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『フットボール風土記』の感想をみんなで書いてみた!【OWLオムニバス】

OWL magazineのオムニバス記事企画です!

この企画では、普段OWL magazineに寄稿しているメンバーだけでなく、読者を中心としたコミュニティOWL's Forestのメンバーにも書いてもらっています。

OWL's Forestでは、オムニバス記事への参加以外にもメンバー間の交流や、ラジオ番組の作成など様々な活動を行っています。

興味を持たれた方は、下のページをクリック!

さて、前回は「宇都宮徹壱」特集として、宇都宮さんとの初めての出会いをテーマに書きました。

今回も「宇都宮徹壱」特集です!

宇都宮さんが11月13日に刊行した『フットボール風土記』の感想をみんなで書きました。

それでは、今回のお品書きです。

ミドクショ感想文(中村慎太郎)
ミステリとして『フットボール風土記』を読んでみる(つじー)
ソースの色と味(shaker。)
三菱水島FCとデッツォーラ島根EC(KAZZ)
この章を設ける意図とは(豊田剛資)
宇都宮さん!次はこのチームの話が聞きたいです!(さかまき)

ミドクショ感想文

(中村慎太郎)

『フットボール風土記』

目次を見た瞬間に絶叫する。

そのくらいショックを受ける。

長く続く「出版不況」の中である。いや不可避かつ運命的な「出版縮小」と言べきかもしれない。出版業界が昔のような状態に戻ることは考えづらいからだ。

そんな中でこんなニッチな本が出版され、新宿紀伊國屋というドセンターの大書店に平積みされている。

目次を見てみよう。

三菱水島FCの特集から始まっているのだが……。

恥ずかしながら……。

ぼくは、三菱水島FCを知らない……。

名前なら聞いたことがある。いや、聞いたことがあるような気がする。そんなレベルである。水島といえば、『ビルマの竪琴』に出てくる水島上等兵くらいしか思いつかない。日本の地名であるかどうかすらも確証が持てない。

そんな状態でページをめくってみると、どうやら岡山県の都市で、倉敷市にあるらしい。どうやら地域決勝に出ていたクラブのようで、そうかそのあたりで見た名前なのかと思い起こす。もちろん試合は見たことがない。

サッカー界の売れるニュースといえば、ほとんどが久保建英関係という状況の中で、まさかの水島が第二章で紹介されている。本というのは非常に綿密に企画されているコンテンツなので、水島の記事が偶然第二章に来ることはない。何らかの計算があって、敢えて冒頭のほうに持ってきているのは間違いない。

というわけで驚きの構成となっている『フットボール風土記』なのだが……。

恥ずかしながら……。


未読なのである。

何故なら、ようやく書籍を入手できたのが昨日であったため、締切に間に合わなかったのだ。せっかくの紙の本だから書店で買おうとこだわったのがいけなかった。しかしながら、著者にとって、あるいは出版社にとって、紙の本が書店で売れること以上に大きなことはない。著者によっては、見かける度に自腹で一冊ずつ買っていくという人もいるくらいなのである。

というわけで、詳しい内容についてはこれから読み、感想を書き綴りたいと思うのだが、それは12月のOWL magazineに掲載するものとさせて頂きたい。

ぼくの感想は間に合わなかったのだが、OWL magazineの執筆陣や、OWL’s Forestのメンバーの皆さんが、既に本を読み終えて感想を綴ってくれている。ぼくはまず書籍を読んでから、みんなの感想を読んでみようと思っている。

『フットボール風土記』が面白かったとお思いの方、あるいは、読んでみようか迷っているので生の感想を知りたいという方は、是非ご覧あれ!

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中村慎太郎(なかむらしんたろう)
OWL magazine代表。FC東京サポーター。書籍『サポーターをめぐる冒険』がサッカー本大賞2015を受賞。stand.fmで『中村慎太郎のクリエイティブドライブ』を配信中。
著作:『サポーターをめぐる冒険』『JORNADA 1』『JORNADA 2』『JORNADA 3
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ミステリとして『フットボール風土記』を読んでみる

(つじー)

ミステリアスなクラブばかりだ。

どの章も冒頭を読み始めるとそんな感想が頭に浮かんできます。

『股旅フットボール』や『サッカーおくのほそ道』の時代と比べると、僕には社会人サッカークラブの個性がどんどん強くなっている気がするのです。『風土記』に出てくるクラブには、Jリーグを目指す、目指さないだけで単純に語れない多様性を感じます。もちろん大きな枠組みとしては従来通り、Jを目指すクラブ、目指さないクラブとして登場します。しかし目指すにしろそのアプローチの仕方が独特であったり、Jへ上がることを急がないクラブも出てきます。

Jを目指す目指さないに関わらず「このクラブはいったい何を目指しているのだろう?」と疑問を抱いてしまうクラブばかりです。何も知らない僕は、どのクラブにもどこかミステリアスな雰囲気を感じてしまいます。

そんな多様なクラブたちには、個性的かつ面白いエピソードがつきものです。宇都宮さんは全国を巡り、まるで敏腕探偵のようにその一つ一つを拾っていき、各クラブのベールをはがしていきます。

どのクラブもここで取り上げたいくらいですが、ここでは僕が特に気になったクラブを3つあげていきます。

まずはFCマルヤス岡崎です。どうやら企業クラブらしいとは聞いていましたが、具体的な内情を知るのははじめてです。Jを目指しているとは公言してないのにも関わらず、実績のある元Jリーガーを何人も補強しているこのクラブ。彼らは何を目指しているのか。その理由は章の最後に明かされます。

続いて、北海道十勝スカイアースです。僕の故郷である北海道のクラブというだけで、この章は何度も読んでしまいます。『股旅フットボール』ではとかちスカイフェアスカイ・ジェネシスという名前で登場していました。『股旅』の後、とんと名前を聞かなくなりましたが、突如リーフラスという会社が経営に参画し、瞬く間にクラブ規模を拡大していきます。そこで巻き起こる一人の男の壮絶な物語とクラブが陥った属人化の罠とは。心をうたれながらも考えさせられる章でした。

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最後は、クリアソン新宿です。本では最終章にあたります。自分たちのコンセプトにマッチする地域をホームタウンに選ぶというクラブの発想も独特ならば、そうして選ばれた新宿区の地域性も独特で興味深いです。多様な人々が根ざす新宿をホームにするクラブが最終章を彩るのは、多様性豊かなクラブを巡ってきたこの本の締めにはふさわしいと思います。

ミステリアスなベールが剥がされたとき、すっきりした読後感と、登場したクラブへの興味がより一層わいてきます。『フットボール風土記』、めちゃくちゃ面白い。晩秋の読書に是非おすすめです。

つじー
北海道コンサドーレ札幌サポーター。stand.fmで『コンスレンテつじーのサッカーお悩み相談室』を配信中。
主な執筆記事:『札幌サポ、韓国の要塞でACLに出会う
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ソースの色と味

(shaker。)

「フットボール風土記」を読了した。地域CLの死闘の様子で幕を開け、終章はクリアソン新宿というチームの2020年の姿を伝えている。

この原稿を書いている今、ちょうどJ3の座をかけた最後の闘いが繰り広げられている。

作者サイン本などの到着を楽しみにしている人のためにネタバレは極力控えておきたい。

楽しみは本を手にした時に。

JFLや地域リーグなど、J3より下のカテゴリーについては割と情報が少ない事もあって、情報発信に積極的な一部のクラブを除いて「その情報ソース(情報源)どこ?」と他チームのサポーター達が混乱して「我々も来週金曜にクラブと話し合うからそれまでわからない……」と当該チームのサポーターがすまなそうに答える様子を何度か見てきた。

そういう意味では書籍という形式だと速報性やリアルタイムの感じはインターネットよりは少し抑えめになる。

けれども「あの時あの人はこう考えてああしたんだ」という文献として非常に「フットボール風土記」は良い書籍だ。「ソースを出して」と言われた時に「フットボール風土記に書いてあった」と言えばひとまず相手は納得するだろう。

「良質な読み物」と「信頼できるソース」は必ずしも両立しない事の方が多い。

けれども、作者の宇都宮徹壱さんは徹底した取材と読み手を引きつける文章のバランス感覚でその両立を成功させている。
これは既にJリーグにあるサポーターも一読すべき本だと思うし、情報を得られてがっかりしたりはしないだろう。

ところで本の中でも取り上げられていたFC今治には、実はスタジアムグルメに「今治焼豚玉子飯」という美味しいメニューがあるのだけど、あの甘だれ風のソースはどういう配合で作られているんだろう……?

ソースどこですかー?!

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shaker。
スタグル愛好家。スタジアムグルメを食べ歩き、ご家庭で再現できるレシピを作り、同人誌を発行している。ジェフユナイテッド市原・千葉のサポーターらしい。千葉県出身。
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三菱水島FCとデッツォーラ島根EC

(KAZZ)

宇都宮徹壱さんの「フットボール風土記」を入手した。読みたいところはたくさんあったが、自分としては三菱水島FCについて書かれた箇所をとにかく読みたかった。あのチームは自分にとっても非常にシンパシーのあるチームだ。

このチームが以前、実質「熊代FC」状態だったことが本文にも触れられているのだが、当時の公式記録などを見ていると、実際にあのチームはそういうチームだった。

そして、そういうチーム構造を持つチームを自分はよく知っている。何処のチームかと言えば、他ならぬデッツォーラ島根ECの構造に非常に近いな、ということだ。

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あのチームも、実質個人商店状態だ。一応、運営法人はあるけれど、なかなか難しいようだ。自分はデッツォーラの内部事情など知り得る立場にはないが、恐らく今季はかなりキツかったのではないか。中国サッカーリーグ(以下、CSLと略す)の全てのリーグ戦が開催見合わせになった今季に限ると、試合らしい試合なんて、天皇杯予選しかやっていないはずだ。地域CL出場チームを決めるCSLチャンピオンシップにも不参加だったのだから。

話を三菱水島FCに戻す。自分は、ここを親しみを込めて(且つ昔からの癖で)「自工さん」と呼んでいる。そんな彼らが、2016年に全社を勝ち、地域CLの出場権を得て、あわやの快進撃を果たした。CSLの代表として、彼らを応援はしていたが、その一方で、仮に権利を得てもJFLには行けないんだろうな、とも思っていた。

「自工さん」には一発喰ってほしかったが、相手が悪すぎたし、地域CL(この年からそういう名称になった)の敷居もやや高すぎたのかもしれない。

今も「自工さん」は変わらずCSLの一員だ。彼らが山陰に試合をしに来た時、まれに観に行くことがある。ここのサポーターさんたちも応援に熱意が感じられ、清々しい応援をされるので、好印象で好きだ。

三菱水島FCがJFLにいた頃、SC鳥取と並ぶテールエンダーグループの常連だったこともあり、それ故に余計にシンパシーを抱いているのかもしれない。もちろん、そんなことはここのサポーター諸氏に言ったことはないけれども。

そんなわけで、取り急ぎ、三菱水島FCの項をどうしても読みたかったので、その項から優先的に読んだ。他の項はこれからじっくり読もうと思う。

で、読んでみて思うのだけど、だからこそ、デッツォーラ島根ECの取材をしてみてほしいと思ったりする。あのチームはそれこそ先述の通り、見事なまでの個人商店(それ故に、本当は元代表で、バイタリティの塊たる若三康弘さんがご存命の時に来ていただきたかった・・・)だし、それと来年もやるのなら、50歳にならんとする庄司孝というとんでもないお人(同期にペナルティのヒデがいるらしい)が未だに現役なのだ。

三菱水島FCを巡る文章から、違うチームを想起してみた。ちなみに、デッツォーラ島根ECは、本文終盤にも登場する福山シティFCにも接点のあるチームだ。

えっ?こんなの全然感想文じゃねえじゃんって?ハハハ、そりゃごもっとも。

KAZZ
今度久々にサッカー見に行けるので浮かれているおじさん。守備範囲はJ1から県リーグ、女子中国リーグまで手広く気ままに。相変わらず「楽しく、厳しく、いい加減に」生きている。今季鳥取ユニを5着もゲットしてしまい、どうしようかと悩み中。
主な執筆記事:OWLオムニバス記事『サッカー番組について思いの丈をみんなで書いてみた!』内の『アナウンサーと三大ギタリスト』
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この章を設ける意図とは

(豊田剛資)

この章がなぜあるのだ?これはあえて載せるのか?

新刊『フットボール風土記』のもくじが発表された時、僕はものすごく疑問に思った。

これまでの作品『股旅フットボール』や『サッカーおくのほそ道』では、Jリーグ参入またはJFL昇格を目指すクラブ、サッカーを通じた地域貢献をして行く企業クラブが歩む道に差し込む光と影を述べられている。

今回の『フットボール風土記』においても光と影を平等に述べるのであろう。

しかし、ただそれだけの理由なのかと色々と考えが巡ってしまう。

その章とは奈良クラブの物語・第7章だ。

2019年度の奈良クラブは何かとサッカーメディアの話題に上った。エンブレムを変更、GMに23歳の林舞輝氏を起用などといった新体制が大胆な方向性へと舵を取ったからだ。

特に注目したいのは、林舞輝氏のGMとしての起用だ。

彼が欧州トップクラスの戦術や理論を学んできたことを日本、しかもJFLのカテゴリーでどこまで落とし込むことができるのか、という点がある。

つまり、奈良クラブは所属するJFLのカテゴリーを選手や監督の修業の場として、結果云々よりも成長を促すクラブ理念を掲げたと言い換えてもよいと思う。

しかし、観客動員数問題が発覚し、然るべき処分が下った。

この問題が非常に大きく注目され、奈良クラブは四方八方で散々叩かれた。

ただ叩くだけ叩いて、根本的な問題点を見直さなくても良いのだろうか。

Jリーグ参入条件となる観客動員数のハードルを設けることイコール観客動員を集めないとプロクラブとして経営はできませんよ、というメッセージではある。ただ、JFLの観客動員数では至難の業だ。JFLのカテゴリーを如何にして注目されるようにし、人を集められるようにする点に関して各クラブの運営方法に任せられているが、Jリーグ組織として改善することはできないかと思う。

観客動員数問題が起きた奈良クラブの章をあえて設けるのは、宇都宮さんが読者へ向けて訴える意図が含まれていると思う。あなたはどう思いますか、と。

ちなみに、OWL magazineを読み始めて僕はサッカー旅に憧れ、その栄えある第1回目のサッカー旅は奈良クラブの試合を選びました。観戦した2019年JFL第3節・奈良クラブ対ホンダロックSCの試合は、観客動員数問題の告発された第1弾目の試合となりました。

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豊田剛資(とよだたけし)
OWL magazineを読み始めてからサッカー旅に目覚める。現在も社会人サッカー選手として現役でプレーしている。
主な執筆記事:『OWL magazineを読んで僕がサッカー旅へ出かけた理由 〜お礼文を送ったら記事を寄稿することになってしまった〜
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宇都宮さん!次はこのチームの話が聞きたいです!

(さかまき)

それにしても、宇都宮徹壱さんはとんでもない鉱脈を掘り当てたと思う。世界中見渡してもJFLや地域リーグほど面白いリーグはない。にも関わらず、このリーグに深い関心を持ち、定点観測したルポライターはほとんどいないからだ。しかも既に観測期間は15年。他の追随を許さないのも納得だ。さらにこの鉱脈、当分は枯渇することもないだろう。新刊『フットボール風土記』の後半戦で登場する福山シティやクリアソン新宿のように、第四世代が着々と上を狙っているからである。

そんなJFL、地域リーグ界隈で個人的にこれから取り上げて欲しいチームがいくつかある。宇都宮さん、いかがでしょうか。

「藤枝MYFC」
藤枝は既にJ3に参入したチームであるが、元々はネットオーナー制という非常に珍しいシステムを敷いたチームだったのを覚えているだろうか。現在はネットオーナー制というアイデンティティは失われ、地元企業が筆頭株主となりJの舞台で戦っている(創設に携わった小山氏は、現在は「おこしやす京都AC」の運営に関わっている)。あれよあれよとJリーグに参入した先で方向転換した藤枝が見据える未来や、沼津も迎えて4チームに増えた静岡県内での立ち位置など、今取り上げる価値があるチームではないだろうか

「ヴェルスパ大分」
2020年に初優勝を遂げたヴェルスパ大分。ユース年代での経験豊かな須藤茂光監督の指導の賜物だろう。このチームは元々は企業の名を関するチームだったが、Jリーグ参入を念頭に名称を変更した。県内にはJ1で戦う大分トリニータも在籍している環境の中で、Jリーグをどのように目指しているのか。これまでで一番ヴェルスパ大分に注目が向いている今。このタイミングで、ぜひ取り上げて欲しいものだ。

「FC淡路島」
「Jリーグに昇格するまで、1年でも昇格をできなければ解散」という今時テレビ番組でもないようなコンセプトでJリーグ参入を標榜したFC淡路島。現状、2018年シーズンからの3年間は優勝を続け、このままいけば来年は関西リーグで戦うことになる。地域リーグファンからすれば、荒唐無稽にも見える毎年昇格というコンセプト。その勝算はあるのだろうか。そして、地域リーグを観測し続けた宇都宮先生は、どういった目でこのチームを見るのだろうか。

他にも、『股旅フットボール』以来ご無沙汰となった「MIOびわこ滋賀」、北信越で力をつける「アルティスタ浅間」など、知りたいクラブはたくさんある。

このピラミッドの裾野は広い。JFLが中腹だとしても、麓は霞んでしまってよく見えない。全国にある新興チームを掘り出していくだけでも、膨大な数となるだろう。次はどんなチームが取り上げられるのだろうか、考えるだけでも興味深い。

さかまき
東京武蔵野シティFCサポーター。stand.fmで「キャプテンさかまき」として『旅とサッカーを紡ぐラジオ OWL FM』を配信中。
主な執筆記事:『「キャプテンさかまき 深夜の馬鹿力?!」 OWL FCのラジオパーソナリティ、はじめました!
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