ホラー映画と恐怖について語る

少し前にホラー映画を色々観まくっていたので、語ろうと思う。そのなかで一番怖かったのは、

『イット・フォローズ』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作品)だった。※ネタバレ注意
人のような姿をした、それ(IT)が、ターゲットの身近な人間の姿や声を借りたりしながら(都市伝説の八尺様みたい)、ゆっくりのっそりしたペースで追いかけてくる。べつに『それ』はすごく強いとかってわけでもない。しかしつかまったら何の因果か、めちゃくちゃな姿で死ぬことになる。ちなみに誰かと性交渉すれば相手に追跡対象が移るし、ヒロインも移されたクチだ。
追跡対象になったヒロインは、『それ』に追いつかれないようにペースを計算して休みながら、車で逃げ回る。
まあ色々あって、『それ』は何なのか分からないまま終わる。


この映画は、私にとって、とにかくめちゃくちゃ怖かった。
理解できない理不尽なものに、人間はやっぱり本能的な恐怖を感じるのだと思った。
たとえば、『呪怨』は、この世に未練を遺して死んだ霊が、家を祟る。理解できる。
『チャイルドプレイ』は、人間の手によって悪魔?を召喚し宿された人形・チャッキーが暴れまわる。理解できる。
もちろん、自分の身に降りかかったら嫌だけど、完全に筋が通ってはいる。
ゆえに、あまり怖くはない。原理が「わかる」からだ。
殺人鬼系も、ゾンビ系も、悪魔系も然り。ハラハラするし、うわーってなるけど、本能に訴えてくるような「恐怖」とは違う。
『ミザリー』や『キャリー』など、「人間が恐ろしい」系のホラーも、もちろん理解できる。共感すらしてしまいそう。(一番怖いのは自分か)

しかし、何も悪いことしてないのに、よく分からないものが何の理由もなく自分を追いかけてきて、身近な人間の声色を真似てドアを開けてもらったりしてまで殺そうとしてくるのは、たまらなく不気味で、わけがわからなくてじわじわと怖いのだ。
人間は不可解なものを怖いと思う。幽霊が怖いのは、「よくわからない」からだ。
怪談でも、
「後で聞いた話、三年前にここで死亡事故が…。」
なんて言われると、理由がわかってしまった分、一気に怖さが半減してしまう。そもそも死者をエンタメ化するのは倫理的にどうなんだろうという思いもあるが。
求めているのは、おどろかしでもスプラッタでもなく、私はもっとこう、不可解で不気味なものにゾーッとしたいのである。

そんな本能的な恐怖についてはおいといて、他に面白かったホラー映画は、
『ファイナルデスティネーション』。
死を運命付けられた人々が、あらゆる死のピタゴラスイッチから逃げ回る。
つまり、運命との戦いだ。死の予感を覚えるような装置(それはハサミだったり、コードだったり…)が画面に映ると、「うわやばいやばい」ってなる。
ハラハラドキドキしておもしろかった。また、死に関する哲学的な言葉が心に残った。

殺人鬼系では、
『スクリーム』が良かった。「ホラー映画あるある」を、パロディ的にたくさん登場させていて、そこが面白かった。
「カップルは真っ先に殺される」とか、登場人物が言っちゃうのだ。
たしか20年以上前の映画だけど、すでにこの時点でホラー映画のセオリーが完成され、メタフィクション的な笑いが存在したのだと、ホラー映画ニワカ勢の私は感心したのである。

ゾンビ映画のはしり、ジョージロメロ監督の
『ゾンビ』
もとてもよかった。
現代のゾンビのイメージは、この作品がもとになっているそうだ。
『桐島、部活辞めるってよ』の、ゾンビ映画好き少年も、作中で、
「ロメロくらい見ておけ」
なんて言葉を吐いている。
中学時代にバイオハザードにハマった私としては、いわば聖地巡礼みたいなものである。

肝心の内容だが、主人公たちはゾンビに包囲されながらショッピングモールで生活する。その様子はなんだか楽しそうにすらみえた。
ゾンビたちは生前の生活を想像させる見た目で、動きも鈍く、壁にぶつかったりエスカレーターにつっかえたりしていて、可愛かった。
某大人気ゾンビ映画の登場人物が、「いまどきのゾンビはマシンガン持ってたりする」と言ったが、時代とともにゾンビも変化を遂げてきたのだと、興味深く思った。

良いなあ。

そんなわけで、不可解系のじわじわ怖いホラー映画を知ってる方は教えてくださると幸いです。

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