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ぼくの王国 #2「最初の階段」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第一章


ぼくがレストランで働き始めた日、オーナーが言う。

「キミが未成年だとは残念だな。ほんとうはもっと働いてもらいたいけど、任せられる仕事は限られてしまう」

ぼくは使い走りの身分から、すぐにウェイターに昇格する。ぼくは客の求めることに細心の注意を払う。彼らが求めるサービスを理解する。常連客はベテランのウェイターを通り越してぼくを手招きする。

「ねえ、今日のおすすめは何だい?」

ぼくはその日に入ってきた食材の名前をスラスラあげる。野菜も、魚も、肉も、産地までそらんじる。客は満足し、チップを弾む。ぼくのポケットは小銭の重みであっというまに穴があく。


お金持ちを見慣れたぼくの目にも、とびきりのお金持ちがやってくる。オーナーや料理長の目つきが変わる。艶光りするスーツを着こなす高級な客は、一番高価なワインとフルコースを注文する。ぼくはガラス皿のオードブルや、ほどよい温度のスープを運ぶ。ぼくの熱のこもった説明に高級な客はなんどもうなづく。
料理場の動きが慌ただしい。今日は客が多い日だ。オーダーが重なってメイン料理はまだ出来あがりそうにない。

オーナーがぼくを手招きする。

「メインの料理が遅れると、お客様にあやまりにいけ。うまく言うんだぞ」

ぼくはうなづく。

「わかりました」

ぼくは高級な客の前に立ち、うやうやしく頭をさげる。

「次のメイン料理ですが、料理長は、今ひとつ納得がいかない出来栄えだと申しております」

高級な客は面白そうに笑う。

「それで、どうするつもりかね?」


ぼくはすらすら答える。

「もう少しお時間をいただけるのであれば、作り直しますが」

「ではそうしたまえ」

高級な客はバリトンのような艶やかな声を響かせる。そしてもう一本、高いワインを注文する。



あくる日、見知らぬ番号から電話が鳴る。聞き覚えのあるバリトンの深い声が受話器の向こうから聞こえる。

「キミをうちのレストランに引き抜きたいが、どうだろう?」

ぼくはすぐに言う。

「はい、お願いします」

電話の主は昨夜の高級な客。彼は5つ星レストランをいくつも持っている。
ぼくはお世話になったレストランをやめる。オーナーも、おじさんも、同じことを言う。

「キミはなんてラッキーなんだ」

ぼくはやれやれと首を振る。

「あたり前だろ。ぼくを誰だと思っているんだい? でも世界には、ぼくよりラッキーな人はいくらでもいるけどね」

ぼくの答えは喜ばれない。

「これ以上、欲張らないほうがいい。そうすれば、そこそこ幸せにやっていけるさ」

ぼくは5つ星のレストランに引き抜かれた。でもぼくは世界一のお金持ちをめざしている。そこそこの幸せなんて考えない。


→ …続きを読む(ぼくの王国 3「欲望がうずまく町」)


前回の話はこちら。


誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。


制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン
モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー 。
中込英人
モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』
谷村典子
作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/

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