NYC Fashion 業界 - 「日本人だから」って、 信用しない
この記事のタイトルから、ある日本人の人と、何かトラブルがあったのだろうと、推測できると思う。
トラブルに巻き込まれる程、かかわらなくてよかった。これが本音。
ウエディングドレスの pattern (型紙) 作成
2000年5月に大学を卒業後、直ぐに就職は決まらなかった。一方で、合法的にアメリカで働く事ができる、OPT 期間に入っていたので、就活をしながらアルバイト的にプロジェクト単位で、仕事をしたいと思っていた。
この時期の仕事について、もう少し詳しく書いた記事があります。ご興味あれば、読んでみてください。
では本題に戻り、私が請け負ったウエディングドレスの pattern (型紙) 作成のプロジェクトの話。
この仕事は、多分大学の、job bank (ジョブバンク=仕事案内所) で見つけた気がする・・・。(20年前の事で、少々記憶が曖昧😅)
日本人の女性 (Ms. B) が、自分でウエディングドレスのブランドを、所有していて、そのデザイン・製造・販売のビジネスをしていた。
彼女から、1着のドレスの型紙作成を依頼された。初めて会った時に、デザイン画を渡され、詳細を聞き、納入期限と報酬を確認した。
これが、私にとって初のドレスの型紙作成プロジェクト。嬉しさと緊張と興奮、全てが入り混じった気持ちを味わった事は、よく覚えている。
友人達からの HELP
私には、二人の頼もしい友人がいた。二人とも、日本のファッション業界で、何年も仕事をしてきた、プロの patterner (パターンナー=型紙を専門に作る職業)で、ひとりの人は、課長職のポストまで経験したくらいの、熟練者。
卒業したてで、しかも初めて作るウエディングドレスの型紙だったので、二人の親切な手助けは、ありがたかった。
私は、彼女達にプロジェクトの話をして、アドヴァイスをもらい、型紙を描いた時点では、チェックもしてくれた。
二人の少し異なる考え方や意見を聞けた事は、とても良かった。それらを,
更に自分なりに、調整して納得のいく様に、仕上げられたからだ。
プロにあるまじき発言
型紙は無事完成した。細かい手直しはあるだろうとは思ったが、それなりに自信があった。Ms. B のオフィスへ持参し、彼女に見せた。
型紙を全て広げ、デザイン画と照らし合わせながら、型紙の説明をしていった。Ms. B は、説明を聞いては、何も質問せず、ただ相槌を打っていた。
私「いかがですか?どこか、手直しを入れたい箇所があれば、おっしゃってください。」
Ms. B 「良いと思うわ。」
私「ありがとうございます。」
Ms. B 「今ちょうど、うちのパターンナーがいないのだけれど、明日にでもこのパターンチェックしてもらうから、お預かりするわ。」
私「・・・・・(何を言っているのだろう、この人。そういう事なのか・・・。)」
気を取り直して、言った。
私「パターンを、置いていく事はできません。」
Ms. B 「あら!なんで?あなた、プロのパターンナーに、自分の作品を見てもらいたくないの?」「卒業したての人が描いた型紙は、このままでは使えないのよ。」
私「このパターンは、二人のプロのパターンナーに、既にチェックされています。」
Ms. B 「残念ね。せっかくの良いチャンスを、あなた無駄にしようとしてるのよ。」
私「・・・・(えっ? この人、常識を知らない? しかも、日本人・・・。)」
私「失礼します。」 型紙をたたんで、さっさと部屋を出た。
「日本人だから」って、信用しない
なんとも後味の悪い、嫌な気分だった。お金がもらえなかったとか、ただ働きをしたとか、そんなことよりも、『日本人』からこういう思いをさせられたという事に、腹がたった。
ニューヨークのファッション業界で(どこの業界でもそうだと思う)自分の作品を他人に預けるなどという事は、あり得ない。
もちろん、個々の契約や状況によるけれど、面接の場でさえも、絶対に、
ポートフォリオを貸したり、置いてきたりはしない。
自分の作品は、全て自分が生み出したもの。それは、業界で働くすべての人が知っている常識。20年少し働いてきて、これ以外に、一度も見た事も聞いた事も無い。もちろん、経験した事も。
Ms. B の名前も覚えていないけれど、彼女のブランドの名前だけは、今でもうっすらと覚えている。
どういう考え・意図で、彼女がこういう発言をしたのか、それはわからないが、彼女の言った事は、プロフェッショナルとは言えない。
自分以外の人にも型紙を見てもらえたければ、その場にいるべきだし、新卒者の技術を信用できないのであれば、私には頼むべきではない。
大切なのは、どんな立場の人間であれ、この業界で仕事をする限りは、お互いを尊敬し合うという事。悲しいかな、相手を尊重する態度を取れない人はいる。きっと、どの業界にでもいるのだろう。
"Respect each other." 「互いを尊重し合う」
"Do not treat people poorly." 「人を粗末に扱わない」
3代に渡り受け継がれた言葉
私がニューヨークへ留学することが決まった時に、母が言った言葉がある。
「他人(ひと)を見たら、泥棒と思え。」これは、母が自分の母親、私の祖母から言われた言葉らしい。
今から70年以上も昔の事。母は長崎県の出身で、10代の頃から、いつも
東京に憧れていたと言う。当時テレビもない時代では、雑誌や新聞、ラジオから知る情報が全てだった。そんな限られた情報だけを頼りに、彼女なりに、東京というところを想像しては、いつの日か東京を自分の目で見てみたい。それどころか、実際に住んでみたいと思う様になっていったという。
願い叶って、母は自分の弟が東京の大学へ来る際に、一緒に上京する事になった。
母曰く、私は人がいいから、直ぐに誰でも信用する傾向にあるらしい。
祖母から母へ、そして私へと受け疲れたこの言葉、私にとっては、より良い人間関係を築いていく上で、なかなか良い言葉。
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