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ねずみ屋【#シロクマ文芸部 】

「銀河売りのねずみたち」のお話はじまりはじまり〜。

* 

長年愛されてきた「ねずみ花火」
そのねずみ花火を作っている会社「ねずみ屋」では
毎日沢山のねずみ達が花火作りに勤しんでいる。
ここでは働く誰もが花火作りの仕事に誇りをもっていた。

ありとあらゆる花火を作っているねずみ屋は
足元でくるくる回る「回転花火」も作っていた。
今でこそ知らない者はいないこのねずみ花火だが
実は元々はこの名ではなかった。

「銀河」

これが回転花火に最初につけられた名だった。

中心に渦をつくるように回転しながら火花が散る様子が
美しい銀河に似ていることからその名が付けられたのだ。

しかしねずみ屋の予想に反して、銀河は当初全く売れなかった。

大きく回転する花火は美しく、まさに銀河そものなのだが
正直「それだけ?」というのが世間の反応だった。
みんな興味本位で一度は購入するものの、銀河の単調な動きに
すぐに飽きてしまうというのが原因だった。

「こんなに綺麗なのに…」

銀河の素晴らしさをみんなにもっともっと知ってほしかったのに。
ねずみ達はすごく悲しかった。

だが、ねずみ屋の社長は諦めなかった。
みんなも社長の言葉を信じ、銀河の為にもう一度考えることにした。
美しいだけではない、何かユニークなアイデアはないか…

それからは試行錯誤の日々が続いた。
みんなで色んな意見を出し合い、回転についての研究を重ねていった。

そうしてやっと生まれたのが「ねずみ花火」だった。

火をつけると鮮やかな火花を吹きながら高速回転し
チョロチョロと動き回る様子はまさに「ねずみ」
ねずみ花火の名前はもちろんこの動きからとった。
また銀河の時の様な一定の動きではなく
予測不能な動きで人々を楽しませる工夫も忘れなかった。
こうして新たな回転花火「ねずみ花火」が生まれ
これが大ヒットとなった。

しかし、ねずみ屋の社長は言う。

あの銀河がなかったら、このねずみ花火は決して生まれなかっただろう。
だからこそ皆さんにはぜひ銀河のことも愛してやってほしい、と。

後に「銀河」と「ねずみ花火」はセットでも売られるようになった。
調べてみると、ねずみ花火単体だけよりも銀河とのセットの方が
はるかに売れていることがわかったのだ。

高速回転で予測不能な動きを楽しむ「ねずみ花火」と
優雅に回る美しく華やかさが魅力の「銀河」
どちらも互いの良さを引き立て合うことでそこにまた
新しい世界が生まれる。
だからこそねずみ屋は銀河を守りたかった。
個性豊かなあらゆる花火を知る、花火屋として。


そんな「ねずみ屋」は今日も心を込めて
花火を作り続けている。

…めでたし、めでたし。

さて、明日はどの紙芝居にするかな。
そうだ。街クジラのお話もいいかもしれないな。



【おしまい】

***

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ではまた。

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