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ある朝に起こった特別な出来事について

6月のよく晴れた朝のこと。子どもを保育園に送った後で、自宅の最寄駅のホームで電車を待っていた。電車接近のアナウンスが流れ、スマホを閉じたその時、ホーム上で隣に立っていた女性が、ふらっと前方によろけて、そのまま空中で前転するようにして線路に転落した。一瞬だった。 転落した女性は仰向けに、レール上に横たわる状態になった。気を失っているようで身動きしていなかった。電車は音を立てながら入線し、こちらに迫ってきていた。 恐ろしいことだけど、その時は何かを考える時間もなかった。僕はそ

    • 20年ぶりのお月さま

      保育園の送迎。15分ほどの道のりを次男と歩きながら、子どもの話をきく。とりとめのない話。今夜の晩ごはんのこと、最近推しのポケモン(ガオガエン)のこと、路上でぺったんこになった虫のこと、空に浮かんだお月さまのこと…etc 5歳児の観察力・発想力は侮れなくて、思いもよらないことを感じていたり、考えているから面白い。 子どもの話をきいていると、高校時代のI先生のことを思い出す。授業中に唐突に息子さんの話を始める先生で、子育てをしていて驚いたことや感動したエピソードをよく話されてい

      • この春に変わったこと

        今春は身の回りで色々な変化がありました。 仕事では、異動の対象となり、学生支援係を離れ、教務係へ。学生支援は5年半担当し、学生の経済的な支援や課外活動の支援などを担当しました。特に、課外活動の支援については、コロナ禍で学生の活動が停滞するなか、学内の活性化に力を入れて取り組みました。親しい学生の間では「佐々木さんは遊びすぎたから別の部署に飛ばされた」と噂されているようですが、あながち間違いではないのかもと思っています。 異動先は教務係。授業やカリキュラムを担当する、大学の

        • 38+1

          先日39歳を迎えました。 メッセージをいただいた皆さま、ありがとうございました。 39歳になった日、昨日まで38歳だったことに気がつきました。 あっ、38(ミツバチ)の歳だった、って。 昨夏、職場の同僚と「大学の屋上で養蜂やったら楽しいよね。」なんて軽い会話があって、それをSNSでつぶやいたら、多くの学生から「いいね」を頂き、ある先生から「一緒にやりたい」というありがたいお声を頂き、プロジェクトがスタートしました。 使われていない大学の屋上を活用し、養蜂をする。採れたハ

        ある朝に起こった特別な出来事について

          【東京駅のこと】

          「たんけん絵本 東京駅」 子ども達の一番のお気に入りの絵本である。 この絵本には、東京駅に乗り入れている路線や車両、駅舎の建築やその歴史、オススメスポット、美味しい駅弁 …etc  東京駅の魅力がたっぷりと書き込まれている。また、その1つ1つが水彩で丁寧に描かれていて、鉄道好きの子どもはもちろん、大人が読んでも楽しめる絵本だ。 この絵本をもって、東京駅を旅しよう。 少し前のこと。東京駅とその周辺を歩いて回る旅をした。新幹線や在来線のホームで写真を撮り、僥倖通りやKIT

          【東京駅のこと】

          大切なものを片づけること(2022.8.16)

          このお盆は、連日、実家の片づけをしていた。 浜松市内にある実家は、現在、空き家となっている。おととしの12月に主を失ってから、中の空気が澱み、不思議なほど薄汚れ、痛んでいった。そのスピードは想像以上に早い。だから、朽ちてしまう前に家を空っぽにして、売りに出さなくてはいけない。そのための片付けである。 家一軒分の家財はとてつもなく膨大だ。食料品、食器・調理器具、衣服・靴、家具・家電、寝具・敷物、書籍、思い出の品々…etc。この片づけを始めて、かれこれ1年半以上が経つけれど、

          大切なものを片づけること(2022.8.16)

          4カ月の育休を終えて(2019.12.31)

          育休がほぼ終わりました。 約4ヵ月の専業主夫としての生活は、住処や家族こそ変わらないものの、働いている時とはまるで異なるものでした。家事と育児に追われながらも、主体的で変化に富んだ生活は、さながら学生時代の長旅のようでもありました。だから、職場復帰を間近に控えた今は、その長い旅を終えて、帰りの空港に向かうバスに揺られている時のような、ぼんやりと、ふわふわした心地でいます。 本当にあっという間でしたが、他では得難い経験・成果がありました。育休取得を認めてくださった職場、応援し

          4カ月の育休を終えて(2019.12.31)

          父と母の障害、それから子育てのこと(2021.2.27)

          昨年末に母が脳梗塞を患った。命の危険は免れたとはいえ、後遺症の右半身麻痺・高次脳機能障害で、介護度は最も重たい「要介護5」と判定された。今も意思疎通が難しく、3か月間の病院でのリハビリを終えた後も重たい後遺症は残る見込みだ。 母が倒れる5日前、母からLINEで「お父さんを父親として見て、接してほしい。」とメッセージがあった。私の父は35年前の交通事故で重たい障害を持った人で、母からそう言われたのは初めてではなく、昔から繰り返し言われ続けてきたことだった。確かに、小さい頃から

          父と母の障害、それから子育てのこと(2021.2.27)

          家族と孤独について(2021.12.30)

          朝、器にご飯をよそってお茶を入れると、子ども達がそれを大事そうに抱えて運んでいる。こぼしたり、つまみ食いしたり。まぁ多少は許してくれるだろう。そう思って、この仕事は子ども達に任せることにした。 11月の終わりに母が亡くなった。昨年末に脳梗塞を患ってから、病院や施設を転々としながらリハビリを続けていた。半身不随と失語という重度の障害を受け入れ、意思疎通も少しずつできるようになって、これからの暮らし方を模索していたところ、心臓発作で逝ってしまった。何ともあっけなかった。 果た

          家族と孤独について(2021.12.30)