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【映画留学】映画制作の授業で教えられるマインドセット

今学期アメリカの大学でとっている授業の一つに、Directing (=監督) の授業があります。この秋学期のあいだに監督として、クラスで一人当たり2本の短編を仕上げる予定です。

自分が監督じゃない時は演技をしたり、音声を担当したりして役割を交代しながら、日々忙しく取り組んでいます。

そんな中、2週間ほど前に私達はとある対話のシーンを撮影しました。対話のシーンを撮る時、カメラは移動しても2人の人物を結ぶ180度の線から向こう側を越えるべきではないという基本的な「180度ルール」がありますが、その時に監督をしていたクラスメートが突然、「180度線超えちゃう?」と提案しました。

そうするとカメラクルーの1人が「180度ルール破るのは別に良いけど、大事なのはそのルールを破るのに妥当な理由があるかどうかだよ。理由はある?」と聞きました。一応、180度線を超えたショットもいくつか撮影はしたのですが、結果的にそのショットは使われないままこのシーンは完成しました。

こうやってクラスメートが監督する作品に携わったり、自分自身が監督として作品に取り組んだりするうちに、私達が映画専攻として勉強するうちに何度も何度も刷り込まれている意識、マインドセットについて気がつきました。

それは、カメラクルーの1人が言ったように、「ひとつひとつの決断に理由を持っているだろうか?」ということです。

今学期までのあいだに、脚本の授業、編集の授業、撮影監督の授業などを履修してきましたが、思い返してみればどの授業でも必ず「全ての決断に理由を持ちなさい」と教えられてきました。

映画は、製作陣がいくつもの決断を下すことで完成します。たった3秒の映像でも、どんな光の中で、どんな構図で、どのレンズで、どの角度で、どんな色で、どんな音を使って、どのタイミングでカットしてその"ショット"を作るのか、全て製作者によって意図的に決められています。

それは、全ての小さな決断が作品の仕上がりに大きく影響することを製作者側は知っているからです。少しでも不自然なところがあったりすると、視聴者は映画の夢からすぐに覚めてしまいます。それを防ぐためにも、映画製作者は細心の注意を払いながらひとつひとつの決断を下します。

私の大学はアメリカの大学なので、私たちが学ぶ内容はハリウッド式の映画制作方法やマインドセットが元になっています。「ハリウッド式の制作方法」と聞くと、「売れる映画の法則」と解釈したり「正しい映画の作り方」と解釈したりして、邪道だと捉える人もいるようなのですが、決して映画専攻は「正しい」とか「売れる」映画の作り方にこだわりません。

私たちはもちろん、学校でハリウッド式映画制作のテクニックやルールを学びます。しかし、決して「これが正しいルールだから常にこれを守れ」というふうには教わりません。その代わり、「ルールを守ってもいいし破ってもいいけど、どちらにせよ必ず理由を持って決断を下せ」と教わります。

ルールやテクニックは、視聴者の気をそらすことなく出来る限り映像の世界に引き込むために、映画業界の先人達によって形成されてきたものです。ルールが作られたのにはそれだけの理由があります。それと同時に、もしルールを破るべき理由があるのなら、そのルールは破ってしまえばいいのです。

大事なのはルールに固執することではなく、一つ一つの決断に理由を持つことです。そのため、私たち映画学部生は自分たちの作品に取り組む際にも、常に「何故このカメラアングルにするべきなのか」「何故このセリフを省くのか」「何故このレンズを使うのか」など、全ての「何故」に答えられる状態で制作する練習をしている、と言うことができると思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。それではまた!

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