西洋哲学と東洋思想を横断してしなやかに生きるための本
自宅待機中です。与えられた、ありがたーい時間✨
先週、本屋さんで運命的に出逢った(そういう時ありますよね)、オーケストラ指揮者の伊藤玲阿奈さん「『宇宙の音楽』を聴く」が衝撃的に良い本でして、
私がこれまでぼんやーりと考えてきたことを、私の数十倍の読書量と考察と的確な言語化によって、ドンピシャりと誰にでもわかるように解説してくれている!
参りました!という感じです。
この本を紹介したいというのが目的ですが、折角の機会なので、「西洋哲学と東洋思想を横断する」という共通項で、もう2冊、私の愛する本たちを紹介します。
なぜ今、東洋思想なのか?
2022年は「あり得ない」ということがたくさん起こりましたね。時代は変わり目にあります。そして、今、東洋思想が見直され始めています。
その背景には、科学、資本主義、民主主義といった近代西洋文明に対する疑問があります。「このままこの生活を続けて、人間は、地球は大丈夫なのだろうか?」という不安をもとに、全く別の価値観で数千年を生きてきた東洋の人々の思想が注目をされ始めているのです。
自分を中心に据え、理性的に物事を解明していく、西洋。
自分を自然と一体化させ、身体感覚で悟っていく、東洋。
東洋にありながら急速に西洋文明を受け入れた、私たち日本人のこれからが問われてもいます。
「東洋におけるヒューマニズム」吉川幸次郎
1冊目は初版が昭和52年という古い本、
「東洋におけるヒューマニズム」吉川幸次郎(講談社学術文庫)です。
大学生協の本屋で出会い、私の人生を180度転換させてしまった罪深き本(笑)。
それまでの私は、クラシック音楽で育ち、モネやミュシャといった西洋近代絵画を愛し、イタリア、フランス、イギリスを旅行先として選ぶような西洋大好き女。
にも関わらず、西洋哲学の本を読み漁ってみても、
誰の言葉も心に響いてこないと、その頃、半ば焦っていた記憶があります。
そんな時に出会ったのがこの本。
「私が探していたのは東洋なんだ!!」、20歳の私は気づいてしまいました。
そして私は大学を卒業してから書道を学び直すことになります。東洋思想は本で読むだけでは足りず、体で理解するしかないと知ったからです。
寧月の出発点、ぜひ読んでみてください。古いながら、とても読みやすいです。
「人類哲学序説」梅原猛
名著です。日本文化を語る上で外すことのできない、亡くなってしまった梅原猛さんの「人類哲学序説」(岩波新書)。
この本は何と言っても、梅原猛さんの人生の集大成であると同時に、2011年原発事故を受けて、梅原さんが「どうしても人類に伝えなければならない」という思いで書かれた本です。
これから本論を書くつもりで「序説」と題されたこの本の、本論は書かれることがなく、梅原猛さんが亡くなってしまったことを本当に残念に思います。
日本贔屓なところもある本ではあると思いますが、それも梅原猛さんの情熱であり、愛だと感じています。
「『宇宙の音楽』を聴く」伊藤玲阿奈
そして、異色の本です。何が異色かと言えば、著者はオーケストラの指揮者。哲学者でも文化論者でもありません。そして、1979年生まれ!私のわずか3つ年上。
タイトルを目にして、「この人は東洋の思想感覚がわかっている人だ!」という直感が働き、本屋ですぐに購入しました。私も書道をしていて、「宇宙とつながる」感覚に近い経験を得たことがあるからです。
「近代西洋OS」「タオイズムOS」など私たち世代に分かりやすい語彙で歴史を振り返り、私たちの思考回路が今、どうなっているのか、その何が問題なのか、を丁寧に紐解いてくれます。
私が以前のブログ「最後は『魂』が入っているか」で拙い文章で記したことも、「インドOS」の章で、ずっと分かりやすく書いてくれています。
ご自分の成功と挫折の経験があるからこその説得力のある文章。俯瞰的でありながらやさしく、コロナ後の世界で、私たちが”共に”どう生きていったらいいのかのヒントを与えてくれています。
音楽家であるというところが、いい。というか、音楽家だから、書けた本なのでしょうね。
「宇宙の音楽」を聴こう
さぁ、「宇宙の音楽」を聴きましょう。
簡単には聴けない。聴こうとすればするほど、聴けない。
でもね、これからはきっと、
目に見えないものを、見て、
耳には聴こえないものを、聴いて、
人間と人間が、言葉には到底ならないものを、感じあって、
生きていく時代、生きていくことができる時代、なのです。
それは、決して、「昔に戻れ」ということではなくて、
私たちが、頭と心と体を全部使って、これから探していくのです。
書道は「宇宙の音楽」につながっています。