風をつかんだ日の丸企業「ルネサス」って何者?②
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司会:1年くらい前からずーっと、半導体が足りない足りないって言われてますよね。ふつうは時間が経てば、供給が足りてくるものなのに。一体何が妨げになっているのですか?
柴田社長(ルネサス):全体として、サプライチェーン(供給網)がちょっとずつ乱れている状態が続いています。
半導体全体としての供給量は比較的増えていますし、在庫の量も1年前に比べて増えているんです。でもどこかに1つでも足りない部品があると、完成品としては作れない。その状況が続いているせいですね。
司会:去年3月、半導体不足のなか、主力生産拠点である茨城県ひたちなか市の那珂工場で火災が発生。一部生産が停止しましたね。どんな教訓がありましたか?
柴田:あってはいけないことは、残念ながら起きるということ。起きた場合の対処をいかに速やかにして、インパクトを小さくして、元に戻していくか。ここにまだ工夫の余地があるなと思うに至りました。
司会:世界的に経済安全保障の考え方が強まって、今までと同じやり方でやっていけない部分も出てくると思います。それはルネサスにとってピンチですか? それともチャンスでしょうか?
柴田:どちらもでしょうね。この変化をどう味方につけることができるかでチャンスにもなりますし。何もせず座していれば、ピンチになるでしょう。私たちは米国の会社でも中国の会社でもない、ある意味第三の立場ですから、その強みを最大限に発揮できるよう、環境の変化を追い風にしていきたいです。
司会:かつては世界を席巻した日の丸半導体。世界シェアの50%を占めていましたが、近年は9%にまで低下しました。日本の半導体産業が失敗した理由はなんだと思いますか?
柴田:真剣さが足りなかったのではないでしょうか。世界シェア50%を持っていた時に、将来の投資のための原資を自分たちで稼がなかった。10年先、20年先を自分たちで主体的につくっていこうと真剣に取り組んでいたならば、もっと違うことができたはずだし、そうすべきだったと思います。
司会:日本発の半導体メーカーとして、もっと大きくなっていきたいという思いがある?
柴田:日本に半導体の一大メーカーがなくなっていいわけがありません。日本の会社として、かつグローバルな会社として伸びていく余地は大きい。しっかりと成長を実現していきたいです。
司会:ルネサスは、2010年に日立・三菱電機・NECが統合してできた会社です。車載用マイコンでは世界1位。とはいえ半導体産業において日本が強かった時代とは違いますよね。東大名誉教授の伊藤元重さん、いかがでしょうか。
伊藤:50%から9%にシェアは下がりましたが、実は生産量は変わってないんですよ。むしろ他の国がわーっと増えた。要するに時代に流れについていけなかったんでしょうね。だから今、EV車など次の時代を制するようなものに、どこまで攻めて行けるかだと思います。
※TBSの番組の一部をテキスト化し、編集したものです。