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「関西女子のよちよち山登り 1.5 次の山に向けて」

前の話 / 次の話

 前回の金剛山登山から約三週間。そろそろ次に登る山を考えなければならない。

 登和子は今後、最低でも月に一回は山に登りたいと考えていた。

 そう決意する一方、本音を言えば、季節ごとに一回、いろんな山をハイキング感覚で登るくらいがちょうどいいとも思っている。

 しかしそれではいけない。自分の心に従うと、また金剛山の地獄を見ることになってしまう――。

 
 金剛山からなんとか下山した翌日から、登和子は強烈な筋肉痛に苦しめられた。おしりのサイド、太もも、ふくらはぎ、足首をはじめとする下半身だけでなく、なぜか動くと全身が痛い。 

 筋肉痛は一週間続いた。

 そもそも登和子は運動神経があまり良くない。
 中学、高校の体育の五段階評価は大体三だし、部活動にも参加していなかった。短大でも特にサークル活動をしておらず、社会人になってからは駅までの道や散歩、買い出しくらいでしか歩いていない。

 登山以前に、圧倒的に運動するための筋肉が不足しているのだ。

 何かトレーニング方法はないかとインターネットで調べてみると、“登山のための筋肉を鍛えるには、月に二回、最低でも月一回は山に登るのが一番”と書いてある。

「そんなあほな!ちょっと登っただけで全身バキバキになるレベルの人間に何ゆーてんの?」

 もちろん、普段から行えるトレーニングも紹介されていた。一駅分歩く、エレベーター禁止、階段を使う、スクワットなど。ただそれだけでは、筋肉痛にならずに登山ができる、登山に適した体にならないようだ。
 そのため、登和子は毎日スクワットなどのトレーニングをしつつ、特別トレーニングを兼ねて、月一回登山をすることにしたのだった。

「次なあ……次の山なあ、どうしよっかな」

 うーんとうなり、登和子は本棚から一冊の本を取り出した。金剛山に登ったあとに古本屋で買った、関西近郊のハイキングの情報がまとめられているガイドブックである。
 金剛山のページを開く。金剛山の標高は一一二五mとある。これだけの高さを一気に登るのだから、初めての山登りには案外きつかったのかもしれない。

 もっと標高が低く、かつ登和子の自宅がある京橋から行きやすそうな山はないか。

 さらにどうせ行くのなら、景色が良かったり、面白かったりするところなら尚良しだ。

 ガイドブックをぱらぱらめくり、ぴったりの山を発見した。

 交野山だ。

 登和子は週末の土曜日に交野山に登るべく準備を始めた。


                     (1.5 次の山に向けて-終)

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