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伊之助きまぐれ映画館

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観た映画の感想を気まぐれに書きます。備忘録がわりなのでネタバレ、脱線いたします。伊之助はMパテー商会、松竹蒲田撮影所、大映など映画界で働いていた祖父の名前です。
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「ある殺人 落葉の頃に」

「ある殺人 落葉の頃に」

この作品は湘南を舞台にしながら、夏の眩しい日差しや浜辺が似合わない作品だ。
確かに海は登場するが死者が運ばれる場所として描かれる。
ある人が「登場人物が皆、爆発寸前」と評していたが、中に起爆装置がある爆弾ではなく、電子レンジで加熱されている生卵が並んでいる。

しかしどれも爆発することなく、映画は静かに終わりを迎える。

何人かの観客の「よくわからなかったね」の言葉を映画館に響かせて。

ソワレ

ソワレ

「日本にも、勇敢なやつが、ひとり在つたぞ。あいつは、すごい。知つてるかい?」
「ありますか。」青年たちも、眼を輝かせた。
「清姫。安珍を追ひかけて、日高川を泳いだ。泳ぎまくつた。あいつは、すごい。ものの本によると、清姫は、あのとき十四だつたんだつてね。」

安珍清姫と聞くと、太宰治「富嶽百景」の一文がまず浮かぶ。清姫は泳ぎまくったようだが、この映画のヒロインを演じる芋生悠は走る、走る、走る。

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500万円の粋な使い途『メグライオン』

500万円の粋な使い途『メグライオン』

2019年の茅ヶ崎映画祭で公開された『江ノ島シネマ』のスーパーバイザー、脚本、小道具製作、現場応援などなど、何から何までお世話になった小林弘利さんが脚本(河崎実監督と共同名義)を手がけた『メグライオン』が公開されたので舞台挨拶付き上映に駆けつけました。

公私ともにお世話になっている亜湖さんが出演することもあり公開を楽しみにしていましたがコロナ禍で延期となり、ようやく観られたぞ!

この作品は、日

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『恋々豆花」を宇都宮に観にいく

『恋々豆花」を宇都宮に観にいく

 初めてこの映画を観るなら映画館で、それも街の、昔ながらの劇場で観たいと思っていた。ちょうどその頃東京の感染者数が落ち着いていたこともあり、名前からしてレトロな宇都宮ヒカリ座に行くことにした。

宇都宮を訪れるのは2014年に「おじさん」を見に行って以来である。奇しくも同じ年の6月に台湾にも赴いていた。

宇都宮で必ず食べると決めているのが青源の味噌だれ餃子。今回もパセオ(駅ビル)の同じ場所にあっ

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小松真弓監督 『もち』

一関には一度だけ行ったことがある。くりこま高原にある知人の別荘に行った折、車でのんびり戻りたい人と新幹線を使ってなるべく早く帰京したい人に分かれた時、早帰りチームの一人が「せっかくだから冷麺を食べて行こう」と言うので立ち寄った。

映画『もち』は14歳の少女と祖父の関係を軸に、祖母、親友、想いを寄せているその兄との様々な別れを描いた作品である。それぞれの別れに「もち」がいろいろな姿となって関わる。

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『ハニーランド 永遠の谷』

 先日投稿した「茅ヶ崎市北マケドニアフェアHaikuイベント」での寄付の返礼品として北マケドニア映画『ハニーランド永遠の谷』のチケットをいただいた。自腹で観に行こうと思っていたがありがたく頂戴した。

 第92回米アカデミー賞において国際長編映画賞とドキュメンタリー映画賞に同時ノミネート(アカデミー賞史上初の快挙!) されたこの映画は、首都スコピエからわずか20kmしか離れていない村で暮らす女性を

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