大藏達雄

私は木地師の家に生まれ、のちに塗物の修行とデザインの勉強をしました。 原木を購入し、木…

大藏達雄

私は木地師の家に生まれ、のちに塗物の修行とデザインの勉強をしました。 原木を購入し、木地作りから漆塗りまでの一貫制作をしています。 漆で実験しているような日々のことなど書いてみたいと思います。https://www.ookura-tatuo.com/

マガジン

  • 器 いとおかし

    長く漆器作りをしていますが、器は中の物を大切に守るものです。そして、食文化の豊かな海から、器は誕生してきたのだろうと思います。

  • 本棚から

    メモ代わりでもあります。様々な本の感想などまとめています。

  • 散歩びより

    心の風通しを良くしたいですね。 自然や文化に触れながら、の~んびり歩いてみましょう。

  • 朱(丹生)をめぐる素人考え

    私は根来を手掛ける漆作家で、朱に関心がありました。古代に朱(丹生)は金よりも高価で貴重な鉱物だった、と聞きます。先人の書籍や身近な所から、素人ながら考察してみます。

最近の記事

ただいま、キーボードのテスト中

日差しがすっかり明るくなりました。そろそろ冬眠終了かな? 久しぶりなのでちょい肩慣らし、ぼつぼつとキーボードを打っています。 5月1日再開予定で、中身はまぁ春がすみのかかったものになるでしょう。 今年はホタルイカの豊漁とかで、干物屋さんは新作の塩辛を作りました。 折敷は大藏作の漆器で、フキの葉型のお皿は有本空玄氏作で灰釉のやわらかい緑色がいいですね。

    • 冬眠のおしらせ

      二年十ヶ月という年月は長いのか、短いのでしょうか…? 新型カゼのために経済状態が厳しく、 いくらかでも打開したいと続けてきたnoteでした。 ただそれにも矛盾と限界を感じ、 ここらでしばらくお休みを頂こうと思います。 ゴーストライター お気づきの方は多いかもしれません。「大藏達雄」というタイトルですが、書いているのは本人ではなく、家内である私が代筆しています。大藏作だと思われていた方には、ほんとに申し訳ありませんでした。 とはいえ、漆器制作に関する記事は、大藏の話を

      • 木の器

        長年しっかり使い込まれた漆器に、 細かなヒビを見つけたことはありませんか? 漆器のヒビの主な原因落としたとか物理的な原因もなく、長年使っていて徐々にヒビが入った場合、器の中ではどんなことが起こっていたのでしょうか? 例をお椀にすると分かりやすいでしょう。漆器の場合、熱々の味噌汁を注いでも手を触れないほど熱くならないのが利点とされます。 けれど、当然ながら器はわずかに膨張します。そして、表面の漆と中の木では膨張率は違い木の繊維が動きます。お椀が長年使用されるということは、

        • 「愛知」の豊かな醸造文化 (下)

          上、中の前2回では、八丁味噌.白醤油(白たまり).酢やみりんを含む愛知の調味料のお話を紹介してきました。 今回は、三人の講演者によるパネルディスカッションです。数か月前なので、どなたがどんな発言をしたのかまでは、記憶にもノートにもありません。ただ全体として印象に残った話を、少しお伝えできればと思います。 〔 パネラー 〕 ○ カクキュー 企画兼品質管理部長   野村健治氏 ○ 日東醸造株式会社 代表取締役社長  蜷川洋一氏 ○ 小判天はなれ 日本料理一灯     長田勇久氏

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        マガジン

        • 器 いとおかし
          23本
        • 本棚から
          6本
        • 散歩びより
          14本
        • 朱(丹生)をめぐる素人考え
          3本

        記事

          「愛知」の豊かな醸造文化 (中)

          今回は醤油と愛知の郷土料理の講演です。 両極の醬油を使い分ける愛知の醤油文化お話しされたのは、日東醸造社長の蜷川氏です。 たまりはよく耳にします。濃くて風味が強く、お刺身や握りずしに合うようです。前回紹介した豆味噌(八丁味噌)の樽の上にたまった液体がたまり醤油なのだとか。 白醤油(白たまり)は一説では、金山寺味噌の上澄みが調味料として使用されのが始まりとされており、開発されたのは幕末から明治期だそうです。大豆から作られるたまりとは違い、小麦を主原料(90%くらい)に作ら

          「愛知」の豊かな醸造文化 (中)

          「愛知」の豊かな醸造文化 (上)

          8月でしたが、上記タイトルの講演会に行きました。 日ごろなじんでいるのにそう深く知っている訳でもない「醸造」について、愛知県の生産者の方たちから興味深いお話を聞くことができました。 主催は和食文化国民会議で、2013年和食が世界文化遺産に登録され10年目にふさわしい充実した講演でした。 醸造とは「醸造といえばお酒だ…」とつい顔がほころぶのは、私くらいでしょうか。実はお酒だけではなかったのです。醸造とは発酵作用を応用して、味噌.醤油.みりん.酢などを作る工程を意味します。(日

          「愛知」の豊かな醸造文化 (上)

          ~とたわむれる器

          人に秘められた力があるように、器にも意外な力があるかもしれません。 夜な夜な酒と戯れている私のファンタジーかもしれませんが、 何かとたわむれる器は微笑みをくれる気がします。 器はわたし大藏達雄の漆器作品です。(イチョウ皿は除く)                 「骨 董 と」では、黒の長板(擎子)に古い皿を乗せています。 「ミニカーと」では、金彩の皿にミニカーを乗せています。 「稲穂と」では、水鏡にした皿ですが、器にはピントが合わずぼやけ気味。 「光と」では、金彩の長板(擎

          ~とたわむれる器

          本棚から … 読書の秋に3冊

          やっと朝晩は涼しくなって、秋らしく落ち着いてきました。 最近読んで印象に残った本を3冊紹介します。 身近な植物の賢い生きかた     稲垣 栄洋 ( ひでひろ)著/ちくま文庫/2023年6月発行 植物的と言えば、ただ受け身で優しく… こういうイメージが、この本を読むとひっくり返されます。 「植物たちの生存戦略」というフレーズが帯にありますが、生きる厳しさは植物も同じだろうか… いや、動物のように自由に移動できないので手段は限られていて、植物はトリッキーな仕掛けまで各種用

          本棚から … 読書の秋に3冊

          菊の節供(重陽の節供) … 9月9日

          もうすぐ菊の節供ですが、あまり知られていないようです。節供のわりには、何の行事も聞かないし… 3月3日はひな祭り、5月5日は端午の節句、7月7日は七夕…そして、9月9日は菊の節供。「1月7日の七草の節供」を加えると五節句です。恥ずかしながらつい最近知ったことですが、少しお話したいと思います。 五節供とは何かと参考になる和食文化国民会議のホームページから引用します。歴史とその意味について、見てみましょう。 中国には陰陽説という考え方があり、奇数を「陽数」とし偶数を「陰数」

          菊の節供(重陽の節供) … 9月9日

          伊勢信仰を支えた御師(おんし)+α (3/3)

          岡田先生の講義を聴いているうちに、御師についてどこかで聞いた話のように思えてきました。「各家を巡りお札を配り初穂料を納めてもらう」これはかつての木地師の氏子駆や氏子狩によく似ています。 どこまで関連があるのか不明ですが、私の妄想かもしれませんが、ご参考までにご紹介します。 木地師と惟喬(これたか)親王伝説まず木地師とは、木地屋 、轆轤師とも呼ばれ、日本各地で木の器を作っていた職人(職能)集団です。 平安時代のころから明治前まで、 全国の森を自由に移動し、樹木を伐り加工し

          伊勢信仰を支えた御師(おんし)+α (3/3)

          伊勢信仰を支えた御師(おんし)+α     (2/3)

          前回は長くなったので、今回はあっさり行きたいと思います。とはいえ、御師はなじみのない言葉なので、説明は必要でしょう。気長にお付き合いいただけたら、たいへん嬉しいです。 伊勢神宮とは御師の話を進める前に、伊勢神宮について振り返ってみたいと思います。講師の岡田登先生の寄稿文の一部をご紹介します。 読んでいると、神宮に寄せる祈りが伝わってくるようです。 大山参り御師という言葉に出会ったのは、10年くらい前に丹沢の大山に行った時です。大山神社に向かう参道を歩いていると、「御師の

          伊勢信仰を支えた御師(おんし)+α     (2/3)

          暑中お見舞い

          暑中お見舞い

          伊勢信仰を支えた御師(おんし)+α             (1/3)

          7月1日の岡田登先生(放送大学非常勤講師、皇學館大學名誉教授)の「伊勢信仰を支えた御師」という講義を基にしながら、私なりに考えてみました。 「伊勢おしろい」は丹生(水銀)を加工して作られているので、その話が聞けるのではと期待したのです。が、2日間の講義のうち1日しか行けなかったので、丹生のことはよく分かりませんでした。ただ、素人ながら面白い考察にたどり着いたので、後ほど少し書いてみたいと思います。 講義を受けた感想は「知らないことばかり、伊勢神宮って、御師って、本当にすご

          伊勢信仰を支えた御師(おんし)+α             (1/3)

          あれこれ … 七 夕

          七月七日は七夕の日、子供の頃はこの歌をよく耳にしました。 見っけもの 笹を取りに行くと、朝顔が咲いていました。早起きは三文の徳を実感しながら、活けてみました。 七夕の節供 知識が乏しいので、和食会議「ご節供に和食を」の知恵をお借りします。 何十年かぶりに飾ってみましたが、ぱっとしません。お恥ずかしいですが、ご愛敬ということで… 五色そうめん そういえば素麵は七夕の行事食らしいですね。暑い時期だからだろうと思っていましたが、これにもいわれがあるそうです。 五節供

          あれこれ … 七 夕

          散歩びより … 清住緑地、丸 池

          梅雨時に水辺のご案内というのも、我ながらテーマの選択ミスかもしれません。けれど、心安らぐ風景であり歴史的にも興味深い場所なのです。 富士山の伏流水による湧き水の公園で、また歩いて10分ほどで一日100万立方メートルの水量を誇る柿田川湧水群があります。地元の人は湧き水を普通だと思っていることに、よそから来た私はとても驚きます。 境 川.清住緑地境 川 ここの正式名称は境 川.清住緑地ですが、私には境川がよく分かりませんでした。調べてみると、全国にたぶん50か所を超える境川

          散歩びより … 清住緑地、丸 池

          思い出 … 四つ椀

          若い時、今よりスリムでかっこいいお兄さん(?)だった頃の話です。親切な方のお力を借り木曽から伊豆に出てきたばかり、仕事もさほど軌道に乗っておらず、文句なしに貧乏だったころです。 沼津の一軒の骨董店、私の眼はあるお椀にくぎ付けになってしまいました。 出会いそれは四つ椀でした。漆の肌合いの経年劣化により、相当古いと思われました。四揃いでありしっかりした仕事なので、お寺の什器だったのかもしれません。また、ロクロ挽きや漆の刷毛目にも、人の手による温かみが感じられました。博物館や展

          思い出 … 四つ椀