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あらびはなしを知ってください

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私の故郷には多くの人が知らない不可解な現象、怪異が多々存在しています。  それらは昔からの風習やしきたりで守られていたり、人目につかない場所でひっそりとしていたり。  この話を読…
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#ホラー小説部門

あらびはなしを知ってください 第六話【むーち】

あらびはなしを知ってください 第六話【むーち】

あらびはなし②
・ノリコさん 女性

 最近実家で集まることがあって、久しぶりに家族みんなでテーブルを囲んでいたんです。父と母と私と弟の四人で。
 お酒なんか飲みながら、ワイワイ思い出話をして楽しんでいました。

 酔いも回ってきた頃に

「██ちゃんって覚えてる?」

って話になって。

 皆その名前に心当たりはなくて

「友達?」

 なんて聞いていたんですけれど、どうもしっくりこないんですね

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あらびはなしを知ってください 第五話【いちち】

あらびはなしを知ってください 第五話【いちち】

 ここまで紹介した話は、ほんの一部に過ぎない。
 とりあえず沖縄では今も独特な風習やしきたりが残っており、それに関連する怪異も根付いているのだという事を理解して頂けたと思う。
 そこを理解して頂ければ、日本全国どこにいたとしても、沖縄、古くは琉球に伝わる怪の一端に触れることができるのだ。

あらびはなし①

・ヒロシさん 男性 

 その公園は高台にあり、近くには学校がある。別に古くからある公園と

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あらびはなしを知ってください 第四話【ゆーち】

あらびはなしを知ってください 第四話【ゆーち】

たっくぁいむっくぁい

・主婦 安里早希さん 女性

 大学生時代に付き合い始めた夫と結婚して10年目になる安里さんは、中古の一軒家を購入した。
 ローンの支払いなど今後の不安もあったが、二人とも仕事が安定してきたし、夫はとても優しく、共働きで働く二人の稼ぎを合わせれば生活に大きな支障が出るわけでもない。
 子供ができる前に、生活の拠点を安定させたいと二人で相談して購入に至ったのだ。

 家に住み

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あらびはなしを知ってください 第三話【みーち】

あらびはなしを知ってください 第三話【みーち】

いーみりしぇーみり

・あんまーくーとぅ【お母さんだけよ】

 子供はか弱い。
 夜になると、外には有象無象のマジムン (魔物)が徘徊する。
 マジムンは子供と目が合うと、そのマブイを取ってしまうのだという。
 無防備のまま外に出てしまい、それらに襲われると大変なことになるであろう。

 どうしても子供を連れて、夜に外出しないといけないときに母は言うのだ。

「あんまーくーとぅー、あんまーくーとぅ

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あらびはなしを知ってください 第二話【たーち】

あらびはなしを知ってください 第二話【たーち】

ゆくしむにー

・マブイ【魂】
 沖縄が好きな人であれば、一度は聞いたことがあるかと思う。沖縄の怪談に欠かせないもの。それがマブイである。
 マブイは、ふとした拍子に【落ちる】のだ。
 心から嬉しくて飛び上がるほど喜んだとき、この世の終わりかと思うほど悲しく辛いとき、口から心臓が飛び出すのではないかというほど驚き慄いたときなど……。
 感情が一気に揺れ動くとき、マブイは身体から落ちてしまう。
 一

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あらびはなしを知ってください 第一話【てぃーち】

あらびはなしを知ってください 第一話【てぃーち】

うとぅるさむん

・ウガンジュ【拝所】
・会社員 宮城龍斗さん 男性

 もう亡くなってしまった祖父(宮城清光さん)は昔から親戚の方や地域の方々に、色々と変な相談をされる人でして。
 でも、ユタ(霊媒師)ではないんです。
 祖父は幽霊が見えるわけでもなければ、お祓いなんてことも出来ません。ただ、色んなことを知ってるだけなんです。知識が豊富ってだけ。
 昔からの習わしや、しきたり、ウガミ(祈願)ごと

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あらびはなしを知ってください 第0話

あらびはなしを知ってください 第0話

前書き※特定を避けるため人物名など細かな部分を一部改変しています。怪異の内容はそのまま記載していることにご留意ください。
※沖縄独特の風習や方言、言い回しなど、通常の言葉使いとは違った部分がありますが、ご了承下さい。

 このままではクソみたいな人生で終わる。
 そう考え始めたのは社会人になって三年目の夏だった。
 週末には友人と居酒屋で仕事の愚痴を言い、文句をいいながらもまた仕事に行く。やりがい

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