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Amazonの内幕を語る(1)

面白い記事を見つけたので、ご紹介したい。

私の記事「Amazonレビューの全転載を終えて。」に「スキ」を付けて下ったので、どんな方かとホームを覗いてみると、元Amazon勤務の「売れるアマゾン出品コンサル@元アマゾン社員が本気でコンサル」という方だった。
Amazon勤務の経験を生かして、Amazonへの出品が、どうすればより売れるようになるかをアドバイスしている、ビジネスコンサルタントさんである。

この方の「アマゾンでユーザーレビューを良くするための対策」という記事は、Amazonに出品して品物を売る者の立場から「いかにすれば、好意的なレビューを書いてもらえるか」等について助言したものである。

『ECにおける購買行動でユーザーレビューの重要度は増しています。
口コミによる購入経験は9割以上を占めています。

アマゾンではその傾向は特に顕著です。
ほとんどの出品者やメーカーの皆様はアマゾンでのユーザーレビューの対策に苦労をしているのではないでしょうか。

いくらSEO対策に気を使っていくら広告にお金をかけても、結局ユーザーレビューが悪ければ、バッドイメージを拡散するだけですからね。
アマゾンで売上を上げるためには、ユーザーレビューへの対策はマストと言えます。

とは言え、悪いレビューがついてしまうことも避けられないと思います。
悪いレビューがつくと精神的にもショックを受けると思いますが、むしろ悪いレビューが全く無いのも不自然なので、悪いレビューも一つの事実として受け止るくらいの心持ちでいたほうが良いでしょう。』

とあり、出品者の心理を正しく紹介しているが、これは私の前記記事での、

『Amazonサイト上に掲載されている「商品」に対する「批判的なレビュー」は、批判された「メーカー(作者・作社)」にとって不都合でもあれば不愉快なものであるというのは無論、それをサイト上で売っているAmazonにとっても、基本的には同じことである。
ただし、Amazonの場合は「肯定評価も否定評価も、両論併記で差別なく掲載して、皆様に正しい情報提供いたします」という「タテマエ」を採っているから、「否定評価」だからといって、すべて載せないという訳ではない。ある程度は「否定的レビュー」も必要なのだ。
だが、それも程度もので、「あまりにも説得的な否定評価」だと、それは「商品の売り上げ」に悪影響するし、Amazonと契約して商品をサイト上にアップしているメーカーも、決して良い顔はせず、Amazonに「善処」を求めてくるだろう。』

という部分に、裏側から対応するものだと言えよう。

つまり、私の記事は、レビューを書く側の視点から書かれているわけだが、「元アマゾン社員のコンサル」さんのこの記事は、その裏返しであり、私の「推測」がおおむね当たっていたことを、裏書きして下さっているわけだ。

この「元アマゾン社員のコンサル」さんは、こうしたレビュー対策として、まず、

『基本的には良いユーザーレビューを増やすことが正攻法となります。
どんなに頑張っても悪いレビューは避けられませんが、多少悪いレビューがついても大丈夫な位、良いユーザーレビューを増やすことに力を注ぎましょう。』

まったくの正論である。
出品者にとって都合の「良いレビュー」を増やすには、レビュアーを喜ばせなければならないし、人を喜ばせること自体は良いことなのだが、問題は、その喜ばせ方である。

つまり、「良いレビュー」を書いてもらえるように、良い物を出品する、適切な商品説明をする、説明の労を厭わない、といったことは、「良い喜ばせ方」である。
一方「悪い喜ばせ方」とは、賄賂を贈る、個別に便宜を図る、といったことだ。

そして、この「悪い喜ばせ方」と見られても仕方のないものに、この記事でも言及されている、Amazonの「VINEプログラム」がある。
ここでは「良いレビュー」を書いてもらうための手法のひとつといて、次のように紹介されている。

『■ VINEプログラムを使う(1ASIN1回のみ。最大30件まで)
VINE(バイン)はアマゾンのセラーセントラルでエントリーできるプログラムです。トップレビュアーの方達に商品サンプルを配布して、レビューを書いてもらうプログラムです。あくまでも客観的な立場から公正にレビューを書いてもらうので、必ずしも良いレビューがつくわけではないですが、トップレビュアーの方達に書いてもらえるので、質の高いレビューが期待できます。新商品の場合でもVINEを活用すれば良質なレビューがついている状態で販売開始できるので、新商品の立ち上げの加速にはオススメです』

『商品サンプル』と言っても、実際には、たいがいは、その商品そのものである。
つまり、商品を「無料提供」してレビューを書いてもらうわけだから、対価を支払う一般顧客よりも「評価が甘くなる」のは、当然だろう。

さらに問題なのは、この「VINE」(レビュアー)メンバーになるのは、単に「評判の良いレビュアー」ではなく、「Amazonが恣意的に選んだ、高順位のレビュアーの中の一部」だという事実である。

つまり、「レビューの数(の多さ)」や「参考になったポイントの多さ」や「参考になった、割合の高さ」などで、完全自動的に選ばれるのではなく、それらを「勘案」して、Amazonが順位づけしたレビュアーの高順位者の中から、さらに「基準の明らかではない」Amazonの判断によって、「VINEメンバー」が選定されるのである。

例えば、同じようなレビューを同じくらいに書いて、同じような「評判(参考になった)」のレビュアーであっても、レビュー商品を「Amazonで購入」しているレビュアーは選ばれても、私のように(Amazon以外の)一般書店などで買っているようなレビュアーは選ばれない、あるいは、選ばれにくい。
実際、個々のレビューには「Amazonで購入」という赤字表記が添えられ、差別化がなされている。

具体的な例を挙げると、最近私も「note」に書評を書いた、諸星大二郎の『夢のあもくん』(KADOKAWA)のAmazonカスタマーレビューを見てみると、現時点で8本のレビューのうち、4本が「Amazonで購入」であり、その4人のうちの1人が「VINEメンバー」である。つまり、この人は、この本を「無料提供」されてレビューを書いているのだ。
だが、この人の場合は「星4つ」評価であり、満点でも低評価でもないけれど、他の3人の「Amazonで購入」者は、全員「星5つ」の満点である。
一一ここから何がわかるだろうか。

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それは「日頃からAmazonを利用することの多い人」は、「VINEメンバー」に選ばれるとお得だし、選ばれやすくもある。だから、良い(甘い)レビューを書く動機付け(インセンシティブ)にもなる、ということだ。

Amazonは、出品者への「利用規約・ガイドライン」として『出品者の禁止活動および行為、ならびに遵守事項』を定めており、その中の「カスタマーレビュー」の項目には、次のように書かれている。

『・カスタマーレビュー: 商品や取引の詳細や満足度についてフィードバックする役割を果たすカスタマーレビューは、Amazonマーケットプレイスにとって重要な機能です。出品者、または競合他社が出品している商品をレビューするなど、金銭的利害関係を持つ商品について出品者がカスタマーレビューを書くことは禁止されています。また、AmazonがEarly ReviewerプログラムなどのAmazonのプログラムを通じてレビューを依頼する場合や、カスタマーQ&Aからの回答をする場合を除き、レビューに対して報酬を提供(商品の無料または割引価格での提供を含む)することはできません。肯定的なカスタマーレビューだけを書くよう求めたり、報酬を提案したりするようなカスタマーレビューの依頼は禁止されています。購入者にレビューを変更または削除するよう依頼することは禁止されています。』

ここで「問題」なのは 『AmazonがEarly ReviewerプログラムなどのAmazonのプログラムを通じてレビューを依頼する場合や、カスタマーQ&Aからの回答をする場合を除き、レビューに対して報酬を提供(商品の無料または割引価格での提供を含む)することはできません。』 の部分である。

つまり、「Amazonを通さずに、勝手に、レビュアーに商品を無料提供するなどの、便宜を図るな」ということだが、逆に言うと「Amazonを通してなら、レビュアーへの便宜供与もOKである」ということである。そしてそのひとつが、前記の「VINEプログラム」というわけなのだ。
一一しかし、これはおかしな話ではないだろうか?

「レビュアーへの便宜供与」が禁止されるのが、「公正なレビューを書いてもらうため」なのだとしたら、レビュアーへの「無料サンプル」の提供は、それを出品者がしようと、Amazonがしようと、同じように「不適切」なはずである。
ところが、Amazonは「出品者が勝手にやるのは許されないが、うちを通して、手続きをした上で、レビュアーに無料サンプルを提供するのはかまわない」としているのである。これは、どういう理屈なのであろう。

無論それは、出品者によるAmazonの「VINEプログラム」を利用しての「無料サンプルの提供」なら、その時点で、Amazonに「利益」が発生する、ということだ。

つまり、レビュアーへの、出品者からの「サンプルの無料提供」が禁止されているのは、建前としては「公正にレビューを書いてもらうため」ということなのだろうが、実際には「うちで商売をするからには、勝手なことをするな。うちに別途手数料を払った上で、うちを通してやれ」ということでしかない、ということなのである。

したがって、一部レビュアーたる「VINE」メンバーへの「無料サンプルの提供」は、一部レビュアーたる「VINE」メンバーへの「Amazonからの便宜供与」であり、おのずと「VINE」メンバーは「Amazonが喜ぶレビュー」を書くように、飼い慣らされがちなのだ。

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次に、「元Amazon社員のコンサル」さんは、「低レビュー」対策として、次のような手法も提案している。

『■星3以下のレビューは、セラーセントラルから購入者に連絡できます(セラーセントラルトップページ画面左のブランド>カスタマーレビュー)。

●レビューへの御礼
●満足頂けなかったことへのお詫び
●レビューを参考に今後改善する旨の真摯な姿勢
をメールで丁寧に記載することで、低レビューを改善してくれるケースもあります。

このような丁寧で真摯なメールを送ることで、相手によっては悪いレビューを削除したり、良いレビューに書き直してくれることが期待できます。
※尚、レビュー変更を要請する内容はアマゾンのガイドラインに抵触するので、お気をつけください。』

ここで、まず注目すべきは『星3以下のレビューは〜購入者に連絡できます』の部分。つまり、比較的「評価の低いレビュアー」にだけ、出品者からの「接触」が可能なシステムになっているのだ。
一一これは一体、何を意味するのだろうか? なぜ、すべての「購入者=レビュアー」に連絡可能にしておかないのか?

それは無論、「低レビュー」よりは「高レビュー」の方が、商品が売れるからであり、出品者もAmazonも、対策をすべきは「低レビュー」を書くレビュアーだからである。

ちなみに、私は「Amazonカスタマーレビュー」を投稿停止(全削除)になるまで、300本あまりのレビューを書き、「低評価レビュー」も書いたが、出品者からの接触は、一度もなかった。

これは私のレビューの対象が「書籍」に限られていたからということもあろう。
だが、書籍の場合でも、赤坂真理『箱の中の天皇』(河出書房新社)のように、30本あまりのレビューのうち、半数以上が『Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 )』、つまり「VINEメンバー」のレビューだなんて商品もあるのだから、私がレビュアーランキングで「100位以内」入っていたこともある「トップレビュアー」の一人であったにも関わらず、「VINEメンバー」にも選ばれず、出品者からの接触も一切なかったのは、私のレビューを読めば「これは懐柔できるような奴ではない」と理解せざるを得なかったから、ではないだろうか。

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ともあれ、このように「Amazonカスタマーレビュー」には「レビュアー懐柔のシステム」が存在しているのだから、レビュアーを参考にする人は、「無料サンプル」という便宜供与を受けている「VINEメンバー」は無論のこと、将来の「VINEメンバー」を目指すという動機付けのある「Amazonで購入」レビュアーのレビューも、「眉に唾して」読むことをお奨めしたい。

(2022年4月8日)

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