リン

現在アメリカの大学に正規留学しながら、映画制作の勉強をしています。映画制作や、脚本執筆…

リン

現在アメリカの大学に正規留学しながら、映画制作の勉強をしています。映画制作や、脚本執筆について学んだことや気づいたことなどをシェアしています。

最近の記事

AIアートについて、映画大学に留学中の私が思うこと

こんにちは!アメリカの大学に正規留学し、映画制作を専攻しているリンです。今は夏休み中なのですが、来学期からは4年生として卒業制作の撮影が始まる予定なのでワクワクドキドキしています。 さて、突然ですが、今年の春学期(2023年 1月〜5月)から、授業である話題が頻繁に持ち上がるようになりました。 それは、「AIは私たちクリエイターの仕事にどのような影響を与えるか?」というものです。 これが最も頻繁に話題になったのは、脚本の授業でのことでした。 映画制作のプロセスの中でも

    • 【編集/映画の瞬き】ウォルター・マーチによる「関連痛」の話

      こんにちは!アメリカの大学で映画制作の勉強をしている者です。2022年秋学期はとても学びが多かったのですが、編集の授業をとっていたのにも関わらずその授業のことを全く書き留めていなかったことに気がついたので、今日もまたnoteを書くことにしました。 普段カメラの使い方や脚本の書き方に関する授業をとる時、どんな教科書を読むことになるかは教授によって異なるのが普通なのですが、編集に関する話になると大抵、どの教授にもウォルター・マーチの「映画の瞬き(In the Blink of

      • 【映画留学】 映画撮影の勉強をしていて結局、一番大切だと感じること。

        こんにちは!アメリカの大学で映画制作の勉強をしている者です。今週をもちまして、2022年秋学期が正式に終了いたしました👏 今学期も、非常に学びの多く充実した日々を過ごすことができました。教授やクラスメート、私を支えてくれた友人や家族には感謝してもしきれません。 今学期は映画の授業を4つ履修していたのですが、そのうち最も学びが多かったのがDirecting (監督)の授業でした。この授業の期末課題は、一人もしくは二人当たり一本ずつ監督として4〜5分の短編映画を作るというもの

        • 【映画制作】 女性が機材を運ぼうとしている時に、男性は手助けするべきなのか

          こんにちは! アメリカの大学で映画制作を学んでいるリンです。 私はたまに、耳が暇な時に"Team Deakins Podcast"というポッドキャスト番組を聴くことがあります。司会はアカデミー賞撮影賞を2回受賞したことのあるベテラン撮影監督ロジャー・ディーキンスと、その妻でありスクリプト・スーパーバイザーとして働くジェームス・ディーキンスです。 このポッドキャストでは毎回ゲストが招かれ、ディーキンス夫妻がゲストにインタビューをするという形で番組は構成されています。 こ

        AIアートについて、映画大学に留学中の私が思うこと

        • 【編集/映画の瞬き】ウォルター・マーチによる「関連痛」の話

        • 【映画留学】 映画撮影の勉強をしていて結局、一番大切だと感じること。

        • 【映画制作】 女性が機材を運ぼうとしている時に、男性は手助けするべきなのか

          【初めての共同脚本】 文化の違い、視点の違い、ぶつかり合い。

          こんにちは!映画専攻としてアメリカの大学で留学中の者です。 今はDirecting(監督)の授業をとっている最中で、年末が近づくにつれて学期末課題に取り組み始めています。 この学期末課題では基本的に一人当たり一本ずつ監督して作品を仕上げるのですが、もし誰かと共同で監督したければそれでも良いということだったので、私はクラスメートとペアになって共同で映画を監督することにしました。 私はもともと自分一人で何か作るつもりでしたが、この学期末課題が始まる直前に仲の良いクラスメート

          【初めての共同脚本】 文化の違い、視点の違い、ぶつかり合い。

          【映画留学】映画制作の授業で教えられるマインドセット

          今学期アメリカの大学でとっている授業の一つに、Directing (=監督) の授業があります。この秋学期のあいだに監督として、クラスで一人当たり2本の短編を仕上げる予定です。 自分が監督じゃない時は演技をしたり、音声を担当したりして役割を交代しながら、日々忙しく取り組んでいます。 そんな中、2週間ほど前に私達はとある対話のシーンを撮影しました。対話のシーンを撮る時、カメラは移動しても2人の人物を結ぶ180度の線から向こう側を越えるべきではないという基本的な「180度ルー

          【映画留学】映画制作の授業で教えられるマインドセット

          【脚本の授業】「最も個人的な物語こそ、最もオリジナルである」というはなし

          私がアメリカの大学で脚本の授業を取っていた、前学期のことです。 授業の終わりに、教授が言いました。 「来週、それぞれ自分の宝物を持って来て欲しい。その宝物を不透明の袋に入れて、自分の名前の書いた紙切れも一緒に入れて教卓に置いてね。」 なぜ教授がそんなことを言ったのかよくわからないまま、次の週には生徒みんな、言われた通りに宝物を持ってきました。それぞれが持ってきたアイテムは指輪や絵、本、ボールなど様々です。最初は袋に包まれているので、どれが誰のものかはわかりません。 そし

          【脚本の授業】「最も個人的な物語こそ、最もオリジナルである」というはなし

          【アメリカ留学】映画専攻として学べること

          この秋、アメリカの大学で3年生になりました。おかげさまで一般教養科目も終わり、時間割も本格的に映画専攻としての授業ばかりになってきました。 そんな中、「映画制作についてアメリカで学ぶ」ということにおいて、想像していた通りだったことや予想外だったことがいくつかありました。 そのため、アメリカで映画制作を学ぶというのは具体的に何を学ぶことなのか、自分の言葉で文章に残しておこうと思い、この投稿をすることにしました。 ※あくまで私個人の経験から話すことなので、全ての大学で同じだ

          【アメリカ留学】映画専攻として学べること

          映画撮影の授業で、絵コンテの描き方について学んだこと

          この秋から、大学で映画撮影(cinematography)の授業が始まりました。授業の内容としては、照明、カメラの使い方、アングル、ショットサイズの選択、被写界深度、ズームの効果などを一つずつ学び、それぞれの要素がどのようにして映画のストーリーや画面のムードに影響するのかを勉強しています。 そんな中、今学期が始まって最初に取り組んだ制作課題が絵コンテでした。 絵コンテは、脚本家の頭の中で作られた世界を可視化し、スタッフやポストプロダクションチームとコミュニケーションをとる

          映画撮影の授業で、絵コンテの描き方について学んだこと

          ハリウッド式脚本フォーマットの基本

          これまでは脚本の演出についてまとめてきましたが、今回は「ハリウッドの脚本ではどこに何が書かれているのか?」というフォーマットについてです。 ハリウッド式フォーマットのルールは、字体から余白のサイズに関するものまでたくさんあります。 その全てを紹介することは難しいので、今回は「これさえ押さえれば基本はわかるはず!」という最もベーシックな部分をご紹介します。 はじめに: フォーマットにこだわる理由一貫したフォーマットを使うのは、読み手に伝わる脚本を書くためには欠かせないこと

          ハリウッド式脚本フォーマットの基本

          脚本の授業で、キャラクターの心情表現について学んだこと

          映画というビジュアル・メディアにおいて製作者が最も悩むことの一つが、どうやって登場人物の内面を描くかです。 今回は、私が脚本の授業で心情表現について教わったことを振り返ってみます。 内的葛藤と外的葛藤 以下の記事で、「主人公とは欲求を持っているものの、目の前に壁が立ちはだかって苦しむキャラクターだ」というお話をしました。 言い換えれば、多くの物語の主人公は葛藤を抱えています。 そしてその葛藤は、内的なものと外的なものに分けることができます。 内的葛藤=キャラクター

          脚本の授業で、キャラクターの心情表現について学んだこと

          ハリウッド式脚本術: 長編映画の構造

          今回の記事は前回の続きとなっています。そのため、以下の記事を読んでからの方がわかりやすいと思います。 さて、前回はいかにシークエンスを元に物語が構成されているのかについてお話ししました。 今回は8つあるシークエンスのうち、ひとつひとつがどんな役割を持っているのか、より具体的にご紹介します。 8つのシークエンスの基本構成 まずは、前回もお見せした下の図が長編映画の全体像です。 それでは、各シークエンスの一般的な役割をざっくりと書き出してみます。 <シークエンス1>

          ハリウッド式脚本術: 長編映画の構造

          ハリウッド式脚本術:長編映画は、複数の短編映画からできている

          長編映画の脚本を書くときに脚本家の腕が試されるポイントは、約2時間ものあいだ、いかに絶え間なく観客を物語に惹きつけておけるかです。 10分くらいの短編なら、そこまでアウトラインを作らずに完成させることができるかもしれません。しかし、長編作品を作るとなるとより構造的なアプローチが必要になります。 そのため、多くの脚本家は物語を複数のブロックに分けて構成します。そして、そのひとつひとつのブロックだけを見ても面白いものであることが理想です。 物語を複数のブロックに分けて構造を

          ハリウッド式脚本術:長編映画は、複数の短編映画からできている

          映画の脚本を書き始める前に決める、三つの要素

          エンタメとしての物語を作る時に脚本家が目指す最も一般的な目標とは、観客を映画の途中で飽きさせずに話に没頭させることだと思います。 映画を上映している約2時間ものあいだ、観客をずっと席に座らせておくために必要なものとは何でしょうか。 映画でもドラマでも漫画でも、面白過ぎて続きが気になって夜も眠れないものから、始まって10分で気が散ってしまうものまで様々です。そのうち、ほとんどの面白い映画が持っている三つの基本的要素について今回は説明していきます。 面白い物語に不可欠な三つ

          映画の脚本を書き始める前に決める、三つの要素