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メッシとファン・ハールの確執 【カタールW杯準々決勝|アルゼンチンvsオランダ】

カタールW杯準々決勝 オランダvsアルゼンチン

監督、コーチ、PK戦でもイエローカードが乱れ飛び、W杯新記録となる合計18枚。試合終了間際にオランダが2点差を追いつく劇的な同点弾を含め、選手同様ワタクシも激しく興奮した試合になりました。

オランダの3-4-1-2に対し、今大会ずっと4バックで来ていたアルゼンチンが初めて3-5-2を採用。中盤で完全な1vs1のマッチアップを作り、オランダの強力なウィングバックによる攻撃を封じる布陣です。

この作戦が功を奏し、お互い効果的なビルドアップができず膠着した試合展開に。

システム・戦術で膠着した際に事態を打開するのはやはり突出した個です。バイタルエリアでボールを受けたメッシが得意の中央に切り込むドリブルからのスルーパスでアルゼンチンが先制します。

この得点、メッシの突出した個だけでなく、システムの枠に収まらないメッシのポジショニングが生んだ得点でもあります。

メッシは守備時は最前線でフラフラ歩いてますし、攻撃時は気まぐれにビルドアップをしに中盤まで戻ってしまったりするので、最適なマーカーを決めにくいんです。

オランダも前半途中からようやく3バックの一角のアケが対応すると決め、下がったメッシにアケが引っ張られるという局面が発生し始めます。

先制点はその歪みを利用したものでした。

最終ラインのアケがメッシに引きづられて出ていったスペースにモリーナが走り込み、そこにメッシが神業の股抜きスルーパスを通す事で決定機を生み出しました。

メッシという技術的にも戦術的にも規格外の存在が、規律を重んじるファン・ハール率いるオランダのゴールをこじ開けた象徴的なシーンだったと言えるでしょう。

その後、ダンフリースのファウルで得たPKをメッシが決めてオランダを突き放します。

ゴール後、メッシはオランダベンチに向かってトッポ・ジージョポーズを見せつけました。

これには複数の伏線があります。

もちろん試合が荒れていたというのもありますが、試合前日にファン・ハールがメッシ対策に対して質問された際

「どうすれば彼を止められるかの答えを出すのはそんなに難しいことではない」

と発言。これにメッシは軽視されたと憤っていたのです。

またファン・ハールは以前にも古巣のバルセロナに所属するメッシに対してコメントを求められた際

「いつもとてもクリエイティブだが、もっとチームのためにプレーしなければならない。彼は自分のことを考えすぎる。選手の偉大さは、チームのためにプレーするところにある」

とコメント。2人の間には何かと因縁があるんです。

またメッシの長年の相棒ディ・マリアがレアル・マドリーからマンUへ移籍した際の監督がファン・ハールでした。

そこでファン・ハールに度々ミスを叱責されパフォーマンスを落としていったディ・マリアはわずか1年でマンUを退団。PSGへ移籍します。

その時を振り返ってディ・マリアはこう発言しています。

「マンチェスターでの僕の問題は監督だった。ファン・ハールは僕のキャリアの中で最悪だった」

ここにも確執があったのです。

そして更に過去を振り返ります。

2002年、当時アルゼンチンのアイドルだったフアン・ロマン・リケルメがファン・ハール率いるバルセロナに移籍します。

リケルメは組織的には全く貢献しないものの長短自在のパスを操り、試合を決定づけるプレーヤーで、最後のファンタジスタと呼ばれていた選手でした。

そんな選手が規律を重んじ、全選手にシステムや戦術の遂行を求めるファン・ハールと相性がいい訳がありません。出場機会はほとんど与えられずに干され、退団していったのです。

しかし、移籍先のビジャレアルでは大活躍。クラブを史上最高のリーグ3位まで引き上げ、自らのクオリティを証明します。

これがファン・ハールがリケルメを不当に軽視したという印象を更に大きくさせました。

また今回のアルゼンチン代表のアシスタントコーチ陣はアイマール、サムエル、アジャラというアルゼンチンのレジェンド達です。彼らはリケルメと同じ時代を生きた世代です。

このように数多ある因縁がメッシによるリケルメのゴール後のパフォーマンスであるトッポ・ジージョポーズを生みました。

サッカーに歴史あり。

もちろん荒れた試合は良くないですし、パレデスのオランダベンチにボールを蹴り込む非紳士的プレーは制裁ものです。

ですが、こういう背景があったからこういう試合になったんだというのが理解できると色々と考えさせられます。

進撃の巨人で描かれたエルディア帝国、マーレ国のように、どちらにも正義があったのだと。

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