連載小説『ネアンデルタールの朝』⑬(第一部第3章-3)
3、
快晴の空のもと、雑木林が明るい緑を輝かせている。休日だからか、道路に車はほとんど走っていない。帰還困難区域に入っても、目に映る風景には一見何も変わりはなかった。信号機がずっと黄色で点滅したままであること、そして左右の道路がすべてバリケードで封鎖されていることを除いては――。
将人が言う「面白い場所」とは6号線のことだった。
東京から水戸市を経て仙台に至る国道6号線は、途中、福島の浜通りを通過する。原発事故以降、浜通りの一部の区間は帰還困難区域と重なり交通が規制されていた