日本vsクロアチアの一戦を振り返る【カタールW杯16強】
「夢を見たわ」
ドイツ・スペインという強豪国が同居する死のグループを1位通過し、ワールドカップでは何かと縁があるクロアチアとの8強進出を賭けての闘いを振り返ります。
日本はいつも通り3-4-2-1のフォーメーション。守備時は両サイドバックの長友・伊東がDFラインに入り、5-4-1ブロックを形成する、グループリーグを勝ち抜いた必勝パターンです。
ただ今回のクロアチアはドイツ・スペインと違い、全選手が連動した激しいプレッシングでボール奪取にきたり、圧倒的な技巧でボールを回したりする訳でもなく、日本が割とボールを保持する時間がありました。
逆にこれが日本にとっては手詰まりの状況を生み出します。なぜなら日本には世界を相手に通用する攻撃手段として、前線からのプレッシングを起点とし、伊東・三苫のクラック2人を経由するカウンターしか持ってないんです。
つまり後方からのビルドアップで点を取るオプションがありません。それはコスタリカ戦でも証明しています。
マイボールになると逆に攻め手がなく、クロアチア陣内にてボールを奪われると、上がったDFラインの裏を狙ってパスを通され、大ピンチみたいなシーンが何度かありました。
今大会ではオランダがポゼッションサッカーを捨て、相手にボールを持たせるものの、中盤をゾーンではなくマンマークで徹底的にケアする事でボール奪取率を高め、カウンター攻撃回数を増やすという高等戦術を採用していますが、クロアチアはオランダと違い、戦略的にやっている訳ではありません。ナチュラルに日本もポゼッションできてしまっています。
こりゃ困ったぞと。これが90分続いたらどこかで失点して、夢の8強への道が絶たれてしまう。
今大会、珍しく戦術変更が当たってる森保監督はハーフタイムでどんな指示を出すんだろう?と考え始めていた前半終了間際の43分、ショートコーナーから堂安→吉田→前田とボールが渡り、先制点を奪います。
ビルドアップから点が取れないのであれば、セットプレーが唯一の希望ですが、そのセットプレーのカオスの中で奇跡の先制点です。
今大会の日本代表はマジで持っています。
普段から何事にも過大な期待をしないように心がけているワタクシですが、これには「え?いけるの?いっちゃうの?」と浮足立ってしまいました。
グループリーグでは全試合ハーフタイムで選手交代や戦術変更を行っている森保監督ですが、上手く行っているときはそのままというセオリー通り、交代なしで後半がスタート。
ですが、そこはクロアチア。このまま終わってはくれません。
後半58分、ロヴレンからのファーへのクロスに伊東と冨安の間にポジショニングしていたペリシッチが完璧なヘディングで合わせてゴール隅に叩き込みます。
あの距離からあの破壊力とコースでヘディングされたらもうお手上げです。
惜しむらくは滞空時間が長めのロングクロスだったので、DFが体を寄せて完璧な体勢でのヘディングを防ぐべきなんですが、あの時のペリシッチ担当は伊東です。
本職がアタッカーの選手をあのポジションで使っていたリスクが顕在化しただけで、伊東に否がある訳ではありません。加えてペリシッチがとにかく凄かっただけです。
その後、森保監督は64分に
長友→三苫
前田→浅野
とついに切り札・三苫を投入します。
すると、すかさずクロアチアは対三苫用に準備していたパシャリッチを右サイドに投入。対戦相手に対策用の選手交代をさせる三苫さんかっけーっす。完全に大物扱いです。
その後は75分に
鎌田→酒井
既に膝に手をついて息をしていた伊東との交代かと思いきや、鎌田との交代。鎌田のポジションに伊東を上げて、右サイドバックに酒井が入ります。
伊東の酷使です。
ですが、森保監督の気持ちも分かります。繰り返しますが日本には彼と三苫しかいないんですから...
ディフェンスから開放された伊東は一息つけたのか、その後も献身的に走り回ります。彼の驚異的なスタミナと精神力には脱帽です。
続いて87分
堂安→南野
という選手交代。鎌田の後に左のインサイドハーフを担当していた伊東を、交代する堂安が担当していた右へ配置転換し、左に南野を入れます。
この伊東の抜群のポリバレント性も彼を残しておきたかった理由の一つでしょう。
投入され、一番フレッシュなはずの南野はその後、空気と化し、全く貢献できず。リバプール移籍前にあれだけ輝いていた南野はもう見る影もありません。
この一連の交代を見て、本当に残念だったのは久保が体調不良でベンチ外だったことでしょうか。
彼が前半を無難にこなしてくれていれば、南野ではなく今大会当たっている堂安を後半から入れられたのに...
このように追加点奪取を目指してテコ入れを続けますが、そのまま試合はPK戦へ。
ここでPK戦前に選手達同士でキッカーの順番を決めているのを目の当たりにし、決めてなかったんかーい!と、ズッコケてしまいました。
こりゃ勝てんと。
結果はご存知の通り、南野・三苫・吉田がPKを外し1-3で無念の敗戦。
「PK戦は運」と片付ける事は簡単ですが、最低限相手キーパー及びキッカーのスカウティングや実績に基づいたキッカー選定、そしてPKの精度を上げる練習を積み重ねた上での話です。
しかも日本代表メンバーは以前と比べると海外クラブで活躍する選手が飛躍的に増えましたが、各クラブでPKを任されるほど大黒柱になっている選手はほとんどいません。経験がある選手がいないので、本当に入念な事前準備が必要なポイントでした。
選手達は本当に死力を尽くして頑張っていましたが、8強を目指すという割に、キッカーすら決めていない詰めの甘さが最後に出てしまった点は本当に無念です。
このPK戦は負けるべくして負けたと言っても過言ではないでしょう。
でもいいんです。
覚えていますか?
日本はドイツとスペインに勝ったので既に優勝してるんです。決勝トーナメントはおまけなんです。この結果は笑って受け入れる事にします。
最後に過去7回のワールドカップ出場の中でも最も大きな夢を見せてくれた日本代表のメンバーには惜しみない感謝を伝えたいと思います。
本当にありがとうございますた。
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