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恋人との食事は不思議だ


私は幼い頃からセロリが大の苦手で、生で食べるなんて以ての外だしセロリがちょっとでも使われている料理があれば徹底して避けながら生きてきた。

しかし私の彼女はセロリが好きで無性に食べたくなる日があるらしく、そんな時はスーパーで奴を買ってきてはセロリのツナマヨサラダを作って幸せそうにバクバク食べる。

私が「そんなもん、人間の食うもんじゃないよ」なんて言いながら(セロリさん、農家の皆様ごめんなさい)満足そうに頬張る彼女を優しい眼で見守るのがいつもの光景だった。


ある日、いつも通り二人で夜ご飯を食べていた時のこと。

一人分のセロリのツナマヨサラダを作って食べていた彼女に「一口食べてみて、美味しいよ」と満面の笑みで差し出され、『無理!絶対に嫌だ!』と思う反面『こんなにも可愛い彼女の言うことは断れないよなぁ』とも思った。見事後者が勝り、恐る恐る食べてみることにした。

彼女が見守る中、噛まずに丸呑みや鼻をつまんで食べるなどの不正行為を行うことなくしっかりと確実に咀嚼を行う。

確かにセロリのあの青臭い独特の風味が口の中で広がる。

だけれど、なぜか全然平気。というか寧ろ美味しく頂けるレベルである。プチパニックになりながらも次は量を増やして口に運ぶ。余裕で食べれる。


「「……え!?食べれてる!!すごい!!美味しいね!!」」


二人で大喜びしながら綺麗に完食。その日を境にセロリのツナマヨサラダを仲良く一緒に食べるようになった。

ただ単純にマヨネーズやツナのおかげでセロリの風味がまろやかになって食べやすくなっているだけのかもしれない。もしくは歳のせいで味覚が変わっただけなのかもしれない。

でも私としては大好きな彼女の手料理であること、そして大好きな彼女と一緒に楽しくお話しながら食事を頂くというダブル効果のおかげで味覚が狂い、苦手を克服することができたんじゃないかと、勝手にそう思っている。


ちなみにこのセロリ事件以外に別のケースでも苦手な食材を徐々に克服し続けている。

食事中、彼女は本当に幸せそうに食べる可愛い人であり、私は大切な人と一緒に食事をしているときは一人で食事するときの何十倍、何百倍も美味しく感じるタイプの人間。

そんな人間なので、自分が苦手意識を持っている食材や料理を大好きな彼女が美味しそうに食べている姿を見ながら自分も食べてみると美味しく頂くことができたというケースも少なくない。我ながら『都合良すぎでは?』と思ってしまう。

彼女には「食わず嫌いなだけだよ」とか「本当はやっぱり無理って思ってるんでしょ?」とよく疑われるが、本当に、確かに苦手だと感じていたものでも美味しく頂けてしまうのだ。超不思議。


私の彼女は、私が苦手な食材や料理を克服した時や彼女の大好物が私の大好物になった時なんかは物凄く喜んでくれるので、彼女との食事はすごく楽しい。

そして何と言っても『彼女はこの味を好んで、それでこんなにも笑顔になっていたのか』といった発見があってすごく面白い。食事をしながら彼女と美味しいと楽しいを同時に共有できるなんてすごく幸せなことだなとしみじみ感じている。

苦手も克服できちゃうし美味しい食べ物もさらに美味しくなる。大好きな人との楽しい食事は魔法にかけられているような、そんな気分になる

大切な人の存在ってほんとすごい。


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