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【特別対談】ベネッセ教育イノベーションセンター長×NexTeachers代表-教育現場の「今」を見つめ、「未来」を考える。(前編)

変化の激しい現代社会において、教育現場の改革に向けた動きも数年前から活発化している。アクティブラーニングや学校改革の取り組みを現場の最前線で見るベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター長の小村俊平さんをお迎えし、「教えない」コーチング型家庭教師サービスを提供する代表中山と教育現場の今と未来について考える。

小村俊平(こむら しゅんぺい)
1975年生まれ。 1997年慶應義塾大環境情報学部卒業。 2000年シンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。 2006年よりベネッセコーポレーションにて全国の自治体・学校とともに次世代の学びの実践と研究を推進し、数多くの学校改革や学校設立に携わる。現在はベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター長を務める。

中山諒一郎(なかやまりょういちろう)
1994年生まれ。筑波大学社会・国際学群社会学類政治学専攻卒業。学校→民間→学校という「越境型・往還型」のキャリアを歩むパラレルキャリアの教員。学校外ではNPO法人での勤務や議員の選対責任者、政策スタッフなどを経験。学校現場では、学校改革の統括や探究科主任、法人のブランティングマネージャー、管理職などを経験。現在は学校法人昭和学院 法人事務局次長・教諭と「教えない」コーチング型家庭教師NexTeachersのサービスを提供する一般社団法人ゼロイチの代表を兼任。



アクティブラーニングや学校改革の現状とは?

中山:アクティブラーニングや学校改革の流れを全国の教育現場回っている小村さんはどう思われていますか?

小村:2020年に新しい学習指導要領、主体的な会話ベースでの教育やアクティブラーニングなどや探究的な学びが言われるようになりました。ただ、小学校見るとこの10年大きく変化があったと思うんですけど、特に高校については変化した高校・変化していない高校に分かれていると思いますね。

中山:小学校の具体的な変化とはどこが変わったなと思いますか?

小村:親世代と子世代を比較すると分かるんですけど、親世代の小学校のイメージは先生が黒板に板書していると、生徒が前を向いて先生の話をきいて、先生が何か生徒に質問したら挙手して進めていく形で、基本的に静かな教室、授業でした。今は全国どこを見ても端末を使うかどうかは別として、にぎやかな教室がいい授業という形になってきたかなと思います。必ずしも前を向いていることだけじゃなくて、生徒同士が話をしたり、授業のスタイルがずいぶん変わったなと思います。

中山:教室の在り方とか良いクラスの定義が変わってきた。逆に高校の方が出遅れている感じがあるとおっしゃってたと思うのですが、僕自身も現場に入っているので感じている部分もある中で小村さんから見てどの辺が課題感ですか?

小村:実際は変化したところもあると思います。探求的な学びに力を入れている高校は学びの機会を学校の中でなく、地域の問題解決に繋げて学校の外に飛び出したり、あるいはインターネットを使って海外の学校と英語でコミュニケーションしたり、そういったことを学ぶときは親世代と子世代とスタイルが小学校より高校の変化がない学校の方が多いのではないかと思います。それは恐らく高校では教えなければいけないことが多いからという先生の気持ちもありますし、大学へのセンター試験もあるので、それが大きいかもしれません。

中山:探究っていうものが学校の教科と切り離されている部分があって、一般的な教科が探求的な学びにならなきゃいけないんだけど断絶されていることもあります。理想は1人1台タブレットが入って、それぞれ個別最適に効率の良い勉強ができることだと思います。だからこそ余白があるから協働的な学びが出来ると思っていた。その理解であってますか?

小村:学びの方法やプロセスの問題もあるが、「どんな力を身に付けたいのか。」そこが大きい気がします。教育観や学習観などが表れてるのが重要。教科書に書いてあることが身につくのが学習のゴールと置くのか、そこも学んだうえで自分なりの解釈を持てることをゴールにするのか、教科者に書いてあること全てマスターするのか、色んな目標があっていいと思うのですが目標の違いが学校の教育内容の違いに出てきてる気がします。

中山:従来型の教科学習は何を学ぶかという知識がベース。探求的な学習はどんな資質を身に付けるのか。そこの差じゃないですか?

小村:どうしても先生方からしても知識十分じゃないといけない。まんべんなく知識を身に付けてほしい。それが終わらないと次のステップにいけないっていう思い込みや固定観念があったと思うんですよね、今の時代は保護者の方の意識が変わってきたと思います。教科書にあることを身に付けてほしい方もいると思いますが、それ以上に子供が興味あることを見つけてほしい。夢中になるものを見つけてほしいという方が増えてきたのではないかと思います。教育に特色がある学校を選ぶ傾向にありますし、選びやすくなったと思います。選択肢が増えてきた。選択できるようになったと思います。


これからの時代、子どもたちはどのように自分の「やりたいこと」を見つけるのか?

中山:現場入っている中で、保護者の方とお話しすると今までのニーズだけじゃなくて自分のやりたいことを伸ばしてほしいやその種を見つけてほしいっていう保護者の方も一定いらっしゃいますが、従来型の一斉授業だと難しい気がしているんですがそのあたりはどうですか?

小村:40人の生徒には同じゴールに行ってほしいというゴールがありましたから、そのゴールがある限りわからない子がいても、ゆっくりするか置いていくかしか選択肢がなかった。それが出来なかったら学習順にクラスを分けるか補修するかしかできないんですよね。
ゴールが決まっている。掛けられる時間が決まっている。となったら、先生方からすると打つ手がないんですよね。

中山:お子さん1人1人やりたいことを大事にするという文脈でいうと今後どのようなアプロ―チが重要だと思いますか?

小村:誤解を恐れずに言うと、先生も親御さんもこうならなけばいけないということからもう少し自由になることがあると思うんですよね。大体教育の話をするときって生徒側の希望やなりたい姿ではなく、大人側が教えたい方向性にどう生徒に向かってもらうかが多いじゃないですか。大人からすると助言ではあるんですけど、子供からすると先に好きなことをやってから必要性があってからやりたいがあると思うんですよね。一番大事なのは、生徒がやる理由や動機を見つけることが今まで以上に大事になってきた。親世代の頃は1世代に200万人くらいいて、とにかく人数がいてその中に競争があって、選抜されて、選抜の中で勝ち残ると良いことがあるっていう共通認識があった。今は必ずしもそう思っていない。そんなに競争に勝ち抜かなくても大学に入れるし、そんなに頑張らなくてもいい所に行けるって思えてしまうし、親を見てそんなに頑張って選抜に勝ち抜いても良いことないんじゃないかって思ってしまう。日本だって経済的に発展してなかった姿も見てきているので努力を否定するわけじゃないが、ただ努力した先にいいことがあるのかを昔より無邪気に信じられなくなったと思うんですよね。自分が納得できることをしたいとか同じ努力をするんだったら自分が興味あることをやりたい。社会の意識も変わってきたのかなと思います。


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続きの後編では、子どもたちが「やりたいこと」を見つけるためにこれからの親や学校の役割と過去最高の人数である不登校という社会問題に触れていきながら、教育業界の「今」と「未来」を深堀りをしていきます。

Nexteachersでは、子どもたちの「主体性」最大限を引き出す、「教えない」コーチング型の家庭教師のサービスを展開しています。

会社名:一般社団法人ゼロイチ
代表者:中山 諒一郎
HP:https://nexteachers.com

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