好奇心の高低差

人との違いで、つい驚いてしまうことがある。

数年前、友人二人と映画を観に行った。
少しだけ哲学的なSFで、とてもおもしろい映画だった。

上映が終わって一人の友人は満足そうだった。
が、もう一人の友人が放った言葉が衝撃的だった。

「よくわかんなかった」
「あの部分、結局最後まで説明がなかった」
「意味のない無駄なシーンが多かったよね?」

…なるほど。

お次は友人から聞いた話。

映画『パラサイト』を観終わって席を立つと
近くに座って観ていた他のお客さんが恋人に言った。
「で、パラサイトってどういう意味?」

…なるほど。

友人が言ったことも
見知らぬお客さんが言ったことも
ぜんぜん理解できないわけじゃない。

ふだんから月に何本も映画を観るようなひとたちではなく
誘われたらたまに映画館に行くような所謂「ライトな層」だということもわかっている。

ただ、もったいなくない?人生が。

僕たちはもういい大人。
映画に限らず「芸術の楽しみ方」を知っていると、人生が楽しい。

楽しむのに必要なのは「自分で問いを生み出す力」だと思う。

歴史や知識なんてなくたっていいから、作品に触れたときに、
どうしてこの色を使ったんだろう
なぜこんな形にしたんだろう
あの表情の裏に何があったんだろう
わかりやすく説明しないのはなぜなんだろう
意味のない無駄なシーンに見えるけど、なぜ入れたのだろう
このタイトルは誰がつけたものだろう
これがつくられた時代にはどのように受け止められたのだろう
20年後に今の自分の年齢の人が見たらどう思うだろう

こんな問いが頭に湧いてきたら、疑問を流し捨てないで 正面から受け止める。
自分なりの答えを考えてみる。
答えが出なくとも 深く掘り下げてみる。

そこに価値があると思うのですよ 芸術って。

音楽も、そう。

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