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【史】最先端のはずが大外れになったハイビジョンの話/IT全史を読む(11)

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この記事は、Podcast「にゃおのリテラシーを考えるラジオ」の2022年6月25日配信の書き起こしです。

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にゃおのリテラシーを考えるラジオ

読書と編集の千葉直樹です。

このチャンネルでは、読書と IT 時代の読み書き、そろばんを中心に様々な話をしています。

今回のタイトルは、

最先端のはずが大外れになったハイビジョンの話

というものです。

IT全史を読んでいくシリーズの 11 回目です。

前回はラジオが始まったばかりの時にテレビを予言した人の話をしました。

日本のテレビ放送網の成立過程

IT全史にはアメリカのテレビの歴史に次いで、日本のテレビの歴史が書かれています。

現在のテレビ放送網がどんな風に作られていったのかを追うのもとても面白いのですが、技術の歴史というよりもビジネスの世界の駆け引き的な観点が大きいので、この配信ではざっくり省略することにしました。

日本のテレビビジネスの戦いについては、ホリエモンの YouTube にテレビ史の回がいくつかあり、中でも技術的な観点も含んだ面白い回がありますので、概要欄に紹介しておきますね。是非見てください。

ハイビジョンの挫折

テレビ技術の観点では技術立国でイケイケだった日本の曲がり角の時期に象徴的な出来事がありました。

それはハイビジョンです。

ハイビジョンというのは、日本で解像度の高いテレビ方式を呼ぶ愛称です。

ハイビジョン、フルハイビジョンという言葉がありますが、さらに 4 K とか 8 K という規格が出てきています。

これらは簡単に言うと画面の解像度を表す言葉です。

そしてこれらは全てデジタルの規格です。

実はこれが技術立国の日本の挫折の象徴と言えるのです。

1980 年代の半ばのことです。

日本は世界に先駆けて衛星を使ってハイビジョン放送を始めました。

現在のテレビとほぼ変わらない高精細な画面の放送です。

今でも昔の放送のビデオがテレビで流れることがありますが、それは画面の左右両端が切れているものです。

ハイビジョンサイズになる前は、画面が今よりも真四角に近かったからです。

そして全体にぼやっとした印象です。

今とは解像度がまるで違うので、ぼやけたイメージになるのですね。

ハイビジョン放送が本格的に始まったのは 2003 年ですから、すでに 1980 年代にハイビジョン放送が始まっていたというのはなかなかすごいことなのです。

当時のハイビジョンテレビはかなり高価で、一般家庭に入るものではありませんでしたが、初めてハイビジョンテレビを見た時、その映像の美しさや立体感にかなり驚いたものです。

先ほど言ったように、日本のハイビジョンは最先端でした。

ただ、残念なことにそれはアナログ方式でした。

日本ではテレビの技術が完全にコンピューターの技術に置き換わるとは認識されていなかったのです。

デジタルとアナログの解釈の誤解

デジタルとアナログという言葉を新しいものと古いものという文脈で使う人がいますが、これは誤解です。

今でもアナログ技術は重要だし、最先端は存在します。

情報を扱う技術だけがデジタルに変化したわけです。

ただ、テレビ放送は情報を送る手段ですから、汎用的に情報を使えるコンピューターが安価になった今では、デジタル方式の方が何かと都合が良いわけです。

情報をアナログで扱う発想から脱却できない日本

話を戻すと、日本はアナログの技術を凝らしてハイビジョン放送を作り上げましたが、世界はコンピューター技術を使ったデジタル方式に向かっており、結果的にデジタル技術によるハイビジョン化に負けてしまったのです。

アナログ方式のハイビジョンの敗北が象徴というのはどういうことかというと、この時期に世界の先端を言っていると思っていたものが、デジタルという大きな技術変革で、あっという間に過去のものになるということを様々な分野で経験したからです。

通信の世界で当時最先端だったのが、 NTT のINSというデジタル通信網でした。

このネットワークは今でもサービスされていますが、圧倒的にコストが安いインターネット技術が出てきたために、今では片隅に追いやられる形になりました。

INS対応のファクシミリを使ったことがありますが、その送信スピードはコピー機でコピーを取るのと変わりませんでした。

ピーヒョロロで始まるアナログのファクシミリとは比べ物になりませんでしたが、普及しませんでした。

通信がデジタルになってもファクシミリを送るというアナログの発想から逃れられなかったわけです。

日本ではファクシミリは現在に至ってもアナログ方式で使われていて、デジタル化の遅れの象徴のようになっています。

30 年前に栄華を極めた日本のアナログ技術は主にアメリカからのデジタル技術に押され、表舞台から降りざるを得なかったことになります。

ただ、デジタルの世界はアナログの世界に支えられているのも現実で、日本の精度の高いハードウェアのアナログ技術が世界を支えているというのも事実なのです。

DXが叫ばれる原因

現在、声高にデジタル化が叫ばれているのは情報を扱う技術が効率の良いデジタルに移ったのに、従来のアナログ技術の延長線上でしか発想できないというかなり根源的な問題なのです。

それは未だにアナログのファクシミリを使い続ける姿に象徴されると思います。

日本のアナログハイビジョンの敗北は 30 年経っても変わることができない我々の発想の問題点を表しているように思えてなりません。

皆さんはどんな風に考えますか?

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今後配信の中で参考にしていきたいと思います。

おわりに

読書と編集では IT を特別なものではなく、常識的なリテラシーとして広める活動をしています。

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この配信の書き起こしをnoteで連載しています。

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今日もワクワクする日でありますように。

千葉直樹でした。

ではまた。

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