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介護日記2#21母と散歩

昨日は日中日差しはなかったがちょっとあたたかかった。

3時頃から車椅子で散歩してみた。

これまでも勿論真夏は出来なかったが、時々でかけていた。いつぶりだろうか。11月の半ばだった様な気がする。その時は、今年最後かもと思っていた。そういえば昨日からとても気温が上がっていると朝の天気予報で言っていたようだった。

いつもの様に車の往来がほとんど無い道を選んで行ってみる。

あちこちのお庭に花がさいていた。

つわぶき、バラ、さざんか、珍しいエンジェルストランペット~天使のトランペット~(ブルグマンシア)という花も満開だった。

私は各家庭のお庭にさいているのを眺めながら耳元で母に「バラがさいているよ」などとと声かけしてみたが、ちょっと高いところに咲いている為か母の視線は別なところにある。夏はちょうど良い高さに紫陽花が咲いていて「綺麗ね~」と認識出来ていた事もあったが今回は難しいようだった。

そうやってのんびり車椅子を押して歩いていたところの背後に自転車が止まった。振り向くと「あら、こんにちは」と元気なこえで顔見知りのご近所さんに出合えた。

これまでもお散歩していると数回に1回は顔見知りの方に出会い挨拶する事があった。母は大抵「あら、こんにちは」と相手を認識出来ていると思われる良い表情で挨拶ができていたようだった。

今回も時間は少しかかったが、多分認識していたようだ。

そのかたはうーんと昔、町内の民生委員をされていた。私も母の事もよく知っているかた。「今88才になるのよ」と言いながら自転車に颯爽と乗っておられた。

「お渡ししたいものがあるから家においでなさい」とその場所からすぐ近くのご自宅の敷地に迎え入れて下さった。

「えっとね、家で取れた物ばかりなんだけど」と何やらごそごそ。

「はい、柚子にヘチマタワシ」

そして庭先に咲いている黄色い小菊を手で幾つか摘んで下さった。

母も嬉しそうだった。車椅子の後ろポケットに小菊。ジャンバーのポケットやフードには柚子とヘチマタワシを詰め込んでお礼を言う。

「昔私の母がいた頃あなたのお母さんによく声をかけて頂いていたのよ」別れ際にそんなことを話して下さった。

今から何十年も昔の事だと思うが母の日常がふっと甦った瞬間だった。

そうしてそれを思い出されたご近所さんももう88歳になるという。

バトンを渡されたような気がした。

いつか私は誰かにこのバトンを渡す事があるのかな。

渡せる日が来ると嬉しく思う。


読んでいただきありがとうごさいます

今日も明日も良いことがありますように

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