メタ根無し草と行く京王線―小説『フルトラッキング・プリンセサイザ』感想
小説『フルトラッキング・プリンセサイザ』を、『ことばと』vol.7の電子版で読みました。著者は池谷和浩さん、これは第5回ことばと新人賞で優秀賞を受賞された、400字詰原稿用紙150枚分の小説です。
総評としては、VRに関する思想や予測はない代わりに、主人公の人物像を印象づけることに特化した小説だと思います。主人公の世界の見方、物の感じ方を、小さなエピソードや独白を積み重ねることによって、単なる説明や属性の開示よりも深く読者に体感してもらおうというのが、この小説を通じて作者が