所に立つその風景が
おひさま色にまぶしくみえる

テーブルでおとなしく待っててよって言う君の
エプロン姿がとても初々しくて
包丁をにぎる姿なんかとても危なっかしくて
ほっておけるわけなんかなくて
後ろからぎゅっと抱きしめてみる

もー何も出来ないじゃんっていうきみがまた
たまらないほど愛らしくて
もっと離したくなくなった

チンっというオーブントースターの音が一瞬だけ二人を引き離し
こんがりと焼き上がった二人分のトーストをとりだす

きみはにこにこしながら無邪気に
これ好きなんだって琥珀色のはちみつをうれしそうに眺め
トローっと思いっきりパンに塗る

ぼくははちみつなんか好きじゃないけど
きみがあまりに美味しそうにたべるから
小さなスプーンで少しだけすくって
なめてみる

口中にひろがるまったりとした甘さは
ねっとりと居座り何とも言えない気持ちになるけど
ちょっぴりほろ苦なブラックコーヒーが口の中で
いい具合に中和していく


あの日きみは突然あの世に旅立った
はちみつ色の朝が一瞬にしていろを失った朝

ぼくは悲しく悲しくて悲しくて
寂しくて悔しくてこころが痛くて
どうしようもなくきみに会いたくて

もう一度だけ君を抱きしめたくて
君を幸せにするって誓ったあの日から
はじめて2度目の涙をながした


きみが大好きだったあのはちみつは
あの日からずっとそのままにしてある

ボトルの外にちょっとだけ垂れたはちみつは
いまだにベタベタするけれど
何も変えたくないんだ

君と過ごしたあのはちみつ色の朝を
ずっとずっとおぼえていたいから


作者:flyhigh(ふら)


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