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祖母と草餅と凸凹のボウルの思い出

まだ、私がまだ小学校低学年の時だったと思います。

ちょうど今頃の時期に、父方の祖母が地方から遊びに来てくれました。


両親が仕事をしていたので、学校から帰ると祖母と妹と私の3人だけ。

祖母はおおらかな人で、子供と遊ぶのが上手でした。おはじきやビー玉、トランプなどで遊んでもらったり、一緒に散歩をしたりしました。


当時、私の家の周りは田んぼと畑、山と川に囲まれていて、あぜ道や土手にはセリやヨモギなどの草花がいっぱい生えていました。

祖母は薬草や山菜採りが大好きな人でしたので、散歩の途中でヨモギの新芽を見つけると、せっせと摘み始めました。

見ていると楽しそうだったので、私も手伝って一緒に集めました。

かなりの量のヨモギを収穫したところで、『草餅を作ろうか?』と、祖母は私に提案してきました。

自分が摘んだ草でお団子を作るなんて、なんだか嬉しくて、ワクワクして、妙に興奮したことを覚えています。

急いで家に戻って、大きなお鍋にお湯を沸かして、さっそく洗ったヨモギを茹でました。

重曹を使うと良かったのですが、あいにくこの時は用意が無かったので、塩で茹でた記憶があります。新芽だったので、柔らかく、エグさも殆どありませんでした。

上新粉に熱湯を入れて捏ねると柔らかいお餅のようになりました。

祖母はそれを、お団子くらいの大きさにちぎって、蒸し器に並べ蒸し始めました。

蒸している間に、先ほど茹で上げたヨモギを包丁で小さく刻んだ後、すり鉢に入れて、ゴリゴリとすりこぎ棒で擦りました。(この時に少し固そうな部分は取り除くと食感が良くなります)

しばらくして蒸し上がった上新粉のお団子を大きめのボウルに入れて、すりこぎ棒で潰しながら捏ね始めました。

少し上新粉が柔らかくなったところで、ヨモギを投入!

初めのうちは熱いので、すりこぎ棒を使いながら捏ねて、少し冷めたところで、今度は手を使ってヨモギが均一になるまで捏ね続けました。

私もお手伝いをしたかったのですが、子供の手では熱すぎて触れることができません。なので、餅つきのように、エイ、エイッ!と、すりこぎ棒で力任せに上新粉を突いていました。


祖母と二人で一生懸命、捏ねたり、突いたりして草餅が出来上がりました。

もちろん、私は大喜び!!!


しかし、喜びはつかの間、ボウルから草餅を取り出したら・・・


母が大切にしていたボウルが凸凹になっていたのです!!!


そうなんです、私がすりこぎ棒でボコボコ突いたので、ボウルが凹んでしまったのです。

後で祖母と一緒に謝りましたが、母はとても残念そうでした。


母には大変申し分け無かったのですが、この時の草餅の味は格別!

きな粉をつけて食べたのですが、その味を私は未だに忘れられません。


同じ味を求めて、今までにも様々な草団子や草餅を食べてみましたが、同じような味には、なかなか巡り会うことができません。


ただ一度だけ、同じくらいに美味しい草餅を頂いたことがあります。

もう随分前のことですが、母がご近所の方から手作りの草餅をいただきました。それが子供の時に食べた草餅の味にとっても似ていたのです。

もちろん、とっても美味しかった~!


今では新鮮なヨモギがなかなか手に入らないので、乾燥ヨモギを使って何回かつくってみたのですが、やはり味が違うのですよね・・・


祖母とつくった草餅を思い出す度に凸凹のボウルの思い出も蘇り、心の奥がチクッと痛くなってしまいますが・・・(笑)

もう一度あの、上新粉でつくった草餅が食べたいな~。



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