恋バナ読書術・意外と似てる文章と恋愛~読書・恋愛・パートナーシップ③(三宅香帆さんゲストイベント書き起こし)
※この記事は文化系のためのオンラインマッチングサービス「猫Match!」のトークイベント『読書・恋愛・パートナーシップ』(ゲスト:三宅香帆さん)より、一部を書き起こしたものです。
語り手:三宅香帆(書評家)
聞き手:あじさい(文化系恋愛アドバイザー/猫Matchマネージャー)
マヤ@文学淑女(猫Match!スタッフ)
<前回>
【なによりも大切なのは、軸】
三宅:文章を書くこともパートナーシップもそうなんですけど、私が文章というか、紹介をする時一番困るなって思うのが「何が書きたかったんだっけ」みたいなのを書いてるうちに思うのが困るんですよね。
自分の中でも自分の書きたいことがわかんなくなるのが、やっぱり文章でも一番大変で嫌だなと。なので自分はこの文章でこれを伝えたいんだみたいな、書くことを明確にするっていうのが何より大事だなと思ってるんですよね。
それも書く前からわかってるべきというよりは、書いてる中で「あ、自分はこの文章でこれを伝えたかったんだ」ってわかるみたいなこともすごくよくあるので、最初から作っておくべきというよりは最終的に何が伝えたかったのかっていうのが明確に終わる、みたいなのが文章の中では大事だなと思うんですよね。
そういう意味でやっぱり、例えば「好き」っていうことについて書くときにはどこが好きかっていうのが軸になると思います。何を伝えたいのか、何を最終的にプレゼンしたいのか着地点がわかってるのがすごい大事だなと。なので、自分の中でどうしても伝えたいこととか、どうしてもこれは譲れないぜみたいな一番譲れないポイント、例えばその文章を修正するにしてもここは修正したくないっていうポイントだったり、ここを伝えられたらあとはどうでもいいやっていうような「ここだけは」って譲れないものを明確にしておくっていう。パートナー探しも自分のどうしても譲れないポイントっていうのを明確にするっていうのはすごいやっぱり大事だなというふうに思ってて。絶対無理なところとかもそうですし、やっぱりここが一番大事だなって優先順位みたいな意味でも、自分で自分の譲れないポイントがわからなくなってくると迷走しだす気がするので。ポイントを明確にするっていうのは自分的には大事かなと思ったりしますね。
あじ:恋愛っていうより読書会のことになっちゃうんですけど、最初、まず軸を決めてなくてもいいっていう。結構、読書会でも本や作品の感想を、アウトプットとして話し始めた時は自分が何を言いたいかよくわかってないんだけど、話し切ることよって、なにか自分が思ってたはずだけど言語化できてなかったことが言語化できるみたいなことは結構あると思うんです。
人とコミュニケーションしていく中で、モヤモヤしてたものがなんとなく形になってこの人のこういうところが好きなんだなとか見えてくる、その軸を見えるようにするためにどういう風にしていくのがいいのかなっていう。
例えば書く中でも、これが書きたかったんだって書きながらわかることもあると思うんですけど、それをわかりやすくするっていうか見つけるためのコツみたいなものってありますか?
【見つけるためのコツ】
三宅:そういう意味でもさっきの話の、深掘りが足りてないとやっぱり軸がわからなくなるのかなと。どこが好きかっていうのを具体的に考えるとか、やっぱりその理由をちゃんと言語化するとか。書きたいこと言いたいことをちゃんと言語化するために深掘りを自分の中でもしておくっていう。まあ、やっていく中でわかるみたいなことは何事もあるので、やっていく中でそれこそ共通点が見つかってこれだったのかみたいにわかることもあるし、本もね、一冊読んだだけだと自分の好みとかよくわかんないですけど、何冊か読んでいく中で、こういう系の話が自分は好みなんだなとか分かったりもしますしね。そういう意味では経験値みたいなのも必要になるのかなと思います。
やっぱり恋愛とかもなんか、過去の恋愛も照らし合わせて考えたときに、ここじゃん譲れないものはみたいにわかるのもあるあるな気がするので、パートナーシップという意味でもちゃんと言語化してああこれが譲れなかったのかって理解するみたいなのは私は大事かなと思ったりしますね。
あじ:以前ゲストにライターのトイアンナさんに来ていただいたことがあるんですけども、その中でも結婚相手を選ぶ条件の中で3つのイエス、譲れないものを3つ決めておいてそれが合致したらその人を選びなさいっていうのがあって。
参考:https://note.com/nekomatch/n/n7dd201d61de7
三宅:確かに就活とかでも言いますよね。譲れない3つのポイントを決めましょうみたいな。セレクトするってそういうことなんですよね。自分の中で譲れないポイントみたいなのがあって、好きな本を見つけるとかも自分の中での地雷を踏んでないとか、好きな構図に当てはまってるとか、やっぱりすごく大きい気がする。好みとか相性って、そもそも自分の中に譲れないものがあるのが大前提で実はみんな言語化されてなくてもあるんじゃないかなと思ったりします。
あじ:映画でも「犬が死ぬ映画は絶対イヤ」とかありますもんね。
三宅:そうそう(笑)全体的には良くてもなんか無理なポイントあったら無理だったりしますもんね。
あじ:そういうのをちゃんと自分でわかっておくのも大事だし、可能であれば相手の方のそれもわかりたいし。
三宅:相手のその…わかりやすく言うなら地雷でもそうですし、なんとなくこういうところが自分に見出してる良さなんだなみたいなのを分かっておくと、なんとなくそこは維持しようみたいな感じを思ったりしますよね。
あじ:こういう要素が出てきたらもうそれだけで好きになってしまう…さっきの三宅さんの鋼の錬金術師の二人の関係性みたいな、そういうものを持ってる人を見つけるのがもいいかも。
三宅:全体的なふわっと理想っていうのだったら、結局マイナスの減点方式になっちゃって誰も残らんみたいな感じになっちゃいがちな気もするので。パートナーになった後もそれだとしんどそうな感じもするし、減点はなんか…みんな、減点が一つもない人なんていないと思うのでそういう意味においてもやっぱりここが譲れないポイントでここは別にいいとこ、とかわかっておくとパートナーになった後も続きやすそうな感じがしますよね。
あじ:特に生活を一緒にすると普通にしてたら減点のポイントの方がもう絶対あるから。
三宅:確かに!間違いない(笑)
あじ:それぞれの生活スタイルがあるから、別にいいとか悪いとかじゃなくて絶対それは合致しない部分が結構あるからマイナスは良くない、減点方式はよくないと。
三宅:マイナスだって一個マイナスがあったら全部バツっていう風にしてるとほんと生活全部バツにしかならないので。出来るだけ好きなところ、いいところを見つけていくみたいなのって普通に人生大事だなって大人になると余計に思ったりしますね。人間関係でも やっぱり。
【恋バナ読書術・意外と似てる文章と恋愛】
あじ:ちょっと話逸れちゃうかもしれないですけど大人になると好きになること自体、好きを見つけることが逆に難しくなってくることもあると思うんですよね。あらゆることに対してネタバレっていうか、こういう感じねってわかってそれを好きになる前に終わっちゃうみたいな。
三宅:そうですよね。そのやっぱ自分も大人になってくるから、世の中への経験値が上がっちゃって、こう 未知でもっと知りたいみたいな感情が湧きづらくなっちゃうみたいなところもある気がするので。大人になるとそこだけに頼ってると厳しくなりそうではあるっていうか。
あじ:このパターンとこのパターンを足したやつねみたいな。
三宅:あります(笑)なので今回の話としては、文章で私が大事にしていることっていうのを考えてみたら、やっぱり好きなものについて書くこと、アプローチするとか…パートナー探しは案外似てるなーっていうような気付きが自分的にあったんですけど、本にしてもやっぱり自分の好みを言語化してみて、なんで惹かれたのかとかを深掘りしていくとの譲れないポイントだったり自分の中で大事なものが見えてくる気がするので。それって現実のパートナーシップというか人間関係全般、自分を理解してて自分に相性のいい人を見つけるみたいなところでもすごい役に立つんじゃないかなと思うので。多分今日参加してくれてる方は本好きな方多いと思うんですけど、是非本を好きになって本について書いてみませんかという思いもあります。という話を今日はちょっとしてみたかった のでした。
あじ:本当に恋バナ読書術でしたね。びっくりしました。
三宅:自分的に私も今回の資料を作ってて、改めて文章を書くやり方と、基本的にていうか人生すべてそんな感じでやろうとしているみたいな気付きがあって、私は仕事とかもできるだけ好きなものを発信してそれに合うような依頼をもらいたいみたいなスタイルで、パートナーとかも好きなものを発信してなんか大体こういう人ってわかってもらって合う人を見つけた、みたいな感じだったりするので。そういう意味では人生ずっと同じことをやっている気はしますがまあそういうスタイルもありやなという紹介って感じです。
やっぱり頑固めの…自我が強めの人間なので、それをこう許容してもらえそうなところで生き延びたいって感じですね。
あじ:逆に依頼とかもそうですけど、意に沿わないものを書いてしまったみたいな思い出とかってありますか。
三宅:意に沿わないというか、依頼されてその本読んでみたら全然好みじゃなかったみたいなことがあったりするので。
あじ:読む前にその依頼を受けて。
三宅:そうです。以来反省して。読んでからできるだけ依頼を受けようと思ってるんですけど、すごい昔ありましたね。自分的に反省事件という感じで。
あじ:具体的でわかりやすい(笑)
三宅:(笑)
あじ:そろそろ質疑応答に入らせていただければと思います。その前に(ここまでの内容に)付け足しとかはありますか。
三宅:はい、大丈夫です。今日は「意外と似てる文章と恋愛」という話で分かってもらえたらという感じです。チャットでコメントくださった方もありがとう ございました。
あじ:三宅さんにとっては 書くっていうことが、我々の会にとってはマッチング読書会とかで作品に対してアウトプットするっていうのと合ってるところがあると思うので結構結びつけやすいですよね。
【ここからは質疑応答です!】
あじ:これ、まさに減点方式の。
三宅:違和感を感じるってことは、違うところが多分よほど大きなところだったんですよ、自分にとっては。こういう時はむしろ、違和感を感じた部分が、自分にとっては想像より大きい部分だったなっていう学びに変えるぐらいの方がいい気がしますね。逆に譲れないポイントに入れておくみたいな。
あじ:減点とはまた違う意味で、これは譲れないというところが出てくるという。
三宅:ある気がします。大人の難しいところな気がするんですけれども、パートナーの嫌だったところとか積み重なっていきません?こういうところ嫌だったポイントみたいな。それを新しく会った人にあてはめて嫌だなと思ってしまうのはあるあるな気が。
あじ:飲食店の店員さんに態度が悪かったとか。
マヤ:私は自分がマイペースなので、あらかじめ「私はこういう人間です」って言っておいて、それでも大丈夫な人が合うなって感じです。
三宅:切実な…!めっちゃ気持ちわかるんですけど、私はそれに関しては、本当に無理をしないこと一点だと思っています。無理をして好きで、ずっと読み続けなきゃって思っていると逆に辛くなっちゃって手が伸びないみたいなところがあると思っていて。
どちらかと言うと本を読むのが好きなんだけど、今は忙しいから休止しているだけであって、仕事の忙しさがましになったりとか、忙しさに慣れたら、これを読もうって決めておくとか
そういう感じで、休んでる期間を許すみたいなのもすごく大事だなと思っていて、ずっと読めないからもうだめだみたいになっちゃうと、逆に本から離れちゃって「あ、もう無理だな」と自分の中で思ってしまうことが多いと思うので、そういう意味では休むことを許しつつ、無理をせず、なんだかんだ言っても趣味なので、自分の生活に支障をきたさないように好きでいることが大事だなと思います。
あじ:また『花束みたいな恋をした』の話ですが、正に麦くんが、本なんか全然読めないしゼルダもできないしみたいになっていますけど、最後の方では、社会人としての生活がちょっと落ち着いたら、映画とかも観れるようになってるんですよね。
三宅:あの映画を観ていると、麦くんは文化から離れてしまうように見えますけど、新卒1年目ってそんなものじゃないかな、と私は映画を観て思って。一番慣れてない時期に、ずっと読んでなきゃいけないということもないかなと思っていて、麦くんも『ゴールデンカムイ』の続きが読めないと言っていましたが、なんだかんだ無料公開された時に全部読んでいたんじゃないかなと。その時の彼女とかと一緒に「これを途中まで読んでたんだけど」とか言ってそうな(笑)
そういう意味では、一回離れることを許すのも大事だと思います。
仕事以外でも子育てだったり、人生忙しい時期があると思うので。本や漫画は特に今読まなきゃ逃げちゃうものでもない趣味なので。
三宅:私は再読をめちゃくちゃしたくなりますね。すでに好きな本や漫画の再読。なんかあのシーンが読みたいみたいに好きなシーンだけを読むとか。好きなシーンだけ読もうと思ったら、なんか一冊読んじゃった、みたいなこともありますけど。
あじ:好きな本だから、いいってことが分かってますもんね。
三宅:好きな本を読み通したら新鮮に感動することも結構あるので、それで元気を復活させることもありますね。
あじ:みなさんそれで『THE FIRST SLAM DUNK』何回も観に行ってますもんね。
三宅:いいな、みたいな気持ちになるのって大切ですよね。
マヤ:宣伝するような形になってしまうんですけれど、今の質問みたいに、こういうシチュエーションの時ってどんな本がお勧めですか?みたいなのをまとめた本を三宅さんが出していらっしゃって。
『副作用あります!? 人生おたすけ処方本。』
こういう時に読むこの本がお勧め!というのをまとめた本で、これもとっても面白いので、私からおすすめさせていただきます。
合コンに行く前に読みたい本も、なるほど。三宅さんはこれを選ぶんだというのが、個人的にすごく面白く読ませていただきました。
三宅:ありがとうございます。失恋したときに読む本とか、そういうのもあるんですけど、たまに大喜利みたいなものもありますね。お風呂に入りたくない時の本とか(笑)
合コンに行く前に読んでほしい本は男性版と女性版があるんですが、男性版では『アンナ・カレーニナ』をお薦めしてるので、みなさんぜひ『アンナ・カレーニナ』を読んでくださいという。
あじ:合コン行く前に読むのは大変ですね(笑)
三宅:本当に女心の全てが書いてあるのでぜひ読んでいただきたいのですが、いかんせん長い(笑)
女性が男性を「無理!キモい!」って思う瞬間が全部描かれてるんですよ。トルストイはすごいなという。
男性に対して「あ!いいな」と思う瞬間と「あ。もう無理」と思う瞬間どちらも振れ幅が大きく描かれているので、「女心が分からん」という人にはぜひ『アンナ・カレーニナ』をお勧めしたいですね。
あじ:せっかくなので、三宅香帆さんを猫Match!のゲストに来ていただきたいと思った決定的な文章があって。『それを読むたび思い出す』の一節なんですけども。
この本に書いてある内容が、我々の活動にとても通じる部分があったので、三宅さんにぜひお話を伺いたいと思ったんです。
三宅:すごく恥ずかしいですけど、ありがとうございます。私の地元での思い出とか、大学生活での思い出とか。あと本とか書くとか、そういうことについて考えていることを書いたエッセイ集って感じの本なんですけど。
その中で多分一番最後の方ですね。メロンパンナちゃんの話をしているところだったかな。私は本を紹介する仕事をしていて、なんで本を紹介したいのかと思うとこもあるんですけど、そういう時にいつも思うのは、本は辛いときやしんどいときに、そばにいやすい他人だなと思うからなんですよね。
人が要る趣味だとしんどいじゃないですか。映画や観劇、音楽等は観に行かないといけない要素が結構強い気がするんですけど、本とか漫画は安いっちゃ安いし、家の中で楽しめて。それでいて他人の言葉なのに一人で楽しめるものであるという、手軽でかつ一番効くのでは?と思っているので、やっぱり本を紹介しているんだな、と。
そういう意味では、本が一番ひとりでいる時に効いてくるものなのかなと思うので、ある意味誰よりも近しい他人なのかなと。
あじ:自分のペースで接することができますもんね。
三宅:嫌な時はそれこそ読まなくてもいいし、途中でやめることもできるし、そこはすごくいいところですね。
三宅:漫画はひとつ手だと思っていて。私の友達の方がTwitterで、アラサー、アラフォー女子と仲良くなるには『NANA』か『こどものおもちゃ』か『GALS!』のどれかを読んでおけば、みんな大体どれかを読んでいるので仲良くなりやすいと言っていたのですが、私もそれは本当だなと思っていて、男性も読みやすいのも考えると『NANA』か『こどものおもちゃ』か『のだめカンタービレ』のどれかを読んでいただいて、その話をぜひしてみてください。少女漫画を分かる男性ってすごくしゃべりやすいと思う気がするんですよね。
マヤ:すごくわかります。
三宅:ですよね。上から目線で評価というよりは「あれおもしろいよね!」と言ってくれたら、それだけで好感度がガツンとあがるし、自分の好きな漫画を紹介したいし、みたいな気持ちになりますよね。少女漫画読んでみるのはお勧めですね。盛り上がりますし。
あじ:ちょっと話が逸れるんですが、文化系男子の悪いところ、自分を刺しながら言うのですが、例えば女性が「私NANAが好きなんだよね」という話をしてくれたときに、その人は『NANA』の話がしたいのに、我々は「パラダイスキスとか面白いよね」という、なぜか別の話をしてしまうんですよね。そういう悪癖がある。これ通じますか?
三宅:めっちゃ分かります!そしてそれがマウンティングみたいに聞こえちゃうんですよね。読んだもの合戦みたいになっちゃうと、どうしてももうダメみたいになっちゃいますよね。
知識合戦じゃなくて一つの作品について語り合うみたいなの、意外としないし、やれると楽しいですよね。
あじ:カタログを並べるんじゃなくてそこを掘っていくのがいいんですよね。『イニシェリン島の精霊』観たけど『スリー・ビルボード』に比べてどうだった?みたいな話じゃなくて。
三宅:(笑)本当になんで男性はどれが最強かを決めたがるんですかね?
めちゃくちゃ性差別的な言い方ですけど、だが思ってしまうみたいな。何派とかじゃなくて、どれが最強かっていう話すごく好きだなって思うんですよね。
あじ:一位を決めたがりますから。
三宅:良くない(笑) 一位とかじゃなくて、これが好きという話がしたいんです。
あじ:痛み入ります。
三宅:何だろう。私の場合は掴みに一番いいところを持ってくるというか。サビを 1 回はさむ、みたいな。Bメロから始まってAメロに戻るみたいなイメージで、一番伝えたかったことを最初に言っちゃって「この話を今日はします」というあらすじを説明します。あまり出し惜しみをせずに、最初に一番いいところを持ってくるのも大事な気がします。イントロなしのサビ始まりみたいな。
あじ:自分のネガティブなことって言わなきゃアンフェアだなって思いがちなので、わざと最初にネガティブなことを言ってしまう方もいると思うんですが、別にそれはアンフェアではないですよね。
三宅:そうですよね、人間関係で一番最初を一番よくしておくことは大事ですよね。いいところを最初に出しておかないと、もう二度と会う機会がなかったりしますし。
あじ:実は会社勤めしてる時に横領で捕まっててとか。
三宅:そこまでいくとむしろ面白くてむしろネタになりますね。
マヤ:少女漫画とかだと逆のパターンも多いですけどね。
フィクションだからというのもあると思いますけど、最初は印象が最悪だったあいつがだんだん気になりだして、そこから減点じゃなくて加点が始まっていってどんどん好きになるパターンもありますけど。
三宅:確かに。でもそれはもうなんか尺があるのが前提のカタルシスですよね。
最近の漫画はそれも無くなってきてるっていいますよね。どんどんその前提としてのギャップを出すための不快さみたいなのを消していって、最初から幸せにしておくみたいなのが最近流行りらしいので、みんなやっぱり忙しいとそっちを求めちゃうんじゃないかな、と。
あじ:道明寺くん(『花より男子』のキャラクター)とか最初まあまあひどいですからね。
三宅:道明寺くんはひどいですね(笑)『SLAM DUNK』とかも最初はずっとケンカしてるからヤンキー漫画なのかなって。
三宅:深堀りしやすいテーマって、誰しもある気がするんですよね。
この本について考えてもあんまり好みとかよく分からなかったけど、この本はやたら自分の言語化がはかどるなみたいな本ってあると思ってて。それこそ『花束みたいな恋をした』は私にとってやたら言語化が進んだ映画だったんですね、それと同じくらい面白かった映画でも、そんなに自分の理解にはつながらなかったなというのもあったので、一つのテーマというよりは、自分の中で深堀りしやすい、言語化がはかどる作品を、掘りながら見つけていくのがいいかと思います。
あじ:同じくらいの面白さでもいっぱい喋れるものとそうでないものがある。
三宅:人ともそれこそ深堀りで話しやすい映画と、面白かったけどそんなに感想ははかどらんやろみたいな映画がありますね。
三宅:仲間! 私は『THE FIRST SLAM DUNK』の映画を観てから、スラムダンクの二次創作を延々と漁る日々なんですけども、本当にすばらしかったですよね。一番感動したのが、ネタバレせずに言うとラストシーンなんですよ。漫画に付け加えられる形でラストシーンが入っていて、そのラストシーンが、今回の主人公の行く末みたいな感じではあるんですけど、そこが一番自分的にとてもぐっときて。
なぜかと言うと、漫画のスラムダンクに引っかかっていたところ、それこそ違和感を覚えていたところっていうのが、90年代部活漫画全般に言える、青春時代が人生のピークだという思想が一番自分的には引っかかっていて。
なぜかっていうと、自分も中高時代に部活を結構がっつりやっていたんですけど、一方でがっつり部活やっている人たちや先生とかって、すごく部活を神聖視するじゃないですか。あれって本当に正しかったんだろうか。みたいな。とはいえそこで得たものも大きかったですけど、一方であれは繊細な十代の子達のあるべき姿だったんだろうか、って考えることが自分の中でもあって。
そういう意味でスラムダンクはめちゃくちゃ面白いし、すごい漫画なんですけど、一方で桜木花道のあそこが人生のピークなんだみたいな思想がどこかで引っかかるみたいなところがあったんですけど、そこをすごく映画では更新してくれていて、青春時代に起こったことが、ちゃんと将来につながって、色んないい面に向かえたんだというラストシーンになっていて、そういう意味ではラストシーンが変わっていたという印象を受けて、それは 90年代と令和の違いだし、井上先生のアップデートな気がしたんですよね。人生は長いみたいな意味でも。そこがすごく良かったです。
あじ:エピソード自体はなんとなく井上先生の頭の中にあったのかもしれないけど、現役で書いてるときは話としては出せなくて、井上先生がいろいろな経験を経たことで今回こういう形になったっていうのにすごくぐっとくるんですよね。
三宅:これは私よりあじさいさんに聞いた方が(笑)文化系男子が全員好きなものって何ですか?ガンダム?年代もあるか?
あじ:それはけっこう年齢が上の気もしますね(笑)
(注:この当時『水星の魔女』は放送してませんでした)
三宅:あれですかね、新海誠?
あじ:課題作品に『秒速5センチメートル』を選んだことはあるんですよ。
三宅:私新海誠好き男子及び『秒速5センチメートル』好き男子については百家言くらいあるんですよ(笑)
端的に言うと、Twitterで、私たちの世代の文化系女子は全員新海誠好きの元カレ及びそれに類する人がいるし、新海誠好き男子は大体LINEが長いという、すごく偏見に満ちたツイートをしたんですけど、それを実際にそうなのか検証をしてみた!みたいなnoteを全然別の方がまとめられて、そのnoteを新海監督が読んでたんですよね。
というわけで私は新海誠元彼ツイートが監督まで届いて、私も『秒速 5 センチメートル』をいっぱい見た甲斐があったなって思いますね。
あじ:じゃあ文化系男子の理解度を深めるためには、新海誠監督作品を観るということで!
三宅:ぜひ観てください。あそこには文系男子のだいたい全てがあります。
三宅:これは、それこそ課題作にもなっている山本文緒さんの『自転しながら好転する』という本がめちゃくちゃ良くてですね。
もしかしたらちょっと女子目線にはなっちゃうかもしれませんが、男性が読んでも学びがある、アラサー女子の、恋愛と将来とお仕事の絶妙に辛いけど大変だけど、リアルなバランスを描いた小説で、めちゃくちゃ本当に大傑作だと私は思ってるんですよ。
それこそ疲れた時に読み返す本の一つなんですけど、その中で描かれてる恋愛のあり方とか、将来へつながるかどうかみたいな話もとてもリアルだし、こういうことみんな考えるんだなみたいな恋愛、特にパートナーを選ぶような段階においては、すごく考えられることすべてが描かれていて、とても面白いので是非読んで欲しいです。
三宅:単純に読み返したら流川がかっこよすぎて。流川の彼女になりたいというよりは、私は流川になりたかったんだ!っていうのに気付いてですね。ストイックに生きたいみたいな気持ちになって、流川派になりました。
【以上です、ありがとうございました!】
三宅さんの新刊『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術』発売中です!!!
(猫Match!もどうぞよろしくお願いします)
【10月のマッチング読書会(追加・変更される可能性があります)】
10/12(木)39歳以下限定 朝井リョウ『何者』
10/22(日)45歳以下限定 ミヒャエル・エンデ『モモ』(昼開催)
10/14(土)45歳以下限定 川上未映子『愛の夢とか』※オフライン開催
会場:名古屋・金山 TOUTEN BOOKSTORE(募集開始前)
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