誰もいないポートレート 3
3 それは、悪くない物語
クリーム色のソファ席に並んで座っている女が二人、カメラに向かって笑顔を向けている。歯を見せて笑うような面白おかしい笑顔というわけではなくて、静かに表情の筋肉を緩めているというくらいのものだから、それが笑顔だというのは親しい人間か注意深い人間にしかわからないだろうけれど、でもそいつは間違いなく笑顔なのだ。
場所は、喫茶店かなにかだろう。女たちの前には飲み終わったカップと食べ終わった皿が、店員に見つかる前のモラトリアムの中でまどろんでいる。ライトウ