変わらないファッションは消費者との約束(私たちはユニクロと内緒の約束をしている)
ツモリチサトやネネットなど10-15年ほど前に流行ったブランドが終了するというニュースが、最近多い。
一方で、この期間で力を大きく伸ばしたのはユニクロ。
2015年に「ユニクロでよくない?」の雑誌記事が出てからから、早5年。
もはや「ユニクロがいい」という立ち位置、おしゃれブランドの位置づけになっている。
ユニクロが大きく力を伸ばした理由にはいくつか答えがあるだろうが、
ブランドと消費者との暗黙の約束に話を絞って考えてみたい。
答えだけを先にいうと、提供する商品を変えていないからである。
洋服を探すときの苦労、変わらないユニクロ
消費者が洋服を買うときには、いろいろなことに気を配らないといけない。
・サイズ
・素材
・シルエット
・色
・柄やデザイン
・価格
・ブランドへのイメージ、世間からの評価
他のアパレルブランドは、よほど人気になった商品以外では、昨年と同じ商品がでることはない。このため、この7つの検討を毎シーズン行わないといけない。
(実は、よくみると毎年定番の商品も出しているのだが。。)
一方で、ユニクロは基本的に毎年同じ商品を出している、というイメージが強い。商品名や価格、主要な色や柄が毎年同じであり、同一性が分かりやすいようになっている。
(本当は細部は変えているのだろうが。)
この結果として、先ほどの7つのうち、以下はシーズン考慮に入れる必要がなくなり、
・素材
・価格
・柄やデザイン(基本無地であるため)
以下に関しても、考慮することが減る。
特にサイズの確認は、試着にしろサイズ表の確認にしろ、洋服を買うときにもっとも面倒な項目であり、毎年同じ商品が出ることはこの面倒さをかなり軽減してくれる。
・サイズ
・シルエット
・色(白や黒やグレー・紺は毎年でるため)
買うときに考えることが減ることは、消費者にとってメリットが大きいのだ。
ユニクロであっても商品を変えると苦情がでる
変わらないことが世間にウケているという現象を逆側から証明すると、
ユニクロであっても、前年から大きくデザインを変えすぎると消費者から苦情が出ることがある。
この男女兼用のスウェットプルパーカ(長袖)のレビューがよい例である。
リンクからサイトを訪れると、見た目では普通のパーカーなのだが、なぜかレビューの評価が低い。答えは、こちらの男性による不満の声だろう。
思ったより大きかった!洗濯して来てみたけど、やはり大きい…。最近の流行りかもしれないけど、パーカはピッチリが良いかな。
そう、おそらく昨年のパーカーよりもサイズがビックシルエットなのだろう。ついでに言うと、男性用の無地のパーカーはこのパーカー以外に存在していない。(9月3日時点では)
このことから却って、消費者がユニクロに何を求めているかが垣間見える。毎年変わらない洋服を提供してくれることが、目には見えないがユニクロと消費者との約束事なのだろう。
トレンドは追わないことがトレンド
また、ファッションにはトレンドや変化が付き物と思われがちだが、
2015年ごろをピークに、日本のファッションではトレンドを追うことがトレンドではなくなっている。
「ファッション トレンド」で検索される回数は減り、雑誌もトレンド特集を組むことは減ったように記憶している。
毎年異なる商品を発表するブランドは変化があって、斬新な作品は興奮をもたらしてくれる一方で、選ぶ時に手間を省きたいとする(メジャーな?)消費者の心理にストレスも与えている。
人はコントロールや予想できないことにストレスを感じやすい。この意味で、同じ服が提供され続けるブランドは、今の時代の支持を集めやすいと考えられる。
変わらないことの価値
ビジネス書では、現状維持は悪であるとされる。
しかし、人間の多くは安定を求める。
変化が望まれるのは、あくまで利益を上げていく場合の話であって、人との間に結ぶ約束事ならば、安定した関係が望ましい。
アパレルの場合で図にするとこんな感じだろうか。
刺激的で移り気なファッションは、消費者のニーズをうまく掴めているときとニーズを作り出せているときは爆発的に売れるが、リスキーだ。
安定して売れるし、安定して洋服が手に入るのは、ブランド・消費者ともに同じ服を求めているときである。
変わらないファッションが世間で受け入れられているのは、必然であると私は考える。
参考図書
暗黙の約束に関しては第2章の原則2に書かれている。
P296 囚人のジレンマとゲーム理論より。
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