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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 4月24日~4月30日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。
新年度が始まって、あっという間に雨の大連休に突入しようとしています。
今週もよろしくお願いいたします。

4月24日

今日は自宅でスカイプを使った合評会。
こぢんまりとはしているけど、よい原稿が集まって、会が和やかに進んで幸せでした。
レポートはこちらをどうぞ!

4月25日

なんなんだー!
と思うくらい気温が高く、朝からぐったりしていました。それでも詩は書ける。新作6編。仕事はできました、涙。朝ドラを見始めました。爽やか、いいですね。

4月26日

今日は曇り空。昨日の双子のライオン堂さんとマルジナリア書店さんのトークイベントのアーカイブを視聴しながら仕事。マルジナリア書店さんではドーナツも売っているそうで、急にドーナツとお手製の揚げパンが食べたくなりパン屋さんに駆け込みました。あと、朝ドラのサーターアンダギーも!

コッペパンを揚げて砂糖をまぶし揚げパンに。
下の方はサーターアンダギー。朝ドラ効果。
今日のごはんはこれでいいや〜

昨日はばてていて書物の旅に行けなかったので、今日は散歩がてら移動図書館に行ってきました。偶然にも近所の友人に会えた! とってもうれしい。
新年度からとても移動図書館の選書がよく、にまにま。
帰ってきたら豪雨になっており、本を守れました。タイミングが良かったのかなあ。低気圧のため動けないかなと思っていたら、低気圧になりそうな前に痛み止めを飲んでいたため、頭痛とは縁を切れました。体調管理って難しい。
今日の作業も終わったので、明日からのオフも含め読みます。新作4編。

・中本道代『接吻』思潮社

広島ということ。
ゆらいでいる気持ちや感情を、テキストにすることの難しさ。中本さんはそれを、連を分けて最初の段落を下げていく書き方をしています。行替えの仕方もとても印象的です。
その試みはとても面白いし、10年ぶりの詩集ということで短い中にもとても密度の濃いものが読めました。
もちろんテーマは戦争なのですが、その場所で生まれ育ったということ、学校生活、少女から大人になるまでの軌跡が、四季の移ろいと共に語り手のなかでも揺らいでいきます。
揺らぎというものをテーマに詩集を書きたいとずっと思っていました。
わたしの第二詩集も、楽しみにしていてください。がんばりました。

・甘糟りり子『鎌倉だから、おいしい。』集英社

鎌倉には何かと縁があります。
よく行く、と言われれば本当によく行くし、なんだかわたしの中での「海」と「詩」の原体験がすべて詰まっている土地でもあるんです。
わたしの詩集を読んで、海辺で読みたいとおっしゃってくださった方もいました。とても光栄だなあとじーんときてしまいました。
わたしの大切にしているものやひとは何かと鎌倉に縁がありますし、そこの「食」から詩を教わったようにも感じているんです。
わたしの生きていく道において非常に大切になったお店「マンナ」など、作者の方が地元民だからということで厳選した鎌倉のお店にまつわるエッセイの短編です。

・岩井勇気『僕の人生には事件が起きない』新潮社

岩井さんというと……何かとラジオ界やSNS界隈でファンが多い方ですね。多すぎてわたしが彼について書くのもなにかおこがましいものがあるかもとドキドキしますが、書きます。
わたしは10代からラジオのヘビーリスナーでした。とにかく色々な人の声を聞いていたかったし、最新の音楽シーンを逃したくなかったんです。
20代になってラジオから遠ざかっていた時期もあったけれど、20代後半を迎えた今、わたしの日常はラジオと一緒にまわっています。今は読書ラジオや教養のラジオばかりになっているけれど、一時期だけ深夜ラジオにハマっていたこともありました。夜勤の頃でしょうか。
話すことと人の話を聞くこと、そして書くことは表裏一体でもあります。
聞き上手はだいたい書き上手でもありますし、ラジオを聞いてわたしは話し方や司会の進め方を知りました。観察眼が鋭いと、話すことも書くことも面白いと思うんです。その視点の鋭さというか。
岩井勇気さんはお笑い芸人さんですが、枠を飛び越えて活躍されている方でもあります。ラジオ『ハライチのターン!』はもはや黄金の番組といったところでしょうか。
そういう、話をする機会・話を聞く機会が多い方ほど、頭の回転が速いというか、お笑い芸人さんはとにかく話が面白いんです。お仕事なので当たり前かもしれませんが……。その「ネタづくり」がもしもエッセイになってみたら。うん、やっぱり面白い。同じく深夜ラジオの番組をお持ちの星野源さんの曲に「ギャグ」という曲があるのですが、彼も相当な文筆家だとわたしは思っています。
リスナーの皆さん、ちょっと、聴きながら書いてみませんか。

・柴崎友香『百年と一日』筑摩書房

一日。24時間で有限ですが、与えられたすべての平等をも意味すると思います。その「一日の内の何か」で自分がどう生きるかが変わってしまうことだってあります。
百年は一日を365回繰り返していくという日々を100回すれば、過ぎます。
だからこそ、一日という24時間がわたしは好きです。
目次だけで物語になっているような気もするんですが、深く読んでいくと誰かの人生の転換期というものがすべて「一日」という中であるんですね。
そういった「誰か」の生きていた道・生きていく道を描き続けた作品です。

4月27日

早朝から嵐。今日から新しい所へ定期検診のためオフ。検診場所も大きくて近いところにできてよかったな。
16年もみてくださった先生の所を離れたため、ちょっぴりしんみりするなど。今朝は朝ドラで兄ぃが働きだしたからがんばるんだ!!
地域の個人店の八百屋さん・コーヒー屋さん・花屋さんをまわりました。
母の日、喜んでくれるといいな。

家用の花束も買いました!

・是枝裕和『希林さんといっしょに。』スイッチ・パブリッシング

是枝裕和監督の映画もとても好きだし、わたし、ドラマや映画などの俳優さん、結構作品をおっかけてるんです。
樹木希林さんもそんな中の一人でした。でも、いつもチョイ役というか、もっと大きな作品を背負う役をやってもいいんじゃないかなと思っていました。
なんだろうな、脇を固める俳優さんがうまければうまいほど、その作品の良さって際立ってくると思うんです。もちろんそれは演出家や監督のシーンの切り取り方だったり、俳優さんの配置でもあるんですが……。
俳優さんは舞台や仕事での映像などに演技や所作が残ってしまうから、彼ら・彼女たちの発言をリアルタイムで目にする機会は限られています。
それでも、わたしは希林さんが好きでした。小さなころから、ああいうゆったりとした、どっしりとしたおばあちゃんになりたいとずっと思っていました。人生としては波乱万丈だったけれど……。そうか、俳優としても、「人柄」が出るんですね。
是枝監督の作品ではありませんが、黒木華さんと出演していた『日々是好日』は本当に好きな映画です。何度でも見たい。

・燃え殻『すべて忘れてしまうから』扶桑社

燃え殻さん、そうかあ、遅咲きのデビューだったんですね。なんとなく希望が持てます。
燃え殻さんはもう人気の作家さんですが、わたしは印象ですごく若い方なのかなと思ったりしていました。40代なんだそうです。精神のしなやかさ。
でもそうかもなあ。これだけ人生経験を積んでいないと、燃え殻さんの小説とか文章は書けないかも。
会社員として働いたり、バイトをしながら書いていたり。
人生経験が深ければ深いほど、見えてくる人間が違って見えます。
それだけは若いわたしたちがこれから知っていくことであって、これからもずっと付きまとう悩みを文章にできるまでは10年くらいは書き始めてからかかるかなと思っています。
このエッセイでは、燃え殻さん自身がバイトを体験しながら書いたものでもあり、この流行り病の中で書かれたものでもあります。何かと絶望と表裏一体の燃え殻さんのセンチメンタルな文体が生きてくるように感じました。

・保坂和志『ハレルヤ』新潮社

飼っている猫、そして月への思い。
作家さんは暦を大切にする方も多いように感じます。日付をわたしたちは忘れてしまって仕事をしていますが、心が強く揺さぶられる瞬間って、常に暦と動いているような気がするんです。
節句だったり、六曜であったり、月の満ち欠け、などわたしたちの周りには数々の暦があります。
きっと猫ちゃんたちはそんなの関係なしに毎日を生きていると思うんですが、一緒に暮らしている家族は気にするという所がしんみりと人間の「情」を写し取っているのかな、なんて思います。
猫は人間より長いこと生きられません。
わたしは実家で犬を飼っていましたが、今あの子がどう過ごしているのかを知りません。きっと未だにおじいちゃんとしてぐうぐう寝る日々が続いているのかななんて思います。
ペットって、ペット以上に家族だったりするんですよね。
今日も多肉植物に水をやろうと思います。もうそろそろ花も咲き始めました。

・佐々木譲『図書館の子』光文社

映像化……してほしい……!
テレビドラマのミステリーものを読んでいる気分でした。一つ一つの短編にそれぞれの光る味わいがあります。
表題作「図書館の子」だけでなく、他の短編もものすごく面白くて。
常に他の作品にも言えることは「どこかに閉じ込められてしまった、何かに閉じ込められてしまった人々があがいてそこから脱出していく」ということでしょうか。それはおかれた環境だったり、おかれた場所であったり境遇であったりするのですが……。
ミステリー好きにはたまらないと思います。

・椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』新潮社

わたしがシーナ作品に触れたのはだいぶ幼い時でして、中学受験をしたのですが、その塾の文庫にとにかく椎名誠さんの作品が多くありました。
個人塾だったので、塾長先生とは今も交流がありますが、先生が国語などの作文の添削もされていたため、中学受験の問題に出てくる作家たちの本を集めていたんですね。それに伴って先生が全て目を通しており、先生ご自身もサーフィン好きだったのも関連があって、シーナ作品が好きでした。
『岳物語』も非常に多く当時中学受験の課題図書のようになっていて、岳君がもう父親なのか……と思うとなんだかじーんときます。もうシーナさんも「じいじい」なんだなあとも。
生きて生きて生ききる。そういう作家としての生活を送りたいですし、きっと世界中で出会った数多くの友人たちを見送る中、書かれたものなんだろうなという気持ちです。

・三浦しをん『ののはな通信』KADOKAWA

ののちゃんとはなちゃん。
少女という時代を昭和後期から生き抜いてきた二人の親友。そして、親友を超えた親密な関係。
彼女たちの文通だけでこの作品は出来上がっていますが、ののちゃんにもはなちゃんにも家庭環境などが変わっていって、女性の環境の変化が出てくるんですね。
シスターフッドの決定版というか、こういう時もあったなあなんて思い出したりしてしまいます。わたしたちにも「女子」であったころがたしかにあって、なんのてらいもなく笑いあえた頃があった、確かにあった、と。

・恩田陸『祝祭と予感』幻冬舎

『蜜蜂と遠雷』のアナザーストーリーになっています、再読。
恩田陸さんもとても書き続けている作家さんで凄く好きなんです。『六番目の小夜子』『光の帝国』など、ちょっとミステリーだけど青春、というものを書かれている著作が多いのですが、蜜蜂と遠雷はピアノコンクールの青春ストーリーでしたね。
たぶん、映像で見られた方もいらっしゃると思うので、そこからこの本に入っていってもらってもじゅうぶんに楽しめると思います。
わたしたちはまだまだ生き盛りで、明日という不確かなものが常に待ち受けています。それを希望ととらえるか、絶望ととらえるかでじたばたしてしまうのですが、100年スパンで考えると、今日明日のことは本当にちっぽけなことだったりするんですよね。これから生きていかなければいけない時間の方が多い、ということに気がつけるかどうかで、精神のしなやかさが違ってくるようにも思うのです。
若さって、そういうことだよ、きっと。

4月28日

今日は現代詩手帖5月号発売日!
特集が「ポエトリーリーディング」とか……アツいぞ〜! インカレポエトリで「いつ詩集を出すのかな……」と気になっていた青木風香さんの詩集、『ぎゃるお』(七月堂)が出ました! タイトルの付け方と表紙最高! いいぞいいぞ〜! 詩の世界がもっと自由になってきている。そんな気がします。

わたしが大学二年から所属する文芸創作ほしのたねの通販サイトが新しく「星々」という団体のサイトと一緒になりました。
長尾早苗名義で詩を書き始めたのは大学卒業後なので、文芸創作ほしのたねの9号あたりから詩が掲載されています。もう20号が発売され、次の文フリでは21号! すごいね~
ただいまお取り扱い中のもので自信作は17号の特集・文豪「THE・太宰治」となっています。太宰の作品中のことばを一行ごとに年代順に並べて詩を作りました。青空文庫からの出典ですが、全てに目を通して読み、結局太宰が遺したかったものはなんだろうと考えて作った詩です。
がんばりました……他にも楽しい企画が満載です!
よろしくおねがいします。新作9編、口述筆記なのであとで編集しないと……!(最近は外出する機会が多いので、iPhoneのメモからワードに移行して詩を書いています。紙媒体とどちらがいいかは模索中。以前はメモの紙媒体にこだわっていましたが、今はとりあえず書ければいいや! という考え方です)


4月29日

口述筆記の詩を9編清書しました。これで第四詩集の原稿は集まったかな。今日はインドアな気分だったので、ゆったりとkuriko先生の翻訳ワークショップをオンラインで復習していました。来週読む本を嵐の前に決められて、昨日は良かったのかもしれない。とにもかくにも、現代詩手帖5月号を買えて読めるのが幸せです。

・『現代詩手帖2022年5月号』思潮社

ポエトリーリーディングに、ちょっとアレルギーがありました。
多分それは、わたしが小説の舞台朗読をしてきたという土壌と、ずっと出場したかった詩のボクシングに中学受験などで出られなかった、というものもあります。
最初に詩を書き始めた時、わたしが見つけたかったのは同じように詩を書いている仲間たち。そして実際に詩人に会いに行くことでした。その時に欠かせなかったのがリーディングだったんですね。朗読会が非常に多かった。
それでも、リーディングを聞いて、わたしが当時聞いていた小説の舞台朗読の朗読会での朗読とは違った世界だったので、同じ「朗読」とテキストでの詩が乖離してしまって……リーディングでどうしたらいいのかわからなくなったりもしました。だからこそ、リアルのお客様の前で自作の詩を読むことを9年封印してきたんです。
今、それがかなり解き放たれた思いがあります。詩のリーディングの世界に飛び込むと決めた時に、小説の舞台朗読をしている先輩に話したら、がんばってねと応援してくれたんですね。
この流行病の時代でも、自分の足で自分の世界を切り拓いていきたい。そういう強い思いがありました。
そして、その後押しになってくれたのが今回この現代詩手帖で取り上げられていた、『リーディングという誘惑』というオンラインイベントだったんです。
わたしは平川綾真智さんのリーディングを目にして、ああ、こういうことなんだ、そうか! と納得しました。
テキストが素晴らしいのは知っている。声も素晴らしいのも知っている。でも、それをどんな衣装で、どんなテキストの持ち方で、どんなマイクの距離で読んでいるのか知りたかったんです。本当に魅力的だったし、目指したいと思いました。(わたしはアイドルにはなれなかった……けど)もちろん、そのテキスト自体、わたしの恩師が書評で取り上げていたというのもあって、わたしにとって平川さんは本当に憧れでもありました。
だからこそ、最初に飛び込んでみたのが千葉で、そこでもりさん、コオリヒロノブさん、大島健夫さん達と出会い、ポエトリーリーディングの世界で活躍されている方達と詩を読み合ってみたら、本当に自由で楽しかった。だからこそ、新刊の準備もあるけれど、20代最後だからという思いもあって、体力が有り余る中飛び込んでみた世界です。
このことをわたしの小説の舞台朗読の恩師にはまだ話せていません。それでも、やってみたかった。青春を、入院していたりして十分に楽しめなかった10代を、やり直してみたかった。もう一度、声に出してみたかった。それで選んだのがポエトリーリーディングでした。だからこそ、この5月号はわたしの中で大切になっていくと思います。
ツイッターと連動した礫の朗読の企画では、知人が登場していたり、今月の作品の中でも応援している詩人さんが出ていたりで、ものすごく楽しめました。

4月30日

今日は二週連続となってしまいましたが、ヒカリエ。
メリーポピンズの舞台を一人で観に行きました。
ヒロインは笹本玲奈さんの回です。なんとか取れてよかった。
レポートはこちら!

明日からは少しこもり気味で読書を楽しみます!
普段はできないゆっくり読書を楽しみます。

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