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読書記録~つるつるぴかぴかの愚かさ~

「彼女は頭が悪いから」 著:姫野カオルコ
を読み終えた。


読み終えた後、あまりにも気持ちにまとまりがなくなったから
いつもB5ノートに書いている読書記録の感想がめちゃくちゃになった。
B5ノートには収まりきらない私の感情と作品について調べた事を
ここに備忘録として残しておく。

本書は実際に2016年に起きた東京大学学生による集団強制わいせつ・暴行事件に着想を得られ2018年に出版された作品。
話題になっていた本なので読んだことがある人も多いだろう。
皆さんどうでした??
最高に後味が悪く、なのにこの先も記憶に残っていくこと間違いなしの作品ではなかったでしょうか??少なくとも私はそうでした。

とにかく作者が描き出す登場人物の心理描写がすごい。
あまりにもリアルで読んでいるこちら側も事件の当事者かのように錯覚してしまう。それほど本編の随所で感情を揺さぶられてしまう。

加害者側である東大生たちのほとんどが日ごろから当たり前に
「与えられる」環境に居た者たちである。
そんな何不自由のない環境で育った彼らの「当たり前」とする価値観や自意識は世間一般の感覚とあまりにもかけ離れており、自分たちのしでかしたことにいまいちピンと来ていない様はもう怒りを通り越して恐ろしかった。

「これが罪というなら、そうなんでしょう」
と加害者のひとりが言うこの言葉からは
自分たちが起こした事の重大さの理解や被害者女性に対する反省など
一切期待できないことが伺える。

作者はそんな東大生たちの歪んだ自意識を作中で「つるつる、ぴかぴか」と
表現している。言葉の響きの純粋さと実際に起きている愚かしい実態の温度差がとても気持ち悪い。だからこそ表現の仕方に感服した。

また、本作品は事件が起こるまでの経緯が詳細に描かれており「事件」だけを見るのではなく背景に何があったのかを考える必要性があることも作品から感じられた。
何も知らず「起きたこと」だけを見て心無い言葉を浴びせる第三者にはなりたくないと強く思う。

読み終わった後、作品について少し調べたところ、
「題名は、被害者女性を暴行した心情について問われたさい、加害者学生のひとりが公判で実際に口にした言葉から取られているという」
(wikipediaより)
とあるではないか。
衝撃過ぎてスクロールする指が動かせなくなった。

そして作品の扉絵について。
作品名は「きこりの娘」。
作者はジョン・エヴァレット・ミレイ。(代表作はオフィーリア)
貧しい少女と裕福な少年の悲劇的関係を語った詩をもとに描いたのだそう。

そう。読んだ人ならピンときたであろう。
まさにこの「彼女は頭が悪いから」に出てくる主要登場人物
2人の関係性を表すのにぴったりな作品なのだ。

緻密に作られているなぁと調べれば調べるほど感心する。


総じて、後味は悪いが読んでよかった作品だった。
久しぶりに感情を揺さぶられた作品と出会えた。

色んな人と出会うなかでただ流されるのではなく、
出会いの中で今自分は何を考えるべきなのか、何を学ぶべきなのかを考え続けたいと思う。




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