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目を惹く美しさの決め手って…!?おちらしさんアワード2023~美術版~結果発表

こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです!

チラシ宅配サービス「おちらしさん」では2020年より、1年に1度開催される“チラシの祭典”、おちらしさんアワードを行っています! 全国の舞台・美術展ファン、チラシファンの皆さまに、一推しの1枚へ投票していただき、多くの票数を集めたチラシとその作り手の方々を表彰するイベントです。

10~11月の一次投票、12月の決戦投票と、2回に分けてWEBにて投票を受け付けていました。投票してくださった観客の皆さま、盛り上げてくださった主催の皆さま、本当にありがとうございました!!

今年は新たに、おちらしさんスタッフの念願でもあった、チラシビジュアルが見られる投票ページを叶えることができました。各チラシ1枚のみの画像掲載となりましたが、鮮やかなノミネートチラシの並びに「来年はチラシごとに工夫された裏面や折り加工までなるべく味わえるようにしたい!」と次なる目標も抱いています…!

決戦投票ページでは、ノミネートチラシ全98点をご紹介していました!

こちらの記事では結果発表として、美術版の上位1~10位に輝いたチラシ10作品をご紹介します。投票とともに観客の皆さまからお寄せいただいたコメントや、展示主催団体・デザイナーの方々からの記念コメントも掲載! 素晴らしい展示チラシの数々をどうぞたっぷりとお楽しみください!

▽「おちらしさんアワード2023~舞台版~」結果発表はこちら▽


第1位 下瀬美術館
「開館記念展 おひなさまと近代美術 — 丸平の人形からガレ、マティスまで」

■ 〈広島県〉下瀬美術館
2023年3月1日(水)~ 5月7日(日)

見事、第1位に選ばれましたのは、下瀬美術館にて開催されました、「開館記念展 おひなさまと近代美術 — 丸平の人形からガレ、マティスまで」です!!

こちらのチラシで特徴的なのは、澄んだ空気と奥行き。木材を基調とする広々とした空間に差し込む太陽の光は、明るく清潔な印象を与えます。その空間の中央に座るのは、展示の主役であるひな人形。愛らしくも堂々とした姿が背景とマッチし、不思議とチラシ全体にスッと一体感のあるどこか神々しい雰囲気を感じませんか?

下瀬美術館は、2023年3月、瀬戸内海に面する広島県大竹市にオープンしたばかり。本展が「開館記念展」とのことですが、展示品だけでなく、美術館の空間自体を強く印象付けるようなデザインです。”アートの中でアートを観る”という下瀬美術館のキャッチコピーが画として映し出され、自分も現地へ足を運び、建物ごと非日常の体験を享受しているような感覚を覚えます。

艶のある紙質が木目の美しさをパワーアップさせています

つつましさの中にインパクトがあった」「美術品だけでなく美術館そのものの素晴らしさがうかがえる」「現代的な建築と、伝統のあるお雛様のコントラストが美しい」といったコメントもいただきました。ロゴをはじめとする文字デザインや、温かくツヤ感のある厚めの紙質も、洗練された雰囲気にぴったり。筋の通ったコンセプトが、新しい美術館像を確立した1枚です。

下瀬美術館  広報ご担当の方よりコメント

多数のノミネートの中より、当館のチラシデザインにご投票いただきありがとうございます。

当館は2023年3月に、瀬戸内海を望む広島県大竹市に開館いたしました。
「アートの中でアートを観る。」をコンセプトに、建築家・坂 茂が手がけた建築の中で美術工芸品の鑑賞をお楽しみいただける美術館です。当館を設立した下瀬家が蒐集した、京都・大木平藏の雛人形や御所人形から、エミール・ガレのガラス器、横山大観やマティスの絵画といった日本と西洋の美術工芸品約500点を所蔵しています。

当館の第一回目の開館記念展として開催した「おひなさまと近代美術 ―丸平の人形からガレ、マティスまで」のチラシを、この度あらためて皆様にご覧いただき、また第一位に選ばれ、大変光栄に思います。
デザインの意図としては、坂 茂が設計した建築空間の中央にコレクション主要作品のひとつである雛人形の女雛をシンボリックに据え、現代的な空間の中に古典美術があるという下瀬美術館の最大の特徴をヴィジュアライズしております。また、女雛のまとう厳かな空気感と現代建築のもつ抜け感が共存するという、ある種の違和感を魅力的にお伝えできればという想いがございます。

開館一周年記念として1月21日(日)より、「下瀬美術館のひな祭り」展を開催いたします。
ぜひご来館いただき、建築と美術工芸品をお楽しみくださいませ。
この度本チラシをご覧いただいた方々が、当館へ足をお運びいただく機会となりましたら幸いです。


第2位 練馬区立美術館
「練馬区立美術館コレクション+ 植物と歩く」

■ 〈東京都〉練馬区立美術館
2023年7月2日(日)~ 8月25日(金)

第2位は、練馬区立美術館で行われました、「練馬区立美術館コレクション+ 植物と歩く」です。

こちらのチラシは、一面に生い茂った植物が印象的。グリーンとブルーで描かれた草たちは、文字通り「青々」。どこかひんやりとした植物ならではの瑞々しい潤いも感じますね。細かく格子状にエンボス加工がされた紙が使われていますが、その触り心地も葉っぱを触ったときに指に伝わる感触を思い出すよう?

お散歩中にも見えるうずら

そこへアクセントを添えるのは、垣間見えるベージュの地面を歩く可愛らしいうずら。自由に伸びた蔓を彷彿とさせる題字と合わせて、ルンルンと小さくスキップするような楽しい雰囲気が伝わってきます。「植物の森に向かって踏み込んでいく印象」「緑を感じられた。字体も植物デッサンのよう」「濃い緑が鮮やかで、現地で見たときも青空に映えていて素敵だった!」といったコメントもいただきました。

2023年には朝ドラ『らんまん』をきっかけに大ブームとなった植物学。ちょっと植物が気になる人、植物園に行ってみようかなと考えている人も、このチラシに誘われてしまえばきっと美術館へ足を運んでしまうはず。植物の姿を描いてきた作家たちの作品を通して、「植物“と”歩く」。なんだか素敵な時間になりそうではありませんか……!

練馬区立美術館学芸員・木下紗耶子 さん よりコメント

おちらしさんアワード2023 第2位に選出していただき、ありがとうございます。本展覧会は、植物の美しさや不気味さ、変化や動きなど、作家それぞれの視点で描き出される魅力に注目するという趣旨でした。美術館を訪れた方には、植物の繁みに歩み入るように作品と出会っていただきたいという、まだ言葉にできていなかった私のおぼろげな気分を、デザイナーの松尾さんが見事に視覚化してくださいました。会期中にチラシを手にしてくださることはもちろんのこと、会期終了後もチラシのデザインを通じて展覧会が記憶されていくとすれば大変うれしいです。ご投票くださった皆様にあらためまして御礼申し上げます。

デザイナー・松尾由佳(Nica)さん よりコメント

受賞のご連絡、光栄です!
館蔵品を中心とした様々なジャンルの展示作品から、メインビジュアルに相応しいものを検討する中で、特に目を引いたのが佐田勝《野霧》でした。知名度(朝ドラもあるし…)も考慮し、牧野富太郎の作品も検討しましたが、最終的には《野霧》の深い色味に「真夏の展覧会、森に避暑に行くような気持ちで…」と学芸員の木下さんと話したことを思い出します。
描かれた生命力溢れる草花や鳥の、北欧のテキスタイルデザインのような雰囲気にあわせ、紙は布のようなエンボス加工で素材感を重視。タイトル文字は植物の動きを意識しつつ、できるだけフラットなデザインを目指しました。
チラシを沢山の方に手に取っていただけたこと、図録も完売したようでとても嬉しいです。ありがとうございます。


第3位 平戸オランダ商館
「殿さまの洋書コレクション2 ―西洋学術と蘭学―」

■ 〈長崎県〉平戸オランダ商館
2023年4月22日(土)~5月21日(日)

第3位は、平戸オランダ商館にて開催されました、「殿さまの洋書コレクション2 ―西洋学術と蘭学―」です。

こちらのチラシは、「古い本の1ページ?」と思ってしまうようなデザインが特徴。くすんだ紙の上に文字や絵がコラージュされているように見えます。「殿さまの洋書コレクション」という展示タイトルですから、学問好きなお殿様が、集めた数々の洋書から興味のある内容を切り貼りしたのではないかとも想像が広がりますね。

展示解説も、何百年も前に書かれたかのように思えてくるから不思議です

裏面では、展示作品の写真や解説が1つの書物に書かれたかのようにデザインされ、チラシを手にした人のアカデミックな好奇心を刺激します。「コレクションを大切に守っている姿勢が表れている」「古いテーマなのに斬新」「異国に興味を持った殿さまの事を知りたくなった」というコメントもいただきました。

約200年前に生きていたお殿様が、遠い海の向こうを思って手にしたであろう洋書のコレクション。彼の心高ぶる気持ちが、書物のようなチラシを通して、今の私たちに訴えかけてくる。時空を超えたロマンティックなデザインです。

平戸オランダ商館 よりコメント

多くの方々から「おちらしさんアワード2023」の3位に選んでいただき、驚きとともにとてもうれしくありがたく、スタッフ一同喜びに沸いています。

平戸オランダ商館は長崎県平戸市にあるミュージアムです。平戸とオランダの交流の歴史を紹介しつつ、歴史、現代アート、LGBTQ+、食文化、日本画、工芸など幅広いテーマで企画展を行っています。

今回の「殿さまの洋書コレクション2 ―西洋学術と蘭学―」では、平戸藩主・松浦静山が蒐集した洋書をテーマにしました。松浦静山は蘭学や博物学に熱中し、国内外の様々な文物を収集しています。その好奇心は、のちに「蘭癖大名」とも呼ばれるほどで、洋書のコレクションは現存するもので100冊以上にのぼります。

史料は素晴らしいものが揃っているのですが、なかなか予算がとれないため、このチラシはデザイナーさんに頼まず、スタッフがデザインして作ったものです。

世界地図に描かれた天使、植物の図版、日本を西洋に紹介した『東インド会社遣日使節紀行』の挿絵、そして松浦静山の蔵書印などを配して、楽しい雰囲気を目指しました。好奇心旺盛な殿さまのワクワク感が伝わればうれしく思います。

投票をしていただいた皆様、また当館のチラシに目をとめてくださったすべての皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。


第4位 森アーツセンターギャラリー
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」

■ 〈東京都〉森アーツセンターギャラリー
2023年2月3日(金)~4月10日(月)

第4位は、森アーツセンターギャラリーにて行われました、「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」です。

画家・絵本作家である、ヒグチユウコさんの大規模個展が、「ヒグチユウコ展 CIRCUS」として2019年から全国9会場を巡回したのち、さらに500点以上の新しい作品を加えて、東京へ帰ってきました! タイトルの書かれた細い帯のような部分を含め、4つ折りであるこちらのチラシ広げると作品の全貌がドドーンと姿を現します!!!

本展の集大成として描かれた新作《終幕》の華やかな全体像を捉えられるだけでなく、一筆一筆描かれた細かな線までじっくりと見られる……。 そんな体験がチラシでも叶うとは嬉しいですよね!! パワーを纏うかのように丁寧に塗り重ねられた色彩もどっぷり隅々まで味わえ、まさに贅沢です。

裏面を飾るのは、2018年に描かれた展示タイトルと同じ名前の《circus》。チラシの表と裏で、4年に渡る“サーカス団の歩み”を感じる、巡回展に行かれた方には、よりいっそう嬉しいデザインなのではないでしょうか!? 右端の赤い部分にも各会場での“興行の歴史”が書かれていますよ……!

ヒグチさんのクリエイティヴィティが溢れ出ている」「チラシとは思えないほどの豪華版」「じーっと見てしまう描き込み。細密過ぎて見入ってしまう」といったコメントもいただきました。サーカスのようにインパクト抜群で、ワクワクと全国を駆け巡った軌跡が感じられるチラシデザイン。展示のコンセプトにぴったりと沿った、楽しさと躍動感のある1枚です。


第5位 もりおか歴史文化館
企画展「罪と罰 -犯罪記録に見る江戸時代の盛岡-」

■ 〈岩手県〉もりおか歴史文化館
2023年8月11日(金・祝)〜10月31日(火)

第5位は、もりおか歴史文化館にて行われました、企画展「罪と罰 -犯罪記録に見る江戸時代の盛岡-」です。

「罪と罰」のタイトルが取り扱うテーマの重さを物語るこちらのチラシ。重石で挟まれ潰れたかのような題字のデザインは、思わず「石抱」と呼ばれる江戸時代の拷問が思い出されませんか? 背景の黒色とのコントラストも、罪を裁き罰を下す、毅然としたイメージで厳しくどっしりと。しかし全体的に暗いトーンでありながら、光が当たるとシルバーのインクが怪しくきらめくところには、悪と分かっていながらもなぜか惹きつけられてしまう危うさを感じます。

裏面は、繊維が目で見えるクラフト紙の色味が生かされ、古い資料が集まる展示らしい雰囲気を盛り上げます。犯罪記録から紐解く人間の歴史は、一体どのような顔を私たちに見せるのか。A4より横幅が狭い縦長のチラシサイズも、まるで罪状の書かれた張り紙のようなイメージで、「罪と罰」という言葉から連想する厳しさや人間の業の深さだけでなく、罪を犯し、罰せられるに至った人々が生きた当時の暮らしへの興味も駆り立てられる1枚です。

なんとも緊迫感のある注意文。題字は表面と色が変わり、スミ一色でもガッチリ強そう

現地でこのチラシを見て足を止め、あまりに関心を引くので開催時期に来館しなおしました」「恐ろしくも厳しく公平であらんとするイメージ」「シンプルながらモノトーンの配色も含めインパクト大」といったコメントも寄せられました。

デザイナー・黒丸健一 さんよりコメント

この度は、数あるデザインの中からもりおか歴史文化館企画展「罪と罰」のチラシを選んでいただき大変光栄に思っております。印刷物という媒体はその役目が終わると目を向けてもらえることがないものかなと思うのですが、企画展の開催期間を終えた後でも本来の目的とは違った形でこのようにもう一度見てもらえることが出来とても嬉しく思っております。
このチラシが目立ったであろうポイントは、展覧会名がインパクトあるものだったという点と、写真・図版を使わず文字デザインのユニークさだけでさらに印象を深められた点が大きかったと考えています。また、印刷表現としても色の見え方や質感にこだわり相乗効果を出せた点が良かったのではないかと考えています。
今後とももりおか歴史文化館の企画展示とチラシデザインにご注目ください!


第6位 TOKAS Project Vol. 6
「凪ぎ、揺らぎ、」

■ 〈東京都〉トーキョーアーツアンドスペース 本郷
2023年10月7日(土) ~11月12日(日)

第6位は、トーキョーアーツアンドスペース 本郷にて行われました、TOKAS Project Vol. 6「凪ぎ、揺らぎ、」です。

モノトーンの配色と、文字デザインがシックなこちらのチラシ。中央の写真にはフクロウが捉えられており、いつ動いたり、飛んだりするか分からない姿からは「今この瞬間を見逃してはいけない」というメッセージを感じます。動きのある展示タイトルの配置から、止まらずに変化し続ける時間の流れを感じるからでしょうか? 動き続けているはずの生きものからは一瞬の静けさが、その場に留まっているはずの文字からは動きを感じるとは、なんだかあべこべで面白い対比です。

実はこちらのチラシは、黒バージョン2種、白バージョン2種、全4種類のデザインがありました! 出展する4組の作品がひとつずつ掲載されています。それぞれ作品に同じ展示タイトルや開催概要が添えられていますが、作品が横向きか、縦向きかによって、微妙に文字の配置が異なっているのも動きを感じるポイントです。

上の2枚が横長の作品、下の2枚が縦長の作品で、それぞれタイトルの配置が微妙に異なります!

メリハリのある色調がいい」「情報にあふれた世の中でも目を引く」「文字の組み方がかっこよかった」というコメントもいただきました。

静かな「凪ぎ」と、変化する「揺らぎ」。タイトルの「、」は両方が緩やかに繋がり、まだその先へも続いていくことを暗示させます。メッセージはチラシデザインにも落とし込まれ、作品に寄り添うことで投げかけをより浮き彫りにする。極めてシンプルながら、細部に工夫が凝らされた印象的なデザインです。

デザイナー・川越健太 さんよりコメント

数多くの候補作のなかからご投票を頂いた皆様、ありがとうございました。
「凪ぎ、揺らぎ、」展は4組の作家による企画展示で、コロナ禍を経て私たちが経験した変化あるいは不変の物事への眼差しや態度について焦点を当てた展覧会でした。
デザイン面でこうした内容を反映すべく、あまりグラフィカルな解法は採らず、比較的オーソドックスな文字組みを採用しつつも、文字を追っていく目の動きや配置による優先順位の取り方などを考慮し、僅かな違和感が感じられるような画面(あるいはメディア間での拡がり)を目指しました。
また、フライヤーは各作家の作品を等価に扱えるよう4種類を同部数で制作しました。
作品の図版は横位置と縦位置がそれぞれ2種類あったため、背景色を黒ベタと白抜きで切り替え、タイポグラフィも図版位置に応じて若干組み替えています。
こうした操作を通じて、皆様に本展の相反するような状態が重なり合っている微細な感覚をお伝えすることができていれば、制作者としてはとても嬉しく思います。


第7位 東京都現代美術館
「デイヴィッド・ホックニー展」

■ 〈東京都〉東京都現代美術館
2023年7月15日(土)~11月5日(日)

第7位は、東京都現代美術館にて行われました、「デイヴィッド・ホックニー展」です。

こちらのチラシは何といっても、パッと目を奪われてしまう鮮やかな色彩が特徴的! 明るい草原の蛍光グリーンに、木の幹は紫。奥の森には、群青色が重ねられています。自然界では見当たらない奇抜な色合いにも関わらず、のどかな田舎の原風景が違和感なく伝わってくるから不思議です。チラシの下半分では、白と黒の2色で情報がすっきりとまとめられ、ホックニーの作品らしいポップな色使いを引き立てます。

裏面は打って変わって、茶色が基調。とは言っても、どんな茶色かひと言では言い表せないカラーですが、ココアブラウンが一番近いでしょうか……?  特色インクがふんだんに使われた贅沢なデザインですが、何よりも作品の魅力である、ホックニーの持ち味を表現することをとことん追求したいという想いが伝わってきますよね。「普通の色ではなく、輝いていた」「最初に見たときの衝撃が忘れられない」「ホックニーのファンになりました」といったコメントもいただきました。

展示タイトルの文字デザインについても多くのコメントが寄せらせましたが、東京都現代美術館さんより、その秘密についてもお言葉をいただいています。 実はとある日本の作品をモデルにしたタイポグラフィーだったとは、驚きです……!!

東京都現代美術館  広報ご担当の方よりコメント

数あるチラシの中から、デイヴィッド・ホックニー展の先行チラシが多くの方の印象に残り、お気に入りに選出いただき大変光栄です。
先行チラシは両A面のデザインになっており、片面には代表作のひとつ《クラーク夫妻とパーシー》(1970-71年)、もう片面にはコロナ禍で制作された全長90メートルの大作《ノルマンディーの12か月》(2020-21年)を大きく掲載することで、60年以上にわたり現代美術の第一線で活躍し、新作を発表し続けるホックニーの「今」を紹介する本展を表しました。
昨年、印刷会社サンコー様「勝手におちらしさん」コーナーでもコメントいただきました通り、タブレット型端末iPadで描かれた《ノルマンディーの12か月》の色彩に近い発色を目指し、印刷会社様にもご尽力いただきました。

また、展覧会タイトルロゴのタイポグラフィーは、歌川広重の名所江戸百景「大はしあたけの夕立」で描かれた雨を参照としており、ホックニーと東京・日本を繋ぐ要素として、作家に影響を与えたと言われる浮世絵を隠れた構造に据えているのもこだわりです。

ご投票いただいた皆様と「おちらしさん」運営スタッフの皆様に改めて御礼申し上げます。
東京都現代美術館は今後も多様な展覧会を開催してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!


第8位 福田美術館
「橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー」

■ 東山会場 〈京都府〉白沙村荘 関雪記念館
前期:2023年4月19日(水)~5月30日(火)
後期:2023年6月1日(木)~7月3日(月)
■ 嵐山会場 〈京都府〉第1会場/福田美術館・第2会場/嵯峨嵐山文華館
前期:2023年4月19日(水)〜5月29日(月)
後期:2023年5月31日(水)~7月3日(月)

第8位は、福田美術館・嵯峨嵐山文華館・白沙村荘 関雪記念館の3会場にて行われました、「橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー」です。

こちらのチラシの特徴は、作品の一部である人物がトリミングされ、メインビジュアルとなっているところ。まるでポーズを決めたモデルのようにも見える、ありそうでなかった意外性のあるデザインだと思いませんか!? 現代的な雰囲気も漂いながら、橋本関雪の描く、すっと優美な線が際立ちます。

緑と青の寒色によるバイカラーや、斜体が多く使われ、はらいの繊細さが印象的な文字デザイン、区切り線など、細かなデザインはいずれもスタイリッシュ。裏面では動物も抜き出されており、見開きのチラシの左右にまたがる様子はスピード感も感じますよね。

切り抜きが斬新でオシャレ。飾りたい」「洗練された雰囲気のある日本画が、チラシでさらに現代的に昇華されているよう」「色や文字がよく調和している」といったコメントもいただきました。展示作品が持つ特徴をさらに美しく引き立てるような、新しい視点がスパイスとなった1枚です。

デザイナー・笠松晋 さん(大阪宣伝研究所)よりコメント

福田美術館さんからおちらしさんアワード入賞のお知らせを聞いて、大変嬉しく思いました。
本展のチラシデザインをするにあたり、まず橋本関雪の作品「木蘭」を一目見て、ゲームやアニメのキャラクターに見えたことから、コミックの表紙やトレーディングカードのような見え方はどうかなと思いました。
そこで人物を大きくあしらった構図で、関雪の美しい描線を感じさせる細く繊細なタイポグラフィに合わせています。結果、人物画のクオリティを活かしたシンプルで力強いデザインになったかと思います。
またこちらに選んでいただけるようなものを作っていきたいです。


第9位 国立科学博物館
特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」

■ 〈東京会場〉国立科学博物館
2023年10月28日(土)~2024年2月25日(日) ただいま開催中!!
■ 〈山形会場〉鶴岡アートフォーラム
2024年4月20日(土)~6月16日(日) 開催予定
■ 〈宮城会場〉東北歴史博物館
2024年7月6日(土)~9月23日(月) 開催予定
■ 〈長野会場〉松本市立博物館
2024年10月5日(土)~12月8日(日) 開催予定
■ 〈愛知会場〉豊田市博物館
2025年1月18日(土)~4月6日(日) 開催予定
■ 〈京都会場〉京都文化博物館
2025年4月26日(土)~7月6日(日) 開催予定
■ 〈熊本会場〉熊本市現代美術館
2025年7月19日(土)~9月21日(日) 開催予定

第9位は、2月25日(日)まで国立科学博物館にて開催されています、特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」です。

明るい黄色がパッと目に飛び込んでくる、ポップでユニークなこちらのチラシ。小さく並べられたアイコンのような写真は、和食に使われる食材と、料理の数々です。お味噌汁に、てんぷら、オムライス、ラーメン、たこ焼き、カレーライス……。これらをひとつひとつ見るだけでも「和食とは、こんなにもバラエティー豊かだったのか!!」と改めて驚きがあります。メインビジュアルから、日々の生活で身近な存在への新たな発見が得られるんですね…!

タイトルロゴの日の丸とお米がまさに日本」「食欲と興味が湧いてくる」「和食の展示というのがひと目でわかり、見ているだけで楽しい!」といったコメントも寄せられました。

二つ折り部分を開くと、今度は中面が子どものころに楽しんだ図鑑のよう!! 章ごとに展示の内容を紹介しながら、ポイントとなる展示品の写真も大きく分かりやすいサイズで掲載されています。チラシを手にした段階では、「和食」の奥深さをちょこっと摘まんだ程度かもしれませんが、すでにその魅力に心を奪われ始めているところ……。展示の入り口となるチラシデザインで、私たちの「知りたい!」という知的好奇心を大いに盛り上げてくれる1枚です。

特別展「和食」は、国立科学博物館での期間が終了したのち、2025年まで全国各地の巡回展が予定されています。このチラシから「今こそ和食を深堀りしたい」という気持ちになった方は、ぜひお楽しみに……!!

デザイナー・中出美穂 さん(ガッシュ)よりコメント

印刷や用紙に技巧を凝らした華のあるチラシが多い中、 きわめてオーソドックスな本チラシがベスト10入りしたことは、とてもうれしく、励みになります。
今後も、たくさんのみなさまから支持されるデザインを目指してまいります。


第10位 国立新美術館
「ルーヴル美術館展 愛を描く」

■ 〈東京都〉国立新美術館
2023年3月1日(水)~6月12日(月)
■ 〈京都府〉京都市京セラ美術館
2023年6月27日(火)~9月24日(日)

最後にご紹介する第10位は、国立新美術館ほかで行われました、「ルーヴル美術館展 愛を描く」です。

このチラシをひと言で表すならば、ずばり「ラブリー」!! 絵画の柔らかく豊かな風合いがピンクの文字によって引き立っていますが、その色合いもなんとも絶妙。絵画のトーンに合わせて、肉眼で見るとむしろオレンジ寄り、ペールオレンジとも言えそうなのですが、写真でもその加減が分かりますでしょうか? 天使のほっぺをモデルにしたような、まろみを帯びたカラーです。

タイトルロゴの透けたような「U」と「R」は、小さなハートマークの総柄になっており、名画の展示とはある種かけ離れた「キュート」な要素が加えられています。絵画の中では神聖な存在である天使も、デフォルメされたモチーフとしては可愛らしい姿で描かれることも多いはず。そう考えてみると、西洋美術と「可愛さ」は意外にも近いところにあるのかもしれません。

目がちかちかとするぐらいハートでいっぱいな「R」です

“ルーヴル美術館”、”西洋美術”というと、普段の生活からは距離のある、格調高いイメージを抱きますが、“日本の文化”と形容されることもある「可愛さ」のフィルターを一枚纏うことによって、私たちの心が自然とときめく仕上がりになっているのではないでしょうか? 意外性がありながらも、作品と繋がる新しい解釈のエッセンス。「作品と表題の色合いが可愛らしい」「とにかくハートフル」「ピンク色のアクセントで優しさが溢れている」といったコメントもいただきました。

福井雄介 さん(展覧会主催者)よりコメント

“愛”をテーマにした本展では、コロナ禍の影響で美術展にとって、従来メインの客層であった年配の方々の動きが鈍っている状況も考慮し、ロゴデザインや配色の段階から若い女性客をメインターゲットに据えました。コロナ禍が徐々に明けてきている中で、若い人の方が早めに動き出しており、広報宣伝アプローチは、そちらに振り切ってみようと考えました。

メインビジュアルやロゴ作成においては、従来の「ルーヴル美術館展」ではゴールドやシルバーを効果的に使用し、フォントにおいても、品格や贅沢さを訴求することも多かったですが、今回の「ルーヴル美術館展 愛を描く」においては、「LOUVRE」の文字の中にある「LOVE」の抽出や、ハートの要素やピンク色の採用を、デザインチームに提案、喧々諤々協議し、UとRのみを小さなハートマークの集合体で表した、ピンク色主体のクールでかわいいロゴが完成、本国のルーヴル美術館側にも「面白いですね」と快諾されました。そのロゴとともに、国立新美術館の皆様とも様々な会話をし、メインビジュアルには、絵の中にハートが描かれているフランソワ・ブーシェの「アモルの標的」と、愛の神アモルがプシュケにキスをする瞬間を描いたフランソワ・ジェラールの「アモルとプシュケ」を採用する形になりました。


以上、10位までにラインクインしたチラシをご紹介いたしました。2023年を彩った素晴らしいチラシの数々から、一推しの1枚を選び抜き、投票・コメントをくださった観客の皆さま。画像・記念コメントの掲載をはじめ、ご協力くださった展示主催団体の皆さま。本当にありがとうございました!!

今回3年目となった美術版のおちらしさんアワード、いかがでしたでしょうか!? ご紹介した10作品だけでも、10通りのアプローチで展示内容に寄り添い、新しい補助線を引いた形で、私たちのもとへ届けてくれているのだなあと改めて感じました。記事を書きながら、それぞれに込められた豊かなアイデアを皆さまとともに味わう時間はとても楽しかったです。

次にチラシを手にした際にも、いつもよりちょっと意識してじっくりとご覧いただき、ワクワクと心が躍ったものにはぜひ足を運んでみてほしいなと思います!

最後に、一次投票を経てノミネートされた、美術版のチラシ49点をご紹介します!

「おちらしさんアワード2023」美術版
全ノミネートチラシご紹介

第1位 下瀬美術館「開館記念展 おひなさまと近代美術 — 丸平の人形からガレ、マティスまで」
第2位 「練馬区立美術館コレクション+ 植物と歩く」
第3位 平戸オランダ商館「殿さまの洋書コレクション2 ―西洋学術と蘭学―」
第4位 森アーツセンターギャラリー「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」
第5位 もりおか歴史文化館 企画展「罪と罰 -犯罪記録に見る江戸時代の盛岡-」
第6位 TOKAS Project Vol. 6 「凪ぎ、揺らぎ、」
第7位 東京都現代美術館「デイヴィッド・ホックニー展」
第8位 福田美術館「橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー」
第9位 国立科学博物館 特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
第10位 国立新美術館「ルーヴル美術館展 愛を描く」

(以下、決戦投票ページ掲載順 ※ランダム)
宇野亞喜良 万華鏡印刷花絮 Aquirax Uno Kaleidoscope -Behind the Scene-
山梨県立美術館「ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち- 開館45周年記念」
上野の森美術館「モネ 連作の情景」
東京オペラシティ アートギャラリー「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎」
京都国立近代美術館「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」
Bunkamura「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」
東京都美術館「デ・キリコ展」
アーティゾン美術館「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」
「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」
長崎県美術館「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」
国立西洋美術館「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」
アーティゾン美術館「マリー・ローランサン ―時代をうつす眼」
東京都美術館「マティス展」
すみだ北斎美術館「北斎サムライ画伝」
島根県立美術館「テオ・ヤンセン展」
東京都写真美術館「見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol.20」
novae2022 特別賞受賞展 静花 初個展 「うつし世の爪先」
東京都現代美術館「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」
東京都庭園美術館「装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術」
東京国立博物館 特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」
東京都写真美術館 「風景論以後」
福田美術館・嵯峨嵐山文華館「ゼロからわかる江戸絵画 ーあ!若冲、お!北斎、わぁ!芦雪ー」
東京都美術館「永遠の都ローマ展」
東京オペラシティ アートギャラリー「野又 穫 Continuum 想像の語彙」
笠岡市立竹喬美術館 特別展「洋画の玉手箱 谷コレクション」
東京国立近代美術館「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
TAKEO PAPER SHOW 2023「PACKAGING―機能と笑い」
国立新美術館「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」
国立新美術館「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」
東京都現代美術館「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」
東京都美術館「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」「動物園にて ―東京都コレクションを中心に」
大阪中之島美術館「没後50年 福田平八郎」
京都国立近代美術館「開館60周年記念 小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」
SOMPO美術館「ゴッホと静物画―伝統から革新へ」
東京都写真美術館「即興 ホンマタカシ」
渋谷区立松濤美術館「エドワード・ゴーリーを巡る旅」
金沢21世紀美術館「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」
ほぼ日曜日「コンドウアキのおしごと展 作家生活20周年記念」
ポーラ ミュージアム アネックス「木村英輝 EXHIBITION ― 大人のストリートアート ―」

以上をもちまして、「おちらしさんアワード2023~美術版~」の結果発表といたします。最後までお読みいただきありがとうございました! 舞台版の「おちらしさんアワード2023」結果発表も、ご一緒にお楽しみください!!


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