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バイクライダーインタビュー後編:バイク観

本記事は、Neoriders Project主催のバイクアート展の展示作品の一つを再構成したものです。本作品では、インタビューアの鈴木さんと、バイクライダーの白鳥さん・嶋さんがバイクに関する対話が広げられます。最後までぜひお楽しみください。


前編はこちら



3枚目_キャプションつき


バイク観:白鳥さん


ー(白)僕はバイクに絶対後ろに人を乗せない主義なんです。僕の考えるバイクの良さは自由さなんです。社会とか色んなものから自由になって、ただ自分一人になって走ることができるっていうところに、バイクの良さがあると思ってます。だから反社会的な性格を帯びてくることもわかる。

ー(鈴)暴走族とか、まさにですか?
ー(白)バイクらしさだと思うから。反社会的な性質の表れではあると思います。当然交通ルールは守りますけど、束縛から自由になれる。だから、僕は一人で走りたくて、誰かを乗せて、みたいな思い出があるわけではないんです。

他のライダーと一緒に走ることはあります。インカムでつないで感動を共有するのとか、やってみていいなとは思いました。
ー(鈴)自分一人で乗って、忘れられない思い出ってありますか?

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ー(白)具体的にこの体験って限定するっていうよりは、バイクがある生活っていうところかなって思います。コロナ禍で静岡にずっといて、とにかく毎日バイクに乗ってたんです。この景色を見ようとか、バイク乗るぞって意気込むとかではなく、ただバイクに乗りたいから乗るっていう。飯食うときも寝るときもバイクのこと考えて、精神的にともにあったんですよね。あの時間は自分にとって特別でした。とにかく自由だったなって。いま東京に帰ってきて、バイク乗るとなると、意気込む必要があるし、東京だと計画立てないわけにはいかないし。「この体験」っていうよりは、「あの自分」。

東北行って楽しかったとかあるんですけど、そこではいろんなことを経験して楽しかったです。バイクで走るだけじゃなくて生活をしてたので。初日に大雨の中で、ケチって半袖で安物のレインコート着て長野の山奥走ってたんですけど、自分でも考えられないぐらいガタガタ震えてました笑。

それでやっと温泉見つけて温まって回復して、さあもうひと頑張りして走ろうと思ったらガソリン切れてて笑。もう気が動転してて忘れてたんですよね。リザーブタンクでガス欠の恐怖と戦いながら、山の中で誰もいないきりの立ち込めて視界の悪い山道を寒い中で走ったんです。大声で歌いながら走りましたもん。30キロぐらい走って、なんとかガソリンスタンド見つけたときは感動しましたね。ひと目をはばからずずっと笑ってました。

ー(鈴)砂漠でオアシス見つけたみたいな笑。
ー(白)本当にそんな感覚です。ガス欠して、あの山の中で一日過ごすのはムリだったと思います。あと、荷物落としてしまったりとか。本当に色々ありました笑。


4枚目_キャプションつき


バイク観:嶋鉄平


ー(嶋)実は僕もひとりで走るのが好きで。っていうか、バイクに乗っている人って、一人になりたいから乗ってるんです。

忘れたいんですよ。課題とか人間関係とか。だから、僕も誰かと一緒にみたいなのはあんまりしない。レースは別ですよ。普通レースに参加するときは、競技用で公道は走れないし、壊れたら帰れなくなるから、トラックとかバンにバイク乗っけて参加するんですけど。

僕は自分で走っていくんです。現地でミラー外して、ライトのところにテープ貼って。最近参加したレースで、そんなことしてるの僕だけでした。「君、自走で来てるの?」って驚かれます笑。

ー(鈴)バイク乗ってる人同士で、仲間意識みたいなものってあるんですかね?
ー(白)もう話題があるので、知らないおっちゃんとかめっちゃ話しかけてきますよ。
大学生として、バイク乗ってる間に、いろんなことをしたいんですよね。オンロード走るし、旅行行くし、キャンプもするし、山の中も走るし。
ー(鈴)バイクの可能性を突き詰めてますよね。なんでもできるバイクを選ばれてますし。
ー(白)バイクって自己表現だっていう話があったじゃないですか。俺はこういう人間、こういう乗り方をするぜって決めるから、バイク選んだ瞬間に決まるんですよね。
ー(鈴)人生みたいですね...

ー(白)ホントは、私は嶋さんと同じ車種であるセローを買いたかったんです。見積もりまで作ってもらってたけど、ゼファーを選んだ瞬間に、なんかいいやってなっちゃったんです。
ー(鈴)進路選択に似た何かがありますね。嶋さんみたいな人生の選択をされる方もいらっしゃいますよね。全部得意になっていくみたいな。僕は星野源が好きなんですけど、歌もお芝居も文筆も全部やっていくっていう、生き方。

夏山中湖SRserow

ー(嶋)僕は大好きな言葉があって、「目的地に行くのが目的じゃない」っていう。走ることがメイン。「どこどこに行こうって言うのは口実ですからね」っていう。ちょっとコンビニ行ってくるって一時間走るみたいな。
ー(鈴)すごいわかる感覚かもしれないです。僕は、駅から家まで行きと帰りで同じ道を歩かないようにしたり、旅でも目的地以外何も決めずにそのばその場の出会いを楽しむことが多いんですけど。バイクすごく合うかもしれないです。乗ってみたい。
ー(嶋)僕は日常にバイクっていう非日常を入れていく感じなんですよね。ただ大学に通うっていう日常が、ヘルメットつけてアクセル握ってバイクに乗るだけで非日常に変わって、日々が鮮やかになって楽しいなって思っています。
ー(白)もう、やったらくせになるものなんだと思います笑。僕なんかは、電車に乗ってると社会からの抑圧を感じちゃってだめなんです。だからバイクで解放されたい。自分が学問として哲学をやっているのもあるかもしれない。
ー(鈴)精神的な疼きを解消してくれるものとしてのバイクっていうのは、すごく魅力的なものに感じます。人によっては、例えば行き過ぎた思想に傾倒したり、人を傷つけたりしてしまう人がいる中で、バイクの美しさに心奪われて、それに乗って、思い出が増えていってって。
ー(白)こんなこといってますけど、交通ルールはしっかり守ってますからね笑。



バイクはだいたいが一人乗りです。一人で走る。まるでバイクは人生のようなところがあります。どんなバイクに乗るか一度決めれば、そこでやっていく必要がある。バイクの種類をとってみても、装飾や衣服やヘルメットも、全部自分がどんなバイクに乗りたいかの表現なんです。

そんな風に人生を送ることができたら、なんて素敵なのでしょうか。なんて幸せなのでしょうか。自分がどんな人生を送りたいかを、自分らしく人生を歩むことで表現する。雨の日に何にも守られずとも雨に打たれ走る。風の日に向かい風の中でアクセルを捻る。

バイクに乗ることの意味や喜びは、実際にバイクに乗ってみないとわからないことばかりだと思います。自分の生きたいと思う人生を歩もうとするあなたが、バイクを知るために、バイクに跨るようなきっかけになる、そのようなインタビューであったなら幸せです。


寄稿(文・画像):鈴木康之亮


鈴木康之亮「バイクライダーインタビュー」

Q1:どんな作品ですか?
ライダーさんに、インタビューした内容を書き起こして、ライダーさんが実際に撮られたバイクの写真と合わせて、アート作品にしました。バイクに乗ってたどり着く風景と、ライダーさんの思い出や考え方を味わっていただける作品になりました。

Q2:どうやって作りましたか?
初対面の二人のライダーさんにインタビューを行って、バイクに乗るきっかけから、バイクが好きな理由、バイクに乗った思い出などを根掘り葉掘り聞いていきました。結果、バイクに乗っていない人が、彼らの思い出を追想できるような作品になったと思います。

Q3:作っていて面白かったこと、難しかったことは?
僕自身がバイクに乗ったことがない中で、自分がバイクに乗りたいと思うような時間を作って、それを鑑賞者のみなさんに伝え広げるような作品にしたいと思って制作しました。狙い通り、多くの方が「バイクに乗りたい」とおっしゃってくださって、創作の面白さを強く感じました。製作には始めて使うソフトウェアなどもあり、少し苦戦しましたが、とてもいい経験になりました。

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