静かな呼吸
砂漠の上で身を投げ出して寝転ぶとき
このお洋服高かったな、とか、
ヘアアレンジが崩れるかな、
なんてことは考えない。
普段の自分が持っている価値観は
遠いどこかに流されて、
ただ少しでも
この自然と一体になりたいと願っている。
それは日常の生活では感じられないような悦びで
生まれたままの姿に戻れるような感覚、
本能を揺さぶられる体験だ。
わたしにとって土地や自然は
背景ではなく本質そのもの。
文化は人の手によって生まれるのではなく
土地の気候や地形、気温や風土によって育まれる。
わたしたち人間も、
土地が作り上げた文化の一つにすぎない。
今目に見える全てを作り上げたこの土地の
その静かな呼吸を耳を澄まして聞くとき
同じように普段は意識しない
自分の呼吸も聞こえてくることがある。
自分の生き方について
ふいに問われるようなその一瞬
わたしにとって本当に大切なものが垣間見える気がする。
忙しない東京の中で、
その一瞬を感じられる景色を
絵の前に立つあなたに、届けられたらと願う。
根ノ木あさみ
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