「尾道・雨――古本屋『弐拾㏈』を訪ねる」
その古書店を訪れようと思ったことに、特段の理由があるわけじゃない。店主と顔見知りというわけでもないし、とくべつ本が好きなわけでもない。たまたま暇ができたわけでもないし、旅をするのには良い天気だったわけでもない。
ただまあ、いろいろあって(便利な言葉だ)、一度そこを訪れておかなければならないと、なぜだか思ってしまっただけだ。そいつは、たまに湧いてくる根拠のない義務感のようなもので、そんなもの日常生活の中で無視してしまえばいいのだろうけど、やれやれ、そういうの、捨て置けない人